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22.開会式?

お久しぶりです!

リアルの方で厄介なことがありまして( Twitter見てくれている方は何となく察してください)、しばらく投稿をお休みしていましたが今日から再開します!よろしくお願いします!


後書きにお知らせがあるので、忘れずにチェックです!


 クロの予想通り、新しくできた訓練場はすぐに街の住民で溢れかえった。

 私は今、クロたちと一緒に訓練場の地下にある控え室にいるけれど、みんなの興奮したような声がここまで伝わってくる。


「………………(そわそわ)」

「レア様、落ち着きませんか?」

「…………ん、ちょっとだけ……」


 何度も言ってるけど、こういうのは初めてだから緊張しちゃう。

 この街ができて初めての大きなお祭りがもう少しで始まるって考えると……なんだか落ち着かない。


『入念に計画してきたのだ。絶対に成功させるから、主はドンと構えて楽しんでくれるだけでいいぞ』

「ん、がんばる……!」

『いや、そこを頑張る必要はないのだが……ふっ、なんとも主らしいな』


 クロが笑ってる。

 それに、みんなも……。


「……?」


 なにか面白いことでもあったのかな。

 うーん、わからないや。


「みんなぁああああ! おっまたせぇ! そろそろ開始の挨拶をするから、移動してね!」


 ちょっと生温かいような空気に首を傾げたところで、ダダダッ! って足音が近づいてきた。

 控え室に入ってきたのは、予想通りリリーちゃん。


「ようやく、ね……それじゃあ行きましょうか」

「ん……」


 みんな動き出して、私はシュリに抱っこされながらお部屋を出る。

 そのまま長い廊下を歩いて主催者席まで移動する。


 ──わぁああああああああああ!!!


 お日様に当たるところまで出た瞬間、花火以上の歓声が鳴った。


『皆、主の到着を喜んでいるようだ』

「……そうなの?」

「コロセウムの開催もそうですが、レア様を一目見たいという理由で集まった者も多いようです。……本当に、レア様は皆から愛されていますね」


 そう言われて、ぐるりと観客席を見渡す。


 ……みんな、こっちを見てる。

 小さな声で私の名前を呼んでいる声も聞こえてきた。


「手を振ってあげたら? きっと喜ばれるわよ」

「……んーん、恥ずかしい」

「あぁん可愛い!」


 みんなから見られているのが恥ずかしくなって、シュリの胸に顔を埋める。

 そしたらシュリは悶絶し始めた。なんだか後頭部に生温かいものが垂れてきた感覚があるけれど…………気のせいだよね?


「はぁぁぁ、うちの子が尊すぎるわ……」

「レア様が大変可愛らしいのは同意しますが、お体を汚すのだけはやめてくださいね。折角のお祭りなのです。代表が血まみれでは皆が驚いてしまいます」


 …………気のせいじゃなかった。


「……よしっ。これで大丈夫。今日もとても可愛いですよ、レア様」

「ん、ありがとう」


 お礼を言えばフィル先生は満足そうに微笑んで、一歩後ろに下がる。

 逆に、クロとシュリは歩みを進めてさらに前へ。主催者席から全部を見渡せる位置まできて、ようやく足を止めた。


『皆の者、よく集まってくれた』


 クロが話し始める。


『今日という日を無事に迎えられたこと、とても嬉しく思う。これも街の住民や魔王軍の者たち、皆の協力があってこそだ。感謝する』


 魔法で声を拡散しているのかな。

 大声を出しているわけじゃないのに、訓練場全体に声が響いている。


 みんな、それに聞き入ってる。

 さっきまであんなに騒がしかったのに、誰も、一言も話そうとしていない。


『我らが主も、今日が来ることをとても楽しみにしていた。……我も同じだ。街が作られて初めての催しだ。皆にも存分に楽しんでもらえたら嬉しく思う』

「それじゃあ、退屈な挨拶はこれくらいにして、ここでクレアちゃんの言葉をもらいましょうか!」

『おい待て、まだ話は終わってな────



 うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!



 会場が喝采に満ち溢れる。

 さっきまでの静かさは嘘みたいで、また、みんなの視線が私に注がれているのを感じた。


「えっ、え……?」

「大丈夫よ。こういう時は好きなことを話せばいいの。みんなそれで満足するんだから。……ね?」


 ね、って言われても……どうすればいいのかわからない。

 演説してほしいって言われて、それに同意した。でも、いつやるかは聞かされていなかったから、まだ何て言ったらいいのか決まってない。


「大丈夫。私たちがいるわ。だから安心して?」


 そう言われて、地面に降ろされる。

 急に寂しくなって、何だか怖くなって……助けてって後ろを振り返ると、クロもシュリもフィル先生も、みんな笑顔でこっちを見てるだけで何もしてくれなさそうだった。


『主の言いたいことを言えばいい。誰も笑わないさ』

「なんでもいいのよ。クレアちゃんからの言葉なら、何を言われても喜ばれると思うわ」

「無理して声を張らなくても大丈夫ですよ。私の魔法でしっかりと全員に届けますので、レア様はいつも通りで構いません」


「…………うん……」


 なんだか、絶対に手伝ってくれなさそうな雰囲気があった。


 でも、これは私が納得して「やる」って言ったことでもある。

 だから、ここにきてやっぱりやりたくないって我儘は、みんなを悲しませるんだろうなって……それだけはわかった。


 それでも……それでも、なんて言ったらいいんだろう?


 言いたいことを言えばいいって言われた。

 私の言葉ならなんでも喜ばれるって言われた。


 だったら、今、私が言いたいことは…………。


「み、んな……えっと、その…………楽しんで、ね?」


 時が止まったような、一瞬の静寂。

 その直後、今日一番の歓声が訓練場に──街全体に響き渡った。


一年くらい休止していた

『転生エルフさんは今日も惰眠を貪ります』の更新を再開しました!

(理由は活動報告の方に載せているので、もし気になるならそちらへ……)


惰眠シリーズ(私が勝手に呼んでいる)では転生エルフさんが1番目で、この惰眠追放が2番目となります。

なので、惰眠追放が好きな方には気に入ってもらえると思うので、ぜひぜひそちらも読んでみてくださいな!

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― 新着の感想 ―
血には反応するけど 鼻血には反応しないんだね
[良い点] クレアちゃんのたどたどしい喋り方や不安で何度も振り返る所、勇気を出してスピーチに臨む心境や瞬間、全てが愛しくて尊くてシュリさんが生暖かいものを出してしまう気持ちがわかります…! 思いっきり…
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