パリィ
ご高覧いただきありがとうございます。
11/22 誤字報告ありがとうございます。
11/23 一部修正しました。
11/28 一部修正しました。
死霊さんの研究室から出て、長い長い通路を歩いて死霊さんと初めて遭遇した部屋に戻ってきた。
「たっからっばこ、たっからっばこ」
ウキウキで部屋に戻ってきたら3体の魔物さんがいた。どの魔物さんも赤に近い黄色の魔力をしていて、触れば爆発してしまいそうなほど気が立っているように見えた。さすがにあれに呑気に近づくわけにもいかないから、一応細剣を構えて恐る恐る近づき『看破』を使う。
◇◆◇◆◇
名前:‐
種族:骸骨魔導
Lv:34
HP:1970/1970
MP:2860/2860
スキル:「闇魔法Ⅵ」「精霊術」「詠唱破棄」「命換」「逧?ク昴?螽」
『精霊術』
効果:精霊を召喚し使役する。
『命換』
効果:HPの最大値を減少させ、MPを増加させる。
◇◆◇◆◇
1番強いのはこの魔導さんだった。他の魔物さんは隊長さんを2で割ったみたいな性能をしていた。しかし、なんでここの魔物さんはみんな共通の読めないスキルを持ってるんだろう。生前は同じ国に仕えてたらしいしその関係だったりするのかな。
とりあえずこっちに攻撃するそぶりもないし、細剣を仕舞い抜き足差し足で宝箱のある方を目指す。宝箱にたどり着いて手を伸ばした瞬間、私の視界を黒い魔力の塊が横切った。もう少し前に出ていたら側頭部に魔法が直撃していた。危ない。
「やっぱり敵対するのかあ」
うん、だいたい分かってた。でもたまには楽させてくれたっていいじゃん。ていうかこれ死霊さんにもらったものだから!君たちに邪魔される筋合いはないの!
改めて細剣を構えてこちらに向かってくる魔物さんたちを迎え撃つ。魔導さんは最初にいた場所からは動かずに後ろで魔力を練ってる。何か大きな魔法を撃つつもりかもしれないし、早く前衛を処理して魔導さんを仕留めないと。2体の魔物さんの攻撃をなんとかいなしつつ、なんとか攻撃を通せる隙を窺う。すると片方の魔物さんが大ぶりの縦斬りをしてきたから紙一重で躱して、地面に振り下ろされた剣を足で踏んで動きを封じる。そしてもう片方の魔物さんの攻撃を受け流して体勢を崩し、片足を斬り払う。その隙にまだ頑張って剣を持ち上げようとしている魔物さんの腕を細剣で突いて肘から下を切り落とした。
これで多少は楽になったけど、『看破』で魔物さんたちを見てもHPは半分も減ってない。やっぱり私、決定力に欠けてるんだよね。『闇撃』も戦いに織り交ぜて熟練度でも稼ごうかな。魔物さんたちが少し後退して余裕ができたと思ったら、奥から私目がけて大きい槍の形をした魔法が飛んできた。
「あっぶな・・・!君のこと忘れてたよ」
なんとか直撃を避けるも、無茶な動きで魔法を躱したせいで体勢が崩れる。その隙に前衛の魔物さんたちがまた私に肉薄してきて、立っているのもやっとな状態まで追いつめられる。
その状況にさらに追い打ちをかけるように、魔導さんがまた魔法を撃ってくる。上手い、味方の魔物さんに当たらないようにちゃんと考えて撃ってる。なんて呑気に魔導さんを褒めてはいるけど状況は最悪だったりする。動きはさっきより鈍いけど容赦のない攻撃で私を追いつめる前衛の魔物さん2体に、すぐそこまで迫ってきてる魔導さんの魔法。どうしろっていうんだこんなの。魔法をどうにかして封じるか跳ね返すくらいしか打開策がないんですけど。くそー!マホ〇ーン!マホ〇ンタ!私はやけくそ気味に魔導さんの撃った魔法に細剣を振るう。どうにかなってくれ!
