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1.帰ってきたら…

お久しぶりです。

本日より更新再開いたします。


更新頻度が変わります。

最低でも週一、毎週日曜の昼更新を予定しています。


後書きにもお知らせがありますので、そちらも確認お願いします。


 チュンチュン、って、小鳥さんの鳴き声が聞こえた。

 それに混ざって変な声も聞こえてくる。呻いているような、何かに怒っているような、そんな女の人の声……。


「ん、ぅ……?」


 一度気になったら、その声が余計に大きく聞こえちゃう。また眠ろうと思ったんだけど、どうしても気になっちゃったから、私はゆっくり……目を開けた。


『主!』


 クロの声だ。

 久しぶりに聞いた、私を呼ぶクロの声。

 ……何でだろう。それを聞いただけなのに、すっごく安心する。


「クロ。えっと、久しぶり……?」

『ああ、久しぶりだな。シュリやフィンレールから話は聞いている。……大変だったようだな。主が無事で、本当に良かった』


 クロがいる。

 ということは、私は──帰ってきたんだ。


 私の街に。みんながいる、魔物の街に。


「クロ。ずっと会いたかった。……わたし……その、寂しかったの……」

『我も同じ気持ちだった。あの時、一緒に行ってやれなくて……すまなかった。何度も悔やんだのだ。もっと主の近くにいれば、もっと早く反応していればと……』


 クロは落ち込んだ様子で話し始めた。

 でも、私はクロを責めるつもりはない。だってクロもみんなも、何も悪くないから。


 それに、もう終わったこと。

 だから「無事で良かったね」って、それでいいんだ。



「──んん!!!! んんんんんんんんんッッッ!!!!!」



 お互いに笑う。

 そうして心地いい空気になっていたところに、すっごくうるさい女の人の呻き声が部屋中