戦士たちの休息
<人物対照表>
ハインツかごめ→アジツケレッド
佐藤詩織→アジツケホワイト
髭田万丈→アジツケパープル
松戸もん→マクドモス
吉野魔吊→ヨシノマツ
ハインツかごめ:俺の名前は「ハインツ かごめ」。調味料戦隊アジツケルンジャーのリーダー、ケチャップの化身、アジツケレッドだ。今日は、必殺技の出し過ぎで痛めてしまった身体を少しでも休めるために、ドクターに強制的に休みを取らされてしまった。気分転換にこうしてショッピングモールに来てみたものの、何をしたものやら……。
佐藤詩織:私の名前は「佐藤 詩織」。調味料戦隊アジツケルンジャーの隊員。砂糖の化身、アジツケホワイトだ。今日、急に休みになったのは、やっぱり、レッドを気兼ねなく休ませるためなんだろうなぁ。レッド、身体、大丈夫かなぁ。落ち着かなくて、とりあえず、ショッピングモールに来てみたけど、楽しくないわね。
髭田万丈:俺の名前は「髭田 万丈」。調味料戦隊アジツケルンジャーの隊員。醬油の化身、アジツケパープルだ。いやー、なんか知らんけど、急に休みになってラッキー。ショッピングモールに来るのなんて、久しぶりだよ! 今日は、楽しむぞー!
松戸もん:私の名前は「松戸 もん」。悪の秘密組織ガイショッカーの女幹部マクドモスだ。家が代々、悪の家系で、あとを継ぐ感じで悪の女幹部になった。でも、最近、もっと、別の道もあったんじゃないか? なんて思ってしまうこともある。そのぉう、普通のお嫁さん、とか? なーんてね。今日は、たまの休みなんだから、ショッピングモールを楽しまなくちゃ。
吉野魔吊:僕の名前は「吉野 魔吊」。悪の秘密組織ガイショッカーの男幹部ヨシノマツだ。たまの休みでショッピングモールに来たけど、十円足らねぇ。どっかに、十円玉落ちてねぇかなぁ? 自動販売機があったら、釣り銭と自動販売機の下をチェックせねば。
髭田万丈:そこのおねーさん、よかったら、僕とお茶しませんか?
松戸もん:へ? わ、私、ですか?
髭田万丈:そうですよ。
松戸もん:年上をからかうもんじゃありません。
髭田万丈:からかってなんかいません。
松戸もん:どうして、私なんかに?
髭田万丈:そりゃあ、おねーさん、かわいいから。
松戸もん:だから! 年上をからかうもんじゃありません!
吉野魔吊:そこのお嬢さん、よかったら、僕とでんぐり返ししませんか?
佐藤詩織:へ? わ、私、ですか?
吉野魔吊:そうですよ。
佐藤詩織:えーっと、いろいろと嫌です。
吉野魔吊:「いろいろと」というと?
佐藤詩織:まず、でんぐり返しが最大級に嫌です。それから、あなたが嫌です。
吉野魔吊:じゃあ、おしくらまんじゅうならいいですか?
佐藤詩織:私の話、聞いてました?
吉野魔吊:ああっ! そうかっ!
佐藤詩織:分かりました?
吉野魔吊:ええ、二人じゃおしくらまんじゅうにならないですね。最低、三人はいないと。
佐藤詩織:最低なのは、あなたよ。
ハインツかごめ:どうしたんだ? 佐藤?
佐藤詩織:あ、私、この人とお付き合いしてるんです。だから、諦めて下さい。
吉野魔吊:なんだって? それは、ちょうどいい! 三人でおしくらまんじゅうしましょう!
佐藤詩織:あんた、頭、腐ってんのか?
ハインツかごめ:何が、どうなってるの?
髭田万丈:へー、じゃあ、おねーさん、キャリアウーマンなんだ。
松戸もん:そんな大層なもんじゃないわよ。
ハインツかごめ:あれ? 髭田?
吉野魔吊:あ! 松戸―! いいところで会った!
松戸もん:げっ! 吉野?
吉野魔吊:その人も、一緒に五人でおしくらまんじゅうしない?
