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23.難しいお話


「……びっくりした」

「皆、レア様のお声が聞けて嬉しかったのでしょう。あのようになるのも仕方ありません」


 開会式? が終わって、今はコロセウムの準備中。

 試合を希望した参加者は全員地下に集まって、大会の説明を聞いているみたい。


 だから、今ここにはクロもシュリもフィル先生もいない。


 私の隣にいるのはリリーちゃんだけ。

 リリーちゃんは大会の司会進行役を務めるみたいで、本当はクロ達と一緒に説明会に参加しなくちゃいけないんだけど、それだと私を守る人がいないってことで、説明会は別の主催者側の係が代わりに説明してくれるみたい。


 だから、主催者席にいるのは私とリリーちゃんだけ。

 …………正直、寂しいとは思う。クロもシュリも、フィル先生もいない。ずっと私の側にいてくれた大切な家族が近くにいないのは、ちょっとだけ落ち着かない。


「あー! やっと本番ね! すっごく大変だったんだから、今日は絶対に成功させるわよ!」

「ん、楽しみ」

「今回のコロセウムは『勝ち残り方式』っていうのを採用しているのよ。誰が誰と当たるかはくじ引きするまでわからなくて、そこでペアになった方の勝者が第二回戦に、また勝てば第三回戦に上がっていくの」

「……? あまりわからない」

「んー、まぁ細かいことは大丈夫よ! 要は1対1で戦って、それを繰り返していく感じ。で、最後に残った二人が戦って優勝者を決めるの。これは人間の街でよく使われている大会方式なのよ!」


 でも、リリーちゃんがいるから退屈じゃない。


 リリーちゃんは私が飽きないようにって、ずっと色々な話題を振ってくれる。

 ……私は会話が下手だから、自分から話題を持ち出したり、次々と言葉を並べていくことはできない。それを察してくれているから、少しでも退屈しないようにって気を遣ってくれているんだ。


 おかげで退屈じゃない。

 だって、まだ眠くないもん。


「ねぇねぇ、ご主人様は誰が一番になると思う?」

「クロ、が……一番強いよ」

「おお、断言するなんて、さすがは一番の腹心ね」

「ん、当然」


 魔力量を見てもクロが一番強くて、強くあり続けることを一番努力してる。

 それに、クロは一番最初に私と契約した魔物。もちろん誰よりも信頼してるし、誰よりも強くあってほしいと思っている。


 だから、もし誰かが一番になるなら……クロだと嬉しいな。


「ち・な・み・にぃ……優勝者にはご褒美があるのよ! 何でも一つお願いを叶えられるっていうご褒美。もしクロが優勝したら、一体なにをお願いするのかしらねぇ?」

「クロの、お願い……?」


 クロは、あまり自分からお願いを言わない。

 気恥ずかしいと思っているのか、他の人がいる前だとわがままを我慢しちゃうの。……たまに本音がポロッと出ちゃう時もあるけど、それは色々と暴走しちゃってる時とか、本当に我慢できなくなった時とかだけ。


 だから、クロがお願い事を言うのはすごく珍しい。


「一番ほしい、お願い……」


 なんだろう。気になる。

 どれなんだろうって考えたら、余計に気になってきちゃった。


 それはクロだけじゃない。

 シュリもフィル先生も、今回参加したいって手を挙げたみんなも。もし優勝できたらどんなお願いをするのかなって、すっごく気になる。


「……聞いたら、みんな教えてくれるかな」

「ご主人様が言ったらすぐに教えてくれそうだけど、それはやめたほうがいいわよ」

「……どうして?」

「だって、楽しみが減っちゃうでしょ?」


 リリーちゃんは人差し指を唇に当てて、楽しそうに笑った。


 楽しみ。

 ……そっか。


 誰かが優勝した時、その人は一体どんなお願い事を言うんだろうってみんなドキドキするよね。

 でも、先にそれを聞いて知っていたら、そのドキドキが無くなっちゃう。みんなと同じ感情を楽しめなくなっちゃうんだ。


「ん、我慢する」

「えらい! ちゃんと自分で考えて答えを出せるご主人様、とっても偉いわ!」

「…………そんなこと、ないよ?」

「いいえ、そんなことある! ……いい? 世の中には、とても簡単なことなのにいつまで経っても自分で答えを見つけ出せない人が沢山いるの。それは複雑な事情とかがあったりするんだけど、他の人なら即決できるのに、悩んで悩んで、悩んだ挙句にその一番簡単なことが難しくなる時があるのよ」

「そうなの?」

「ええ! だから、ちゃんと自分で考えて、それを理解して答えに出せるのはとても偉いことなのよ! その上、ご主人様は我慢もできる! もう偉すぎ! 誇っていいわ!」


 リリーちゃんは、たまに難しいことを言う。

 ちゃんと理解しようと思って考えるけど、考えれば考えるほど理解ができなくなっていく感じ……。


 リリーちゃんは長生きしている。

 悪魔だから寿命はほとんどなくて、生きようと思えば何千年も生きていられる種族。リリーちゃんは私が生まれるよりもずっと前から、この世界のどこかで色々なものを見え、経験してきたんだと思う。


 だから、たまに出てくる言葉が……私には、すごく難しい。


「よく、わからない……」

「今はまだわからなくても大丈夫よ。それを教えるためにご主人様の周りには沢山の人がいる。まだ未熟なご主人様を守るために沢山の人がいる。だから一緒に考えればいいの。──大丈夫! ご主人様はまだまだ若いんだから、焦らずゆっくりと覚えていけば、いつかは立派なレディーになれるわよ!」

「立派な、れでぃー?」

「そう! 目指すは誰もが憧れる魅力的な大人! 最高のレディーよ!」


 ──私みたいな、ね!

 と、リリーちゃんは胸を張りながらそう言った。


「…………お胸、かぁ……」


 それなら、私はシュリみたいな大人になりたいな。


ちなみに、何がとは言いませんがシュリはDです。

何がとは言いませんが……。

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[気になる点] > 「皆、レア様のお声が聞けて嬉しかったのでしょう。あのようになるのも仕方ありません」 と > 今ここにはクロもシュリもフィル先生もいない。 合わなくない?
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