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5.久しぶりのお外


「クレアちゃん。持ち物確認の時間よ」

「はーい」


 お日様が元気なお昼の時間。

 私はベッドに小物を広げながら、片手をあげてシュリの言葉に応える。


「ハンカチは持った?」

「ん、持った」

「水筒は? 水分補給用と吸血用、どっちもある?」

「ん、ある」

「今日は日差しが強いから、帽子もしっかり被らなきゃダメよ」

「ん、被る」

「よし! 完璧ね!」

「ん、かんぺき」


 シュリが親指をぐっと立てたから、私も同じように親指を立てる。


「それじゃあクロ。あとのことは頼んだわよ」

『……ああ、任された』


 今日はお散歩の日。

 たまには天気が良い時にお外に出て、日向ぼっこをする日。

 最近はみんな忙しくてお散歩できなかったけれど、やっと余裕もできたみたいで、久しぶりにお外に出ることにしたの。


 お散歩を一緒に行くのは当番制。

 前にあった枕当番は、シュリが私のママになってくれた時から無くなった。

 だから一緒にお散歩しに行くフェンリルは当番制にしようって、クロ達が話し合って決めたみたい。


 今日はクロが当番の日。

 久しぶりの一番手は自分だろうって、強制的に決めてきたんだって。


「いい? 絶対にクロの側を離れちゃダメよ。最近は見回りが強化されたとは言え、外はまだまだ危険なんだから。道中はクロが守るから安全だけど、嫌な予感がしたらすぐに報せるのよ。──分かった?」

「ん、気をつけるね」


 確認した小物をポーチに仕舞う。

 これの紐を肩にかけて、お外に行く準備はできた。


「あぁ心配だわ……クレアちゃんがこの視界の中からいなくなるなんて、やっぱり耐えられない!」

『文句を言わずに、お前もたまには仕事しろ』

「むぅ。分かってるわよ、そんなこと……でも、」


 シュリは何か言いたそうに、こっちを見てきた。

 私達はずっと一緒にいる。それはシュリが私のママになってくれたから。ご飯を食べる時もお風呂に入る時も、眠る時だって、シュリは私の側にずっといてくれた。


 きっと、離れたくないって言いたんだと思う。


 でも、シュリにもやることがある。

 だから今は我慢して、私のためだけじゃなくて、みんなのためにも頑張ってほしいな。


「お散歩から帰ってきたら、また……一緒に寝ようね」

「っ! ええ、もちろん! すぐに終わらせちゃうから、クレアちゃんはそれまで、クロと一緒にお散歩を楽しんできなさいな」

「ん、行ってきます」


 最後にシュリを抱きしめて、クロに手招きする。

 ゆっくりと近づいてきたクロの背中に乗った私は、久しぶりのもふもふの感触を味わいながら、そのもふもふの中に沈む。


『では行くぞ、主』


 クロは静かに歩き出した。

 私が落ちないようにって、ゆっくり進んでくれる。


「…………ん、……まぶし、ぃ……」


 久しぶりのお外。

 最後に出たのは……いつだっけ?

 あまり覚えてないけれど、多分、ラットベルン王国での一件が最後だった……かな?


 私は吸血鬼だけど、お日様は好き。

 でも、久しぶりにお日様を見たせいか目が慣れていなくて、目がズキズキって少し痛くなった。


『あまり直視するな。目が悪くなったら大変だ』

「……ん」


 もう痛いけれど、それは言わない。

 言っちゃったらクロが怒ってお日様相手に喧嘩を売りに行っちゃいそうな気がしたから、おとなしく頷いて、シュリからもらった帽子を深く被りなおす。


「レア様……!」


 街の中を移動していたら、フィル先生の声が聞こえた。

 そのあとすぐに、こっちに走ってくる音も──。振り返るとやっぱりフィル先生がいて、すっごく急いで走ってきたのかな。先生は肩で息をしていた。


「レア様、お久しぶりです」

「久しぶり。フィル先生……元気だった?」

「ええ、ここはとても良い場所で、毎日楽しく過ごすことができています。レア様のおかげです」

「……ん、それなら良かった」


 フィル先生は今、侍女になるためのお勉強をしているって聞いた。

 ミランダ達と一緒にお仕事をして、大好きな魔法のお勉強もして……。大変で忙しそうだけど、毎日が楽しいって思ってくれているなら、私も嬉しい。


「それでレア様。珍しく外出ですか?」

「ん、そうなの。久しぶりのお散歩。クロと一緒」

「それはいいですね。たまにはお日様の光を浴びるのも、健康的で素晴らしいことです」


 …………。


「レア様? どうされました?」

「んーん。なんでもない」


 ただすっごく、吸血鬼らしくないなって思っただけ。

 普通、吸血鬼は日差しを浴びたら具合が悪くなったり、動けなくなったり、酷い時には死んじゃったりする。でも、この街にいるミランダ達やフィル先生は大丈夫みたい。


 フィル先生は多分……私が直接吸血鬼にしたから、私の能力を少しだけ受け継いでいるんだと思う。

 他の吸血鬼みたいに絶対吸血が必要ってわけじゃないし、お日様も大丈夫。治癒力も他より高いみたいで、魔法の研究で小屋ごと爆発しちゃってもピンピンしてるって、シュリがそう言いながら苦笑してたのを覚えてる。


 でもミランダ達は、どうして大丈夫なんだろう?

 前に聞いた時は「クレア様のおかげです」って言われたけれど、意味が分からなかった。


 …………んー、考えても分からないや。


「あ、そうだ……フィル先生も、一緒にくる?」

『むっ!?』

「よろしいのですか!?」


 私の提案にクロは慌てて、先生はパァァァって笑顔を咲かせた。


「ん、フィル先生が良ければ、だけど……」

「もちろんです! ちょうど暇していて仕方がなかったところなので、ぜひ! ご一緒させてください!」

「クロも、それでいい……?」

『……………………あ、るじ……が、良いのであれば、我は歓迎する、ぞ……』

「ん、ありがとう」


 よかった。

 クロが嫌だって言ったら、どうしようって困っちゃうところだった。


 やっぱり、お散歩は沢山いたほうがいい。

 そっちのほうが絶対、いっぱい楽しい思いができると思うから。


あの、えっと……めちゃくちゃ更新日忘れていました。

すいませんでしたぁぁぁ!!!(土下座)


はい。というわけで引き続きほのぼの回です。

改めて考えると、クレアの懐き度がすごいですね。もう本当の家族だなぁ…と書いているこっちまで癒されます。

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