27.第2試合 その1
「さぁさぁ! 記念すべき第一試合に相応しい戦いを繰り広げてくれた二人に拍手を!」
会場が割れるくらいの大きな拍手が響き渡る。
それだけ、みんながクロとミルドさんの戦いに感動したんだと思う。私も見入っちゃったし、あんなに本気で戦える二人は本当にすごいなって思った。
二人のおかげで、この後の試合も楽しみになった。
多分、観客のみんなも同じなんじゃないかな。
「……すごかったね」
「ええ、クロは相変わらずだったけれど、ミルドも案外いい動きするじゃない。見直したわ」
「ミルドさんの全盛期のお話は聞いていましたが、やはり素晴らしい。何より強大な敵を前に一歩も引こうとしないその姿勢。同じ魔法を志す者として、見習いたく思います」
シュリとフィル先生も、今の戦いを褒めていた。
……うん。これは期待以上の盛り上がりになるかもしれない。
「さぁ次々と行っちゃいましょう! 第二試合の選手の紹介よ!」
リリーちゃんは興奮が冷めていないのか、一回目よりも興奮した様子で次の試合に出場する選手の紹介を始めた。
最初に出てきたのは、元冒険者のゴールド。
彼も参加しているってことは、彼の仲間の二人も参加しているのかな?
これは後になって聞いた話なんだけど、ゴールドは人間の中では強い方で、彼らがここに来る前は各地で様々な活躍をしているすごい冒険者だったみたい。
その活躍は他国に住むフィル先生でも知っているくらい。
数々の武勲を手に入れた有名人と会えた。握手もしてもらった! って、私にお話ししてくれたフィル先生の興奮した顔は、まだ鮮明に覚えている。
そんなゴールドと戦うのは、私が契約した魔物。
ここが出来て最初の頃に、傘下に入りたいって私のところにやってきたオークの代表。
私と契約したら進化して、今はブラッドオークジェネラルになったんだっけ?
あまり細かく覚えていないけれど、前はあまり強そうな見た目じゃなかった。
でも、このオークはすごい筋肉だし、装備もちゃんとした物を身につけていて、普通に強そう。
それに喋りもすごく流暢になってる……?
前はたどたどしい感じだったはずだけど、ゴールドとの会話を聞いている感じ、人間同士が喋っているくらいには違和感がない。
「両者とも準備はいい? それじゃあ第二試合────始めぇええええ!」
掛け声と同時に、両者は地を蹴った。
ゴールドの武器はロングソードで、オークの武器は巨大な棍棒。どちらも接近して戦う武器だ。
会場の真ん中で二人はぶつかって、その衝撃が風になって私たちのところに届く。
ただぶつかっただけでは終わらない。オークはその腕力で人間の太さくらいある棍棒を木の枝のように振り回し、対するゴールドは避けたり、受け流したりと怒涛の攻撃を綺麗に捌いている。
「まだ、どちらも本気ではありませんね」
「……そうねぇ。体が温まるまでの準備運動ってところかしら」
二人がまだまだ本気じゃないってことは、私も気づいていた。
だって二人とも──すごく楽しそうに笑ってる。
「ハハッ! まさか、魔物と生死をかけた戦い以外で手合わせすることになるとは思わなかった!」
「オレもだ。以前は強敵を前に逃げるばかりだったガ、今は違うッ!」
オークは吠える。
「偉大なるクレア様から頂いた、この力! ただの弱者だったオレは、こんなにも強くなれたのだと、今ここで証明する!!!」
「叫んだだけでこの気迫か……なるほど。気合十分ってことだな。ならば良し! 俺もここに来てから多少は強くなったんだ。新しく覚えたこの技で、きみに対抗しよう!」
ゴールドが新しく覚えた技?
強くなりたい人たちが集まって稽古していることは聞いていたけれど、そこで何か覚えられたってことなのかな。
私は、人間とは契約を結んでいない。
魔物はほとんどが魔素で出来ているから、契約で大量の魔素が入ってきても耐えられる。むしろそれのおかげで強くなれる。
でも、人間はそんなに多くの魔素を持っていない。
私の契約に耐えられるかわからない。絶対に安全だとは言えないから、まだ試せていない。
この街に来ても、人間は変わらない。
新しい力に目覚めることも、魔物みたいに進化することもない。
だから、ゴールドが覚えた新しい技が何なのか……ちょっと期待している。
活動報告のほうにお知らせがあります。
更新に関しての重要なことなので、読んでいただけると助かります。