異世界転移 ~特殊ジョブで生き抜きます~
少し早いですが、クリスマス?をイメージした作品になります。
薄暗い部屋でパソコンを叩く音だけが鳴り響く。
俺は、既に冷えきったブラックコーヒーを胃に流し込む。
周りを見渡すも、既に誰もおらず、耳を澄ますと、会社の外では、楽しげな声がどこかしらで聞こえてくる。
今日は、12月24日いわゆる、クリスマスイブだ。
「はぁ~、俺何やってんだろ…」
俺は今、誰もいないオフィスで1人仕事をしている。
18歳で入社して、既に3年…
上司に歯向かったせいで、あり得ない量の仕事を毎日毎日押し付けられ、いつものように無給の残業をして、消化していた。
上司の目を盗み、手伝ってくれる人たちはたくさんいる。
今日も、手伝いますと言ってくれた人たちはいたが、今日は帰って貰った。俺と違い、あいつらは、既婚者なのだ。そんな日に手伝って貰ったら、俺が怒られてしまう。
パソコンの時間を確認すると、時刻は既に0時前…
「今日は、ここまでにするか…」
手早く、片付けを終わらせ、重たい足取りでオフィスを出る。
エレベーターは、経費削減とやらで、既に止まっている。
俺はそのまま、階段へむかう。
階段を降りようとして、最近酷くなった頭痛が襲う。
「うっ!!」
ズルッ 俺は、足を滑らせ、階段を転がり落ちてしまう。
朦朧とした意識の中で、体の疲れもあり俺はそのまま、意識が途絶えた。
◇
目覚めた俺は、辺りを見渡す。
「あれ、ここはどこだ?」
辺りは何もない草原だった。
すると、何処からともなく声が聞こえてきた。
『聞こえますか?』
周りには、誰もいない。
しかも、聞こえてきた声は、直接頭に響いている声だ。
『聞こえますか?』
「はい、聞こえます!!」
俺は、その優しげな声に何故か姿勢を正した。
『ふふ、そこまで畏まらなくても大丈夫よ。』
「はい…」
少し恥ずかしくなった。
気を紛らす為、その声の方に質問する。
「貴方様はどなたなのでしょうか?」
『あら、そういえば、伝えてなかったわね。私は最高神プリマと言います。以後お見知りおきを。』
「よ…よろしくお願いします。」
『はい、宜しくね。』
「それで、プリマ様、ここは、何処なのでしょうか?」
『ここは、アギオス。貴方の世界で言う異世界と言うやつね。』
「異世界ですか… 何故、私は異世界に?」
『それは…』
「大丈夫です。覚悟は出来ています。」
『そう… なら言うけど、貴方は階段から落ちて、頭を打って死んでしまったの…』
「そう…ですか… 教えてくれて、ありがとうございます、プリマ様。」
『大丈夫かしら?』
「心配かけて、すみません…」
『いいのよ。気にしないで。』
「それで、私はどうしてここにいるのでしょうか?」
『それは、私がこの世界に召喚しました。』
「召喚ですか…」
『そう、死ぬ直前だった貴方の魂を呼び寄せ、私の創った体にその魂を定着させたの。』
「そうですか。」
『勝手にそんなことしてしまって、ごめんなさい…』
「あ、全然大丈夫です。どうせむこうでは、独り身でしたし、兄弟も両親もましてや、彼女なんかもいませんでしたから、プリマ様が気にやむ必要はないですよ。むしろ、別の異世界で生きていけることにワクワクしているくらいです。」
『そう… でも、むこうの世界でやり残した事とかないの?』
「やり残した事ですか… 実は1つだけあります…」
『それは、何かしら? 少し位なら、むこうの事も分かるわ。』
「あいつらの… 仕事仲間が私の代わりに無理な仕事量を押し付けられていないか心配で…」
『それなら、大丈夫よ。』
「?」
『申し訳ないのだけど、貴方の死によって内部調査が行われ、その上司は、首になったわ。』
「そうですか、良かったぁ…」
『他に何か気になることはないかしら?』
「それさえ聞ければ、大丈夫です。ありがとうございます、プリマ様。」
『どう致しまして。』
「それで、今後私はどうしたらいいのでしょうか?」
『特にどうもないわ。第2の人生として楽しんでもらえればいいわ。』
「第2の人生…」
その後も、プリマ様と話をし、話が終わると、俺は気になっていたことをすることにした。
「確かステータスをみるには…」
プリマ様に言われたことを思い返し、
「ステータスオープン」