ハインツかごめ:いや、俺たちするって言ってないから!
髭田万丈:あれ? ハインツと佐藤? 一緒に来たの?
佐藤詩織:あ、違うの。
吉野魔吊:え? 二人は付き合ってるんでしょう?
髭田万丈:ええっ? そうだったの?
ハインツかごめ:そんなわけないだろ!
佐藤詩織:だったら、気付くでしょ?
吉野魔吊:え? じゃあ、さっきの噓?
佐藤詩織:まぁ。
吉野魔吊:じゃあ、お詫びとして、おしくらまんじゅうしてよ。
佐藤詩織:あんたは、なんでそんなにおしくらまんじゅうしたいんだ?
髭田万丈:こんなところで、おしくらまんじゅうをすると、多くの人に迷惑がかかるからやめましょう。
ハインツかごめ:いや、髭田、君の言ってることはとても正しい。正論だ。だけど、違うんだ。
佐藤詩織:そこじゃないのよ。
松戸もん:髭田君、吉野に通じるところあるの?
髭田万丈:あ! 何か飛んで来た!
ハインツかごめ:ホワイト! 危ない!
吉野魔吊:マクドモス! 危ない!
髭田万丈:アーケードに鳥が迷い込んだのか。
ハインツかごめ:マクドモス?
吉野魔吊:ホワイト?
佐藤詩織:あー! その顔! あんた達、よく見たら、マクドモスとヨシノマツじゃない!
松戸もん:私たちを、マクドモスとヨシノマツだと知っている?
吉野魔吊:そして、その声。さては、お前ら、アジツケルンジャーだな?
ハインツかごめ:ああ、いかにも、アジツケレッドだ。
佐藤詩織:アジツケホワイトよ。
髭田万丈:アジツケパープルだ。
ハインツかごめ:やるのか?
松戸もん:いえ、私たち、今日は、休日なの。
吉野魔吊:ただ働きはしない主義でね。
ハインツかごめ:それは助かる。
佐藤詩織:一般市民を巻き込みたくないわ。
吉野魔吊:君たち公務員みたいなもんだろう? 君たちの給料の一部は我々の払った税金なんだから、何かおごってくれよ。
髭田万丈:はぁ? お前ら、ちゃんと税金払ってんの?
松戸もん:失礼ねっ! 脱税なんてつまらないことで目を付けられたくないから、その辺はきれいなもんよ。
吉野魔吊:地域住民から苦情が来ないように、戦闘員や外食獣へのルールやマナーの教育にも力を入れている。
ハインツかごめ:なんか、それ、聞きたくなかった。
松戸もん:まあ、あなたたちとなれ合うつもりはないわ。今日のところは、帰るとするわ。ゲート・オープン!
吉野魔吊:みゅわおん!
佐藤詩織:なんか、開いた!
髭田万丈:スゲー、どこでもドアみたい。
松戸もん:髭田君、今日は、楽しかったわ。でも、おばさんなんか追っかけてないで、若い子と遊びなさい。
髭田万丈:あなたに、力ずくでも普通の幸せを、つかませて見せますよ。
松戸もん:やってごらんなさい。
髭田万丈:今度、あなたに会うときに、挑戦状として、一輪の紫のバラの花を差し上げましょう。
松戸もん:楽しみにしているわ。
吉野魔吊:今度会った時は、おしくらまんじゅうをしよう。
ハインツかごめ:いや、しねーから!
吉野魔吊:みゅわおん!
ハインツかごめ:ゲートが閉じた。
佐藤詩織:パープル、紫のバラの花言葉は知っているの?
髭田万丈:「気品」「誇り」「尊敬」だろ?
佐藤詩織:一輪のバラを贈る意味は?
髭田万丈:一目惚れ。
ハインツかごめ:ん? 今日、会うの、二度目だろう?
佐藤詩織:レッド、そういうところだよ。
ハインツかごめ:え?
髭田万丈:そうそう、そういうところだよ。
佐藤詩織:いや、あんたもあんただから。
髭田万丈:え?
佐藤詩織:まったく、うちの男どもは……。