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44.殺したいほどに憎んでいる

どうも、おはようございますこんにちはこんばんは。


新年早々、風邪を引いて寝込んでいた私でございます。

いくら動くのが面倒でも、コタツでは寝ないようにしましょうね……。


「クレアぁああああああ!!!」


 名前を呼ばれた。

 その声は怒りに満ちていて、私に向けて殺気を飛ばしているようにも思えた。


 実際、その通りだった。


 顔を歪ませたお爺ちゃんは、私を殺そうと鬼気迫る勢いで暴れていた。

 その手には、いつの間に出したのか分からない真っ赤な片手剣が握られていて、それを振るうたびに衝撃波を放って周囲に被害を出している。


 すごく強そうな剣だ。

 私の血で作った剣ほどじゃないけれど、相当な魔力が込められているって分かる。


 吸血鬼には先祖代々伝わる魔剣がある……って、パパが言ってたような気がする。

 お爺ちゃんが持っている剣が、その魔剣なんだと思う。


 それは使用者の身体能力を数倍に引き伸ばして、魔力を吸えば吸うほど剣の切れ味と、剣から放たれる衝撃波の威力が上がるというものだった。


 そんな魔剣の力と、お爺ちゃん自身の火事場の馬鹿力が合わさって、お爺ちゃんはその見た目からは信じられないような暴れ方をしていた。


 それを抑えているのがクロ、ローム、シュリだ。

 私に指一本触れさせないように、街の被害が出ないようにって、頑張って応戦してくれている。


 でも、ブラッドフェンリルが本気を出せば、逆にこの街を壊してしまうから、少し動きづらそうにしていた。


 私は、どんな攻撃をされても死ぬことはない。

 だから傷ついてまで私を守らなくていいのに、クロ達は必死に脅威を遠ざけようと頑張ってくれている。



 その背中が、後ろ姿が──懐かしい記憶と重なった。



 私を殺そうと送られてきた刺客。

 私の力を利用したがっていた吸血鬼の偉い人。


 そういう人達から必死に守ってくれた、パパ。

 …………おかしいな。パパもクロも姿は全然違うのに、どうして今……そんなことを思っちゃったんだろう。


「儂の邪魔をするな!」


 苛立たしげに、お爺ちゃんは剣を振る。

 その一撃一撃に建物を粉砕する力が込められていたけれど、クロ達は躊躇いなくそれを正面から受け止め、防いでいる。


 クロ達から溢れ出した血液が地面に滴る。


 ──やめてほしかった。

 私や、私の街のために、そんな痛い思いをしないでほしかった。


 それでもクロ達は止まらない。

 建物を壊さないためには、それ以外に方法はなかったから……。



「ギャーギャーうっさいわねぇ! そんなの邪魔するに決まってんでしょ。私達の可愛いクレアちゃんを殺そうとするアンタを、黙って見逃す訳ないじゃない!」


 シュリが吠える。

 その言葉は衝撃波になって、お爺ちゃんの体を強く叩いた。


『姫様は、俺達みたいな魔物にとって何よりも大切な存在なんだよ。俺達に居場所をくれた。安らぎを与えてくれた。だから姫様も、姫様の街も──絶対に守るんだよ!』


 ロームが地面を蹴る。

 よろめいているお爺ちゃんに接近して、その体を天高く打ち上げた。


『主の脅威となる者であれば、我々は容赦無く排除する。それがたとえ……主の家族であっても、だ』


 クロは口に魔力を溜め込んで、一気にそれを放出する。

 今も空中にいるお爺ちゃんにそれを防ぐ術はなかった。とても濃厚なブレスに直撃したお爺ちゃんは、更に高く打ち上げられて、街を覆う結界に衝突した。


 そのまま、重力に従って落ちてくるお爺ちゃん。

 ズドーンっていう重い音が響いて、砂埃が周囲に巻き起こった。


「……っ……ぐ、ぅぅ!」


 お爺ちゃんはまだ息をしていた。

 流石は吸血鬼。どんなに年老いても、その体質だけは健在みたい。


「儂が、この、儂が……魔物風情に負ける、だと? ……あ、ありえない。そんなことは、あってはならない……!」


 吸血鬼は全種族の頂点に立つべき存在、だっけ?


 お爺ちゃんの野望は、はっきり言って──どうでもいい。

 頂点に立ちたいなら勝手にすればいい。その結果、他の種族がどうなっても私の知ったことじゃない。


 でも、私の街に意地悪することだけは許さない。


 お爺ちゃんはみんなに迷惑をかけた。


 街を壊そうとした。

 クロ達を、傷つけた。




「お爺ちゃん……」


 私はゆっくりと、倒れ伏すお爺ちゃんのところに歩いた。


「お爺ちゃん、私ね……お爺ちゃんのことが嫌い、大嫌い」


 だってお爺ちゃんは、パパを殺したから。


「殺したいほどに憎いって、思ってるよ。お爺ちゃんを許すことは、絶対に……あり得ない」


 でも、私はお爺ちゃんを殺さない。

 それじゃダメなんだって、気付いたから……。


「私は、パパの娘なんだ」


 パパはとっても優しかった。

 パパはどんなことがあっても怒らなかった。ずっと笑顔を浮かべていて、使用人の人達とも仲が良くて、敵対するはずの魔物相手にだって優しく接していた。


 見る人が見れば、ただのお人好しだって言われるかもしれない。


 でも私は、そんなパパが大好きだった。

 その娘である私が、パパの意思を引き継ぐ。パパみたいになりたいって、本気でそう思っているから。


 憎しみで人を殺すのは簡単だ。

 でも、それをしたら……私は『お爺ちゃん』と同じになっちゃう。


 それだけは──嫌だ。


「だから、私はお爺ちゃんを殺さないよ」


“その背中が、後ろ姿が──懐かしい記憶と重なった”


クロ『(ドヤァ)』


いい感じの雰囲気出しているところ申し訳ないのですが、その台詞……すでに感想で言われてます。


クロ『なんだとぅ!?』

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― 新着の感想 ―
[一言] 殺したかっただけで死んでほしくはなかった そんな迷言がある某採集決戦みたく、その爺さんの心が死ぬまで、四肢切断をずーっと繰り返すのはいかがか。 素材欲しさに何百何千万の柱がやられたあのお祭り…
[一言] なお、生存する事が必ずしも救いとは限らない模様。…というか爺ちゃん思ってた以上に脳みそカチカチやな…Switch版脳トレやる?
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