すると、目の前に、自分のステータスの画面が浮かび上がる。
名前:セイヤ・ゴクヅキ
種族:人間(神子) ジョブ:サンタ 年齢:15
Lv:1
体力:1800
魔力:30000
スキル:プレゼント 獣魔召喚 サンタボックス 隠密 雪魔法
称号:最高神プリマの加護
ちょっと、苦笑いしつつ詳細を確認する。
サンタ ・・・ ユニークジョブ。ユニークスキルを有する。
プレゼント ・・・ ユニークスキル。魔力を消費し、ありとあらゆる物を召喚できる。召喚物は召喚者の意のまま。意としない時は、ランダム。
獣魔召喚 ・・・ 獣魔を召喚できる。
サンタボックス ・・・ ユニークスキル。アイテムボックスの上位互換スキル。収納量無制限。時間経過無。
隠密 ・・・ スキル発動時、相手に気づかれにくくなる。
雪魔法 ・・・ ユニークスキル。雪を扱うことの出来る魔法。
最高神プリマの加護 ・・・ アギオスの最高神の加護。ステータス上昇率アップ。
職業については、もうノーコメントだ。
スキルはかなり使いどころがいいと思う。
あれ? そういえば、年齢が若返っている。プリマ様が造ってくれたとき、何か間違えたのだろうか? まぁ、若いに越したことはないか。
早速、スキルを使うことにした。
とりあえず、ランダムでプレゼントを使ってみる。
すると、目の前にラッピングされた箱が現れた。
箱を開けてみると、中には、巻物のようなものが入っていた。箱から取り出すと、箱は消えてしまった。
その巻物を広げてみると、中から光の玉が出て来て、俺の体に取り込まれていった。
『スキル:鑑定眼を覚えました。』
プリマ様の声を機械的にしたような声が聞こえてきた。
再び、ステータスを確認してみると、鑑定眼とやらを覚えていた。ちなみに、消費した魔力量は1000だった。
他にも、何回か試してみる。ゲットしたのは以下の通りだ。
・ スキル会得の書×2
・ レベルアップル×3
2回目は、ランダムでレベルアップルが出て、その後は、書とレベルアップルを狙ってプレゼントを使った。早速、全部使ってステータスを確認する。
「ステータスオープン」
名前:セイヤ・ゴクヅキ
種族:人間(神子) ジョブ:サンタ 年齢:15
Lv:4
体力:3000
魔力:36000
スキル:プレゼント 獣魔召喚 サンタボックス 隠密 雪魔法 鑑定眼 身体強化 結界
称号:最高神プリマの加護
ちゃんと、スキルも覚えており、レベルアップルのおかげで、レベルも上がっていた。読んで字の如しのスキルなのか詳細を確認する。
鑑定眼 ・・・ 見るだけで、鑑定を使うことが出来る。
身体強化 ・・・ 込める魔力量に応じて、身体の強化率がアップする。
結界 ・・・ 自分の好きなところに透明の結界を張ることが出来る。強度は、込める魔力量に応じて、アップする
ちゃんと、思っていた通りのスキルだ。ランダムなのにいいスキルを会得することが出来た。プリマ様の加護のおかげで、運もあがっているのかもしれない。再度、プリマ様に感謝して、プレゼントを使うのを一度やめてから、次のスキルを使う事にした。
獣魔した相手はいないのに、何故か使えるような気がして、獣魔召喚を使ってみる。
「召喚!!」
すると、目の前に、子馬くらいの真っ白な毛をした生物が現れた。
覚えたての、鑑定眼で見てみる。
名前:ー
種族:白雷馴鹿
Lv:1
体力:5000
魔力:500
スキル:天走 白雷 激角 突進
称号:セイヤの獣魔
思っていた通り、出て来てくれた。
白雷馴鹿は、俺にすり寄ってくる。撫でると、何とも言えない手触りだ。あえて表現するなら、もふもふでした。一通りもふもふした帰って貰った。ちなみに、名前はレノと名付けた。
あっ!! そういえば、プリマ様が俺にあった装備品を収納系スキルの中にに入れてくれていると言っていたな。取り出してみると、真っ赤なフードつきローブとブーツ、赤い玉がついてあるブレスレットが入っていた。鑑定眼で見てみる。
サンタのローブ ・・・ ユニークジョブ専用の装備品。全魔法耐性、物理耐性をもっている。魔力を込めると、コートの色を変えることが出来る。
サンタのブーツ ・・・ ユニークジョブ専用の装備品。無音歩行が可能になる。
