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2話:探索者とクラス

「この三か月で基礎体力はそこそこ付いてきたね。まだ全然なっちゃいないが、アンタの努力は着実に身になっている。このまま続けるよ」


「はい、先生」


「訓練メニューをこなしながら、アタシの話を聞きな」


「分かりました」


「探索者は基本的に仲間と一緒に『塔』へ挑む。自分一人で何でもやろうなんざ、どだい無理な相談さ。だから自分の得意分野を見付けて伸ばすんだ。そして自分に足りない能力を、仲間集めて補い合う。それぞれの得手を持ち寄って、チームで進むのが基本戦術だよ。仲間との協力なくして『塔』じゃ生き残れないからね」


「大事なのは自分の力だけじゃなくて仲間」


「得意分野はなんだっていい。腕っ節が強いのでも、銃が百発百中でも、医療の心得があるのでも、錠前外すのが上手いのでもね。誰にも負けない自分だけの強味を持ちな。探索者のチームメンバーは、互いに命を預け合うんだ。半端な野郎は誰にも必要とされないし、信用も信頼もされない。自分の力に他人の命を背負えるって自負が抱けるまで鍛え上げろ」


「はい!」


「探索者が仲間集めで一つの指標にするものがある。それを『クラス』と呼ぶ。こいつは探索者間で使われる符丁みたいなもんだ。自分の得意分野を端的に表す役職名だと思えばいい」


「クラス、ですか」


「主だったものを教えておくよ。まずは『ソルジャー』。あらゆる状況に対応する生存能力の高い戦士だ。戦闘能力だけじゃなく、危機感知能力や的確な判断力、サバイバル技能も備えてこそさ。一人で全ては出来ないが、可能な限りカバーしようと鍛錬してる。チーム内に居ると、大抵の場合リーダーを務めてるね」


「万能型のソルジャー」


「次は『スレイヤー』。敵の撃滅を追求する破壊者。戦闘能力に特化してるが、それ以外を度外視してる。優れた突破力を持つ反面、戦闘以外はアテにならない。チームにいれば心強いが、サポートは必須さ。一番早死にしやすい手合いでもある」


「戦闘専門のスレイヤー」


「次は『ディフェンダー』。固い守りで難事に耐える防衛者。スレイヤーとは真逆で、護ることに特化してる。殲滅力こそないが生存能力は一番だね。チームにいれば壁役に徹するのが定石さ。自分の身だけじゃなく、仲間も身を挺して護れる気概とタフネスが求められる」


「防御重視のディフェンダー」


「次は『ドクター』。負傷者を癒すべく奔走する活動医。人体構造に明るく、薬の知識が豊富で、どこでも治療ができるってのは、探索者にとっちゃ最も望まれるスキルだね。チームにドクターが一人いるだけで、生還率は段違い。実践で素早く手当てできる実力者は稀有な人材さ」


「治療ができる有能なドクター」


「次は『ガンナー』。巧みな射撃術で遠距離戦闘をこなす射手。スレイヤーは猪突猛進なタイプだが、こっちは一歩引いてより広い視野で戦う。銃火器は弾薬の消費で金食い虫なのが痛いものの、威力は申し分ない。訓練を積めば女子供でも一線級の戦力になれる」


「お金は掛かるけど高火力なガンナー」


「次は『メカニック』。様々な機械の工作や修理が得意なエンジニア。戦力としては怪しいが『塔』の中は機械の山だ、メカニックが活躍する状況は存外多い。探索中に壊れちまった武具の応急処置や、見付けた遺物の簡易チェックもできるから、支援要員として需要が高い」


「機械に詳しいメカニック」


「次は『バンデット』。財宝の収奪を専門とする盗掘者。戦うよりも遺物の発見や目利きが得意だね。罠の解除にも精通してるし、隠し通路なんかを看破する嗅覚が並外れてる。色々な場面で役立つんだが、お宝最優先のきらいがあってねぇ。稼ぎの分け前絡みで諍うチームも少なかないのさ」


「財宝探しに秀でたバンデット」


「最後は『エクスプローラー』。未知の探求へ情熱を燃やす生粋の探索者。戦いや遺物の回収より、『塔』の内部へ分け入る過程にこそ最大の興味と熱量を注ぐ。それ故に探索狂いとも呼ばれるね。機械知識があり、罠を見抜き、強敵が立ちはだかっても怯まない。能力も心意気も一切合切を探索に捧げちまった者の名だ。有能だが、話の通じない奴が多い」


「探索そのものが目的のエクスプローラー」


「ざっとこんなところかね。自分がどのクラスでいくか見定めて、能力を高めていきな。仲間集めをしてる探索者は『ソルジャー募集中』とか『ディフェンダー求む』なんて声出したり、書置きしたりしてるもんさ」


「自分で仲間を集めるときも、必要なクラスに向けて呼びかければいいんですね」


「ああ、そうさ。ちなみにアタシはガンナーだ。遺物の技術も取り入れて、自己改造した銃一式を得物にしてる。ハンドガンにショットガン、ライフルだろうが使いこなすよ。敵の急所を射抜いて潰す『ワンショットキルのキリエ』といゃあ、ちっとは知れた名さ」


「すごいです、先生! あの、母さんはどのクラスだったんですか?」


「トウカはメカニックだね。色々と弄るのが得意で、随分と手先は器用だった。『塔』の中でも外でもチームメンバーは皆世話になったよ。たまにとんでもない失敗して、部屋を爆発させてたりもしてたけど。ま、完全無欠の奴よりかは可愛げがあるとしたもんさ」


「そっかぁ。だから母さん、なんでも自分で直しちゃってたんだ。たまに電子レンジを爆発させてたけど」


「はっ、トウカらしいねぇ」

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