34.ほぼ互角
惰眠から目覚めました
準々決勝の2回戦目は、魔王軍の兵士たち。
どちらも色々な戦いを経験してきたからか、今までの試合でも優秀な成績を残していて、どっちが勝つのかみんなの予想は割れている。
片方はケンタウロス。
人間の上半身と馬の下半身が合体したような見た目で、槍を持っている。相手の周りをぐるぐる走って撹乱しながら、素早い動きで攻撃したり離れたりを繰り返す戦い方が得意みたい。
もう一方は亀? が二本足で立っているような見た目の魔物。
初めて見たから種族名はわからない。でも、名前は知ってる。たしかミルズさんだったはず。魔王軍が住んでいる野営地の門番をしていて、何度かお話ししたから顔見知りだ。
ミルズさんはすごく重そうな鎧を身につけていて、見た目通り防御に特化した戦い方だ。今までの戦いでは、みんな彼の防御に傷を与えられなくて、降参していた。でも動きはすごく遅いから、相性は悪いのかな?
「静と動の戦い。面白い試合になりそうですね」
フィル先生はこの戦いに興味津々みたい。
「先生は、どっちが勝つと思う?」
「ミルズさんですね」
即答だった。
しかも、その予想に相当な自信を持っているみたい。
「どうして?」
「やはり、圧倒的な防御力でしょうか。それに加えて敵の攻撃の捌き方が上手です。対してコラットさんの俊敏さは目を見張るものはありますが、手数で攻めていることから、いまいち破壊力に欠けるところがあります」
コラットさんはケンタウロスの人かな?
フィル先生は魔王軍の訓練にも時々参加しているから、そこで知り合ったんだと思う。
「あの防御を破る奥の手を持っているなら、試合の結果はわかりませんが……」
やがて試合が始まり、フィル先生の予想通りの結果に終わった。
最初はコラットさんが優位に立っていた。色々動き回って防御の薄い箇所を狙いながら攻めていたけれど、やがて休みなく走り回って疲れたのか徐々に動きが鈍っていく。
結局はミルズさんの粘り勝ち。
それでも両方ギリギリの戦いだったみたいで、試合が終わった後、しばらくどっちも動けずにいた。
「瞬時に相手の弱点を狙い、的確に突く。……なるほど、彼の判断力を侮っていました。そしてミルズさんの攻撃を捌ききる技術……やはり素晴らしいですね。私もあれを見習いたいものです」
「…………」
「ん? どうされました?」
「……ううん。なんでもない」
フィル先生、どんどん戦闘知識が増えているような……。
「まぁ、いっか」
先生が楽しいなら、それでいい。
それに、今みたいに学習している先生はすごく生き生きしている。それを見ると私も嬉しくなる。
「ですが、少し可哀想ですね」
「ん、なにが?」
「準々決勝で勝ったということは、次の相手は」
「──あ」
準々決勝2回戦目の勝者は、1回戦目の勝者と戦うことになる。
そして、1回戦目で勝ったのは。
「大丈夫かな?」
「まぁ、クレア様からの言葉もあるので、一撃で終わることはないでしょう。……多分」
ちょっとだけ、この先のことが心配になった。