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29.第2試合 その3


 誰もが息を飲んでいた。

 お互いに全力を込めた一撃。それが交差した後の静寂が、永遠に続くように思えた時、ほぼ同時に二人は地面に倒れこんだ。


「引き分け……?」

「いいえ。まだよ」


「「ぐ、ぉぉぉお!!!」」


 最後の力を振り絞ったような雄叫び。

 どっちもまだ倒れていない。でも、どっちも、もう満身創痍に見える。


「こ、これは殴り合いだぁ! 両者とも、最後は武器を捨てて殴り合っているぞ!」


 武器を持つことさえ放棄して、二人は拳をぶつけ合う。


 オークの荒々しい攻撃なんてなかった。

 ゴールドの洗練された剣捌きなんてなかった。


 殴って、殴って、殴り合って。

 回避なんて一切考えていないのか、ただ目の前の対戦相手を殴ることだけに集中している。


「が、頑張れええええ……!」


 観客の一人が、そう叫んだ。

 それにつられるように、他の観客たちも叫び始める。


「負けるな! 頑張れ!」

「そんなもんじゃねぇだろゴールド! 人間の底力を見せてやれ!」

「最弱種デも強くなっタ! ソレを見せロ!」

「この日のために特訓したんだろ! 倒れるなオークジェネラル!」


 まだ第2試合。

 コロセウムは始まったばかりで、この後も試合は沢山残っている。

 それでも、戦っている二人にとっては代えの効かない本番。だから死に物狂いで頑張っている。だから気絶寸前になっても拳を握るのをやめない。絶対に諦めようとしない。


「「うおおぉおおおおおおおおお!!!!」」


 でも、終わりは必ず訪れる。

 渾身の一撃がお互いの顔に炸裂して、両者とも動きが止まる。


 数秒後、片方の体がぐらりと揺れた。


 最後まで立っていたのは────


「し、勝者! ゴールド選手! 熱い激闘を制したのはゴールド選手だぁぁぁ!!!!」


 割れるような歓声が会場に響く。


「進化した魔物に圧倒的な力を見せつけられ、手も足も出ずに敗北した彼が今日! ついにリベンジを果たした! 人間はまだまだ強くなれる。それを証明してくれたゴールド選手に拍手を!」


 まだこの状況に追いつけていないのか、勝った本人は放心状態で立っている。

 でも、少しずつ勝利を実感してきたのか辺りを見渡して、両手を上に挙げて、勝利の喜びを全身で表現しながら────後ろに倒れた。


「気絶、してる……?」


 すぐに救急班が飛んできて、二人を運んでいった。

 ゴールドも本当の本当に限界だったのか、緊張の糸が切れた瞬間に意識を失っちゃったんだと思う。


 どっちも全力を出し尽くした。

 だから、どっちもすごくカッコよかった。


 そんな二人に、私は精一杯の拍手を送った。


短いですが今回はここまで!

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