真っ赤なお鼻のブレスレット ・・・ ユニークジョブ専用の装備品。魔力を込めると、真っ赤な玉(爆弾)を作り出す。込める魔力量に応じて真っ赤な玉(爆弾)の威力が上がる。
俺は何も、言わずにそっと装備する。
何だか、突っ込んだら負けなような気がするからだ。
最後に、楽しみにしていた魔法を使おうとした時、
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~」
何処からともなく、悲鳴が聞こえてきた。
気づけば、悲鳴が聞こえた方向へ走り出していた。
流石は、プリマ様が創ってくれた体だかなりの速度で走っているのに、全然疲れない。
少し走ると、目の前に、雑木林が広がっていた。
悲鳴はたぶん、この雑木林の中から聞こえてきた筈だ。
すぐ、雑木林に踏み込む。すぐに人影のようなものを発見する。草木に隠れ、見てみると、そこには、倒れた馬車や血まみれの人、その少し奥には今現在襲われそうになっている女性と執事風の老人。その周りには、無数の人相の悪い人たちがいた。
「じぃ、もうやめて!! 私は大丈夫ですから!!」
「なりません、お嬢様。ここは私にお任せ下さい!!」
「もう、諦めな爺さん。後は、爺さん1人しかいないのに、どうやってこの数を相手にするつもりだぁ。」
鑑定眼で周りの人相の悪い連中を見てみる。
案の定、盗賊の一味のようだ。
見て見ぬふりは出来ない為、あの人たちを助けようと思う。
さっき試しそびれた雪魔法使ってみる。使い方は何となくわかる。最高神の創った体は、詠唱もいらないようだ。
「雪魔法:雪人召喚」
盗賊たちの頭上から、人型の雪だるまが降らせる。
ついでに、雪人の中にある仕掛けを施しておく。
「な…なんだこいつは!!」
盗賊たちが、雪人を相手にしている隙に、あの人たちの所へむかう。
「大丈夫ですか?」
「!? お嬢様下がってください!! 誰ですか貴方は!!」
執事服のご老人は持っていた剣を俺にむけてくる。
「怪しいものでは、ありません!!」
コートの色は、赤から無難な黒に変えている。格好は特に怪しくはない筈だ。
俺は、悲鳴を聞いて、助けに来たことを伝える。
「そうですか…ありがとうございます。」
執事風のご老人は、俺の話を聞いて、少しは、警戒を解いてくれたようだ。
「では、ここは俺が相手にしますので、少し下がっていてください。」
「わ…分かりました。お願いします。」
そう言って、執事服のご老人はお嬢様とやらを連れて後ろに下がってくれる。
盗賊たちを見てみると、雪人は全滅していた。だが、盗賊も半分ちかく片付いていた。
「ハァハァ、何だこいつら、切っても切っても効きやしねぇし、魔法で攻撃したらしたらで、爆発しやがる。まぁ、いいやっと片付いた。」
そう、雪人の中に何個か真っ赤な玉(爆弾)を入れてあったのだ。
すると、盗賊の頭がやっと俺に気がついた。
「何だ貴様? まさかこれは、貴様がやったのか!!」
「あいにく、お前らみたいなやつに、教える必要はないね。」
「殺れ!!」
盗賊の頭がそう言うと、残っていた盗賊たちが一斉に襲ってくる。
「雪魔法:雹吹雪」
魔力を多く込めたせいか、襲ってきた盗賊たちは、雹で貫かれ、絶命していった。何とか、雹を防いでいる盗賊もいたようだが、そこは多めに魔力を込めた、真っ赤な玉(爆弾)を投げつけて片付ける。どうやら、自分で思っていたより、この盗賊たちに、怒りを覚えていたようだ。だが、俺の精神構造も変わっているのか、殺すことに対して、何も感じることはなかった。
「なっ!! くそっ!!」
盗賊の頭は、勝てないと悟ったのか、1人で逃げ出そうとしている。
「雪魔法:雪達磨監獄」
雪が盗賊の頭にまとわりついていき、雪達磨の形を造っていく。
「あぁ、何だこれは!! 体から全然離れねぇ…」
盗賊の頭は、体にまとわりついていく雪を手で弾こうとするが、どんどん雪の勢いは強まっていく。徐々に体力を奪われていった盗賊の頭は、完全に1体の雪達磨とかした。
「これで、終わりだな。」
盗賊の一味を片付けた俺は、執事風のご老人のもとへ歩いていく。たどり着く前に、あるかどうかわからなかったが、ポーション?よ出ろと思いながら、プレゼントを発動する。ちゃんと、箱が出てきてくれた。中を確認すると、1本の液体の入った瓶が入っていた。もう一度、プレゼントを発動し同じもの獲得する。
