表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/175

12.第二王女との初めまして


 大浴場と聞いただけあって、お風呂はとても大きかった。

 泳いでも問題なさそうな広さ。


 …………やらないけど。


「わぁ! レアちゃんの肌、すべすべ!」

「それにもちもちしてて、ずっと触っていたいです!」


 お風呂で洗われている私はすぐ、ミカとユウナに挟まれた。


「……くすぐったい」


 色々なことを色々な人に任せていたから、体を触られることには慣れてる。


 でも、この触り方はちょっと違う気がする。

 ムズムズしてて、変な感じ……。


「レアちゃんって、何か肌のケアとかしてるの?」

「けあ? なにそれ?」

「その肌を保つためにしていることよ。化粧水や乳液を付けるとか……まさか、何も?」

「? わからない」


 そういうのって、付ける物なのかな?

 でも、私もシュリも、けあ? をしたことがない。


 あ、でも……トロネが一回だけ顔に白い布を貼ってたことがある。変な顔って言ったら「乙女には必要なことなんです!」って言われたけれど、もしかしてそれが『けあ』なのかな。


「う、うそ……何もしてないのに、こんなに肌が綺麗だなんて……」

「これが美人の特権……うぅ、理不尽です……」


 ミカだけじゃなくて、ユウナまでも床に手をついて項垂れている。

 …………もしかして、変なこと……言っちゃったかな。


「えっと、そんなに落ち込──」


「オーッホホホ! お二人とも、こんな所で会うとは奇遇ですわね!」


 大浴場にとても響く……これは、笑い声?

 誰だろうと思って入り口に振り向くと、すっごい派手な髪型の女の子がそこに立っていた。


 寝起きに見たら目が痛くなりそうな金色の髪色を、台風みたいにぐるぐるってしてる。不思議な髪。どうやってその形を保ってるんだろう? ……これも魔法なのかな?


「……エリナ様。こんばんは」

「ええ、こんばんは。ですわ! お二人が大浴場にいると聞いたので、わたくしも来てさしあげましたの!」


 さっき「奇遇」って言ってたのに、変なの。


「そうですか。それは良かったですね」


 このぐるぐるちゃんとは初めて会ったけれど、ミカ達のことは知ってるみたい?


「……知り合い?」

「この国の第二王女様です。お名前はエルミリアナ・フェル・ラットベルン。親しい……というわけではないんですけど、私達の勉強中に遊びに来られるので……」


 へぇー、第二王女様なんだ。すごい。

 …………でも、フィル先生とはあまり似てないかも? 第二王女ってことは、先生とは姉妹なんだよね?


「……あら? そこのは」

「ん、レア。よろしく」


 ちょっとうるさくて派手な人だけど、フィル先生の妹なら仲良くしたい。


 そう思って手を出したのに…………


「触らないでくださいまし。平民が」


 その手は、何も触れることはなかった。


「なっ! エリナ様、何を……!」

「レアちゃんも勇者です。どうしてそんな酷いことを言うんですか!?」


 二人は、私を庇ってくれた。

 でも、第二王女は聞く耳を持たない。


「ふんっ、勇者は異世界から召喚される。それが文献にあった記述ですわ。なのに、この者は異世界人ではなく、しかも亜人ではありませんの。…………汚らわしい」


 第二王女が浮かべた顔。

 それは酷く歪んでいて、心の底から私のことを快く思っていないんだって、分かった。


「ちょっとそこの侍女。下民を自由に歩き回らせないように、と言ったはずですわよ」

「も、申し訳ありません! しかし、フィンレール様から『自由にさせろ』と」

「──チィ。あの人か……全く、余計なことを……無能のくせに」


 フィル先生? フィル先生が、無能?


「違うよ?」

「…………はい?」

「フィル先生は、すごい人。無能じゃないよ?」


 好きな人が悪く言われるのは、良い気持ちじゃない。

 だから反論した。


「この! っ、気分が悪いですわ。わたくしはここで失礼します──!」


 第二王女が大浴場を出て行く時、すごい形相で睨まれた。

 …………嫌われちゃった、かな。


 少しだけ落ち込んだ。

 フィル先生と仲良くなれたから、きっとその妹とも仲良くなれると思っていたから。


 ここまで分かりやすい憎悪を向けられたのは、これで二度目。


 最初はお爺ちゃん。

 その次が、第二王女。


 私はあまり、誰かに嫌われることに慣れていない。

 今まではみんな、私のことを好きになってくれた。ここは人間の国だから、そう簡単にいかないって分かっていたけれど…………やっぱり悲しいな。


「気にしないでいいわよ、レア」

「そうですよ。私達はレアちゃんのこと、大好きですから」


 落ち込む私を見て、二人は慰めてくれた。

 優しく頭を撫でてくれて、大丈夫って何回も言ってくれた。


「ん、ありがと……」


 嫌われちゃったのは、悲しい。

 でも、私のことを好きだと言ってくれる人は他にもいる。


 それが、嬉しかった。


タイトル自分で決めといて、ちょっとえっちだなと思いまし(殴

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