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白骨少女が逝くVRMMO記  作者:
邪界樹の洞穴
1/96

プロローグ

ご高覧いただきありがとうございます。



11/19 誤字報告ありがとうございます。


『起きろ、招かれざる客人よ』


「・・・?」


 ここはどこだろう。辺りを見渡すも、サーモグラフィーのようなぼんやりとした視界で周囲の状況がよくわからない。夢でも見ているのかと思い頬をつねろうとするが、頬肉がない。


 ・・・ない。


 慌てて自分の体に目をやるも、私の体であろう部分に赤い靄がかかっているだけで体がどうなっているかの判断すらつかない。


『何をしている、客人よ』


 そうだ、私を起こしたこの声は誰のものだろう。視覚はおかしくなっているが、聴覚は正常なのかやたらと渋い声がはっきりと聞こえる。声の主に質問をしようとするが声が出ない。口を開閉するたびに口周りの骨にカチカチという弱い衝撃が走るだけで声を発しているという感覚はない。


『その体では声を出すことは叶うまい。ただの下級骸骨レッサースケルトンでは念話も使えぬだろうが、そなたは異界人であろう。異界人は特殊な技能を身に付ける術に長けていると聞いたが』


 異界人・・・?

 あぁ、そうだ、私はVRのゲームを始めたんだった。名前は・・・



《ようこそ、Ancient Adventure Online の世界へ》

《私は、東雲理菜様のサポートを務める管理AIでございます》

《それでは、東雲様のアバターネームと容姿、種z》


「キャラネームはディラ、容姿は現実そのまま、あとは全部ランダムでお願いします!」


《・・・》


 あれ?何か間違っただろうか。AIというならば早くしてほしい。私は誰よりも早くAAOの世界に飛び込みたいのだ。


 Ancient Adventure Online、通称AAO。今日のつい数十秒前に正式リリースされたNEXT社による最新型VRMMOだ。これまで全世界で空前絶後の大ヒット作を何度も生み出してきたNEXT社は、数か月前に新たにVRMMOという良く言えば王道、悪く言えばベタな作品のβテスターをなんの前触れもなく募集した。

 理菜も一介のゲーマーであるため、勿論βテスターに立候補したが遅かった。そう、遅かったのだ。一万人という割と多めな募集数であるにもかかわらず、理菜は乗り遅れた。

 そのため、理菜は正式リリースされたらまずは最速でAAOの世界に降り立ち、少しでも鬱憤を晴らそうとしていたのである。


「どうしたんですか?」


《失礼しました。アバターネームは『ディラ』、容姿はデフォルト、その他はランダムということですが、本当によろしいのですか?》


「大丈夫です!」


《差し支えなければ、その理由をお聞きしてもよろしいでしょうか》


 やたらと質問が多いな、このAI。私は早くAAOの世界に行きたいというのに。


「誰よりも早く世界に立ちたいんです」


《なるほど。ではこれ以上の問答は不要、と言いたいところですが、最後にいくつか質問をします。》

《あなたは、どんな困難にも立ち向かう勇気がありますか?》


「場合によります」


《あなたは、理不尽に見舞われた時、反抗する術を模索しますか?流れに身を任せますか?》


「流されます」


《では、最後です。あなたは優しいですか?》


「・・・優しくないと思います」


《ありがとうございます。それではAAOの世界へ転送します。》


 大丈夫だろうか。これで最速じゃなかったら目も当てられないが。


《安心してください、東雲様が最速のようです》


 AIの言葉に安堵すると、体が足元から粒子に包まれていく。


《東雲様がランダムを選択した項目はすべて私が代わりに選択しておきました》

《東雲様の旅路に幸あらんことを。では、愉快な骨ライフを楽しんで下さい》


 そう告げる管理AIは、これまで一貫して無表情だった顔を楽しそうに歪めていた。


 え?骨?


「どういう・・・っ!」


 抗議の言葉を言い切る前に私の全身が粒子に包まれ、意識が闇に覆われた。


《最初は苦労しますが、私の権限で素敵なアイテムをプレゼントしておきました。うまく『あのお方』の眼鏡にかなうといいのですが・・・》


 天に昇る粒子を眺めながら、管理AIはそう呟いた。

本来、最初にAIに質問される項目は、「キャラクターネーム」「容姿」「種族」「職業」「所属国家」「初期スキル3つ」です。他のプレイヤーは理菜がされたような謎の質問はされていません。

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