表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/175

9.訓練場に来た


 午前中のお勉強が終わったら、午後は訓練が始まる。

 私は第一王女のフィル先生に運ばれながら、お城の隣に面している訓練場までやってきた。


 今日が初めての訓練だから、ちょっと緊張する。


「レア様。授業で学んだこと、覚えていますか?」

「ん、魔法は六元素。魔法は魔力を使って、使いすぎると危ない」


 お勉強を二時間やって覚えた、三つのこと。

「それだけ?」って思われるかもしれないけれど、これでも頑張って覚えたほう。私の普通はまず覚えないところから始まるから、これは凄い成長だと思う。


「ちゃんと覚えられて偉いですよ。その調子で実技も頑張ってください」

「……うん。頑張る」


 フィル先生は、そんな私のことを褒めてくれた。

 普通は呆れられると思う。でも先生は呆れも怒りもせずに褒めてくれるから、それが嬉しかった。


「やぁ、レア。勉強お疲れ様」


 訓練場に行ったら、先に到着していたハヤト達がこっちに気づいてくれた。

 私も手を振って挨拶を返す。


「レアちゃんこんにちは! 今日から訓練ね。緊張するわ……」

「ん、私も」

「魔法、頑張って覚えましょうね!」

「ん、頑張ろうね」


 訓練はハヤトと、他三人でやることが違う。

 ハヤトは剣術を習うことになっていて、私達は魔法を習う。


 でも、同じ魔法でも人によって適性が違うみたいだから、全部一緒ってわけじゃないのかな?


「では、私は向こうで見学していますね。何かあればすぐに呼んでください」


 訓練場には観戦席があって、フィル先生はそこで私達の様子を見学するみたい。


 …………お勉強が始まってからかな?

 そこら辺から、フィル先生が私の移動を手伝ってくれることが増えた。


 先生は「勇者様をサポートするのが王族の務めです」って、言っていた。

 他にも「私にはそれくらいしか出来ませんから」とも……。それはどういう意味なんだろう? フィル先生は第一王女だし、やることは多いんじゃないかって思う。


 でも、思い返してみれば、フィル先生と他の人間達が話しているところを見たことがないかも?

 もちろん、出会えば多少の挨拶はしているけれど、それも『最低限』って感じがする。フィル先生の方が距離を置かれているのかな。


 ……やっぱり分からないな。


 フィル先生は良い人だと思う。

 嫌な魔力じゃないし、私のことを沢山褒めてくれるから。


 何か事情があるのかな。

 私は部外者だから、きっと関わらないのが正解なんだと思う。


 でもちょっとだけ、気になっちゃうな。

 フィル先生のことは好きだから、その好きな人が距離を置かれているのは……もやもやする。


 この時、クロならどうするのかな。

 私は頭が良くないし、考えるのも遅いから、いつもクロ達に助けてもらってた。だから急に一人になったせいで、余計なことまで考えちゃう。


 改めて私は、一人じゃ何も出来ないんだなって分かった。


「…………全員、揃っているな」


 野太い男の人の声。

 意識を現実に戻すと、知らない人が訓練場に入ってくる姿が見えた。


 黒髪を全部後ろに流していて、強面っていうのかな……身長が高いから迫力がより伝わってきて、気弱なユウナは少し萎縮していた。歳はあまり分からないけど、ミルドさんよりは若い……かな?


「初めまして、だな。俺はバーグ・ギムレット。王国騎士団長を務めている者だ。陛下より指導係としての命を承った。これから会うことも増えるだろう。よろしく頼む」


 強そうな人だなぁとは思ったけれど、王国騎士団長だったんだ。

 なら、ハヤトを中心に教えるのかな。それとも指導係は他にも居て、このバーグさんが代表として挨拶しに来てくれたのかな。


「ハヤトです。よろしくお願いします!」

「ミカです。お願いします!」

「ユウナ、です……よ、よろしくお願いします」

「…………レア」

「ハヤト、ミカ、ユウナ、レアだな。堅苦しいのは苦手なため敬称は省く。一応お前達の教官という立場になるが、どうか遠慮せずに接してもらえるとありがたい」


 バーグさんは、悪い人じゃないみたい。

 でも、ちょっとだけ不思議。何かを隠しているような感じっていうのかな。それをバーグさんの魔力から伝わってきた。


 これが『力を隠している』ってことなのかな?

 前に、クロも同じことをしているって言っていた。力を放出したままだと街中の弱い眷属達が萎縮しちゃうから、普段はあえて力を内側に隠しているんだって。


 バーグさんも、そうなんだと思う。

 だから少し違和感があるんだ。上手くそれを隠し切れていないのは、クロほど熟練された実力者じゃないから……なのかな。


「ハヤトが剣術を、他の三人は魔法だったな。今日は急に何かを学ぶということはせず、基本的なことを確かめていこうと思う」

「基本的なこと、ですか?」

「ハヤトはまず体力をつけることから始める。その体では十分に剣を振ることも難しいだろうから、今後は筋トレからだな。他の三人は魔法適性を調べたい。まずは魔力を可視化させられるようにやってみろ」


 魔力の可視化?

 それはどうやってやるんだろう。


 私にも出来るのかな。

 …………ううん。頑張るって決めたんだから、頑張ろう。


 私ならやれる。できる。

 そうやって頑張れば、きっと私でも大丈夫だと思うから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] うむ? このバーグ・ギムレットとか言う王国騎士団長サマ。 なんかチカラ以外にも隠してそうなのがね?(ジト目)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