そっと、鑑定眼で見ると、ちゃんとポーションだった…
万能の秘薬 ・・・ 蘇生以外のありとあらゆる異常を回復する。欠損部も生えてくる。
ポーションだけど…
うん、気にしたら敗けだ。雑念を振り払い、執事風のご老人のもとへたどり着いた。
執事風のご老人の後ろから、お嬢様が出て来て、お礼をのべてくれた。
「危ないところを助けて下さって、ありがとうございます。え~と…」
「あぁ、名乗っていませんでしたね。私は極月星矢と申します。」
「ゴクヅキ様?」
「セイヤで大丈夫ですよ。」
「セイヤ様ですね。私は、マリーと言います。後ろの人は、セバスと言います。」
「マリーさんとセバスさんですね。」
「はい。それで、助けて貰って申し訳ないのですが、今お礼に差し出せる品が無いのですが…」
「あぁ、大丈夫ですよ。お礼が欲しくて助けた訳じゃありませんから、気にしないで下さい。」
「ですが…」
「お嬢様、では、国に戻るまで護衛を依頼しては、どうでしょうか?」
「あっ!! その手がありました。それなら、助けて貰ったお礼も出来ますね。でも、セイヤ様の都合もありますし…」
「別に、お礼はいいのですが… 護衛の件なら大丈夫ですよ。」
「本当ですか!!」
マリーさんは、眩しい程の笑顔で喜んでいた。
「はい、ですが、うっかり身分証を無くしてしまったので、街に入れるかどうか…」
「任せて下さい。私がどうにかして見せます!!」
マリーさんは凄い勢いで近づいて手を握ってくる。
マリーさんは凄く可愛らしいので、こうして手を握られると、少し照れる。
「マリーさん、それは、ありがたいのですが、手が…」
「手? はっ、す…すみません!!」
顔を真っ赤にして、離れていった。
「大丈夫ですよ。そうだ、よかったらこれをお使い下さい。」
そう言って、マリーさんたちに万能の秘薬を差し出す。
「これは?」
「えーと、ポ…ポーションです。」
「ありがたいのですが、本当に、いいのですか?」
「はい、大丈夫です。」
「ありがとうございます。」
マリーさんから、セバスさんに行き渡り、二人とも飲んでくれる。
「「!?」」
「まぁ、ポーションって、こんなに効くんですね。」
「・・・」
セバスさんは、何か気づいたのか、無言だった。
セバスさんは、チラッとこっちを見ていたが、俺はそっと目をそらす。
その後は、亡くなった護衛の人たちを、3人で弔い、少し壊れていたが、まだ使える馬車を起こす。
逃げ出していた馬は、どうやら、近くにいたようで助かった。
セバスさんが、御者をしてくれて、何故か俺は、マリーさんの相手をするために、馬車の中に入って、街へとむかっていった。
◇
彼は、いったい何者だ。
突然現れて、私たちを助けてくれた。
「あの魔法、何なんでしょう?」
「分かりません。お嬢様、もう少し、さがりましょう。」
「分かりました。」
私は、お嬢様をつれて、もう少しさがる。
それにしても、あの魔法は何なんでしょう。水や氷では無いように思える。あれは、若い頃、東の国でみた確か…雪だった筈?
それにしても、あの人数をものともしない強さ。敵意は感じないので、敵ではないと思う。
盗賊たちは一掃され、彼はこちらに近づいてくる。
すると、彼の前に何かが現れた。あれは、ポーション?
彼は私たちの前で立ち止まる。私が相手にする前に、お嬢様が後ろから飛び出して行った。
私も、後ろからついていく。
お嬢様と彼…セイヤ様と話をして、護衛をしてくれることになった。今後を考えて、セイヤ様が護衛を引き受けてくれて、良かった。
護衛たちの弔いをしようとする前に、セイヤ様より、ポーションを頂いた。
ゴクッゴクッゴクッ
「「!?」」
「まぁ、ポーションって、こんなに効くんですね。」
「・・・」
私は、言葉に出来なかった。
盗賊たちに受けた傷が全て治っていた。
上級…完全回復薬なのか…
いや、よく見たら昔おった古傷も治っていた…
まさか、幻の万能の秘薬なのか…
私はセイヤ様を見てみるとそっと目をそらされた。
言えない事情がおありのようですね…私も助けられた身、何も聞きますまい…
その後、護衛たちの弔いを行い、馬を探し、セイヤ様とお嬢様…王都・ベーネグートの第2王女マリー・フォン・ベーネグート様を乗せて、私たちは、王都へむかった。