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2.成長する契約


 ん、寝てた。

 …………いつも通りか。


 私は、いつもの丘に居た。

 寝ている間にクロが運んでくれたみたい。


 ……………………もふっ。


「ん、」


 背中がすごくモフモフしてる。

 振り向かなくても分かる。これはクロの感触だ。


「クロ、運んでくれてありがと……ぅ?」


 首を回して、首を横に倒す。

 クロの周りにはお菓子とか野菜とか、とにかく沢山の食べ物があった。


「………………また?」

『……うむ』


 これは街の魔物達からもらったものだ。

 私が姿を現すだけで魔物達はすごく喜んで、散歩をする度に沢山のお供え物(?)をくれる。

 みんなは善意で物をくれるから、拒否するのは悪いかなと思って、無理のない範囲でという約束で貰える物はもらうようにしていた。


 でも、散歩をする度にお供え物が多くなるから、そろそろ貰うのも悪い気持ちになる。


 クロから聞いた話によれば、最近は軽いお祭りになっているみたい。

 ただ私はずっと眠っているから、みんな私を起こさないように細心の注意を払っているせいで、見た目はお祭り騒ぎのくせに誰も一言も喋らないし音も出さないから、側から見れば異質なんだとか。


 見てみたい気持ちはあるけれど、そのために起きるのも億劫。

 ……そうだ。

 誰か映像を記録する魔法とか知らないかな。

 見たこともないし聞いたこともないけれど、あったら面白そう。


 …………あ、でも……却下。


 自分で言うのは恥ずかしいけれど、街に住むみんなは私のことが大好きだから、使い道は私の寝姿を記録するだけになっちゃう。それはダメ。すっごく恥ずかしい。


『それはいいな。魔法が得意な者を集めて、研究させてみるか』

「え?」


 聞こえて、た……?


『驚いたか?』

「……ん」

『我も最初は驚いた。ある日、急に主の考えていることが分かるようになった。おそらく、主による契約が強くなったのだろう』


 詳しく話を聞くと、変化が起こったのはクロだけみたい。

 シュリやローム、ラルクはまだ私の考えが読めていないらしくて、すごく悔しがっていたとクロが自慢げに言ってくれた。


 契約した魔物の考えは最初から分かっていたけれど、その逆は初めてだった。

 驚いたけれど、嫌だとは思わない。

 それだけクロと仲良くなれたってことだと思うから、分かりやすい証明があって……嬉しいな。


「…………でも、やっぱり恥ずかしい」

『恥ずかしがっている主も可愛いな。……安心しろ。主の心をいつも覗くような無礼はしない。今何を考えているのだろうと気になった時だけ、覗かせてもらいたい』

「ん、それなら大丈夫。クロになら、いいよ」

『ありがとう。実は、断られたらどうしようかと、内心ドキドキしていたのだ』


 断るわけがない。

 本当に、クロは心配性だ。


「…………でも、急にどうしてだろう?」

『わからない。何かきっかけがあるのだろうが、なぜ我だけなのかは理由が定かではない』


 私はクロが大好きだし、他のブラッドフェンリルのみんなも同じくらいに好き。

 そこに差はない。

 ただ一つあるとすれば、それは……。


「契約の、順番……?」

『その可能性はある』


 なら、あの三匹もすぐにクロと同じになるのかな?

 …………でも、時期はそんなに変わらないはずだから、まだクロと同じじゃないのはおかしい気がする。


『もしかしたら、一定周期の制限があるのだろうな』

「周期?」

『例えば、一ヶ月に一人という具合だな。だから契約した時期がほぼ同じでも、ブラッドフェンリルで我だけが契約の一段階上に来たのかもしれぬ』

「おお、なるほど……」


 流石、クロ。頭いい。


『何の確証もない今、これはただの予想でしかないがな。今後は契約のことについても調べていこう』

「ん。私も知りたい」


 そうすればみんなともっと仲良くなれるし、契約の力がもっと強くなれば、みんなが強くなれるかもしれないから。


『…………そろそろ戻るか。帰りが遅くなると、ラルクがうるさいからな』

「ん。今日も気持ちよかった」


 たまにはお外の空気を吸うのも悪くない。

 一人で動くのは嫌だけど、クロが一緒に居てくれるから、お外で眠るのも好きになった。


 ……これが信頼なのかな?


『では主、背中に』

「うん……」


 クロの背中によじ登って、寝そべる。


 お部屋に戻ろう。

 またそこで、ゆっくり眠るんだ。


「面白い」「続きが気になる」

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― 新着の感想 ―
[一言] >使い道は私の寝姿を記録するだけになっちゃう。それはダメ。すっごく恥ずかしい。 >『それはいいな。魔法が得意な者を集めて、研究させてみるか』 クロ、S疑惑。
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