すると、魔法の軌道が僅かに逸れて私の背後に迫っていた魔物さんに魔導さんの魔法が直撃した。
「今、私が細剣を振ったせいで魔法が逸れた?」
また魔導さんが魔法を撃ってくる。私に魔法が届く前に前衛の魔物さんたちが放つ攻撃を受け流して体勢を崩し、邪魔が入らないようにする。そして迫る魔法に剣を受け流すのと同じ要領で細剣の腹で受けて、流す。すると魔法は私が流した方向へ一直線に飛んで行った。
・・・うまくいった。まさか魔法すらも受け流せるなんて、これが『細剣術・流麗』のほんとの使い方なのかな。受け流せるなら話は別だ、魔導さんが撃つ魔法を受け流して前衛の2体に当たるようにすれば決定力に欠ける私でも十分に渡り合える。
もうそんなに脅威ではない前衛の魔物さんの攻撃を適当にいなしつつ、飛んできた魔法を受け流して前衛の魔物さんたちに当てて、余裕が出来たら『闇撃』を魔導さんに撃って・・・というのをしばらくやっていたら、ようやく前衛の魔物さんの1体が倒れた。HP高いね、ほんとに。
さらに余裕ができた私は、前衛が倒れて若干後退する魔導さんに追い縋り細剣を突き出して攻撃を加える。それを妨げるように剣を振るう前衛の魔物さんの剣の軌道を魔導さんの方に逸らしてあげる。魔物さんの振るった剣はそのまま魔導さんの右肩から左の脇腹を袈裟斬りにして、魔導さんの体を2つに断った。そして魔導さんはそのまま消えてしまった。我ながらなんて性格の悪い戦法だ。むしろ清々しいね。
「君で最後。じゃあね」
自分で仲間を斬ったことに狼狽える魔物さんに持続時間目いっぱいの『吸魔』を使う。ずっと受け流すのに徹していたとはいえちょくちょく攻撃は掠っていたし、『闇撃』でMPも減っちゃったからね、回収しないと。
そしてそのまま魔物さんは崩れ落ちて消えていく。あー、なんとかなった。魔法を受け流せるって気づかなかったら負けてたね、運が良かった。しかし、今回はこれまでの死闘に比べるとかなり安定して戦えていた気がする。自分が強くなっている事実に思わず頬が緩んでしまう。緩む頬がないけど。
《称号『卑劣』を取得しました》
誰が卑劣だこら。あれは戦術の一種でしょうが。
◇◆◇◆◇
『卑劣』
効果:不意打ちの攻撃の威力上昇(微)
条件:邪道な戦い方で敵を倒す。
騎士道で飯が食えたら誰も苦労はしない。
◇◆◇◆◇
称号の名前には納得できないけど、フレーバーテキストの方には共感した。正々堂々とか言ってる奴ら、私と同じ状況になっても正面から剣で打ち合うの?
そんなことよりも、お待ちかねの宝箱だ。私はこれのために戦っていたと言っても過言ではない。ほんとにこの宝箱開けに来ただけだしね、実際。
「ごまだれ~!」
お決まりのセリフで宝箱を開けるとそこには落ち着いた灰色の魔力をした布があった。なんだこれ、服?両手で広げると、それは少し大きなコートみたいな見た目をした服だった。
◇◆◇◆◇
聖穢の外套
効果:聖属性のダメージを軽減(大)、スキル『鑑定』の妨害、装備時、一部NPCからの好感度低下(大)
◇◆◇◆◇
死霊さんの言う通り、ほんとにアンデッド専用装備みたいな性能してる。しかし、聖を穢す外套ねえ。そりゃあ好感度も下がるよ。
でも、それを補って余りあるのが『鑑定』の妨害という効果。いつか外に出た時にプレイヤーとかNPCから鑑定されてアンデッドがばれてそのまま討伐される、みたいなことが防げるんじゃないかな。そのいつかが遠いんだけどさ。
とりあえず外套を装備してみたけどこれ、普段ダンジョンで動き回る分には邪魔だね。私にはちょっと大きいし。誰がチビだ。普段は装備しないで、聖属性の攻撃をしてくる敵が出た時とか外に出られた時に装備するのがよさそう。
それと、魔導さんと前衛の魔物さん2体からは骨がいくつかドロップしていた。魔導さんの持ってた杖とか欲しかったけどもらえなかった。残念。まあ魔除の素材が手に入ったし悪くはないかな。
「それじゃ、次の部屋に行きますか」
外套をインベントリに入れて、次の部屋を目指して進む。
・・・
◇◆◇◆◇
称号:セットなし
名前:ディラ
種族:劣種竜骸兵
職業:‐
所持金:10000ギル
Lv:‐
HP:1880/1880
MP:959/1108
SP:3
装備:瘴石英の細剣
スキル:「闇魔法Ⅰ」「錬成」「瘴気」「念話(邪)」「看破」「吸魔」「竜の因子」「詠唱破棄」「細剣術・流麗」
パッシブスキル:なし
取得称号:『管理者のお気に入り』『艱難辛苦を求めし狂人』『最速の異界人』『邪王龍の友』『超オーバーキル』『弱点克服への一歩(聖)』『暗愚の屍』『卑劣』
アイテム:存在進化のスクロール、聖水×13、瘴気に染まりし錆びた長剣、聖穢の外套
◇◆◇◆◇
『細剣術・流麗』
効果:細剣を装備時、攻撃を受け流す技術が大幅に向上する。魔法も受け流すことができるが、受け流す魔法の威力に応じて魔力を消費する。
パリィ大活躍回でした。
魔法の受け流しのイメージは武器を魔力でコーティングして魔法を滑らせる感じです。魔法の威力が強ければ強いほどコーティングに強度が必要で、それに応じてMPが減る。といった感じです。
今回、理菜の心の声と戦闘の流れでどうしても1つの文が長くなってしまったのですが、読みにくくはないでしょうか。戦闘はこれだから難しい・・・
そろそろ別プレイヤー視点を入れるかもしれません。次回ではないですが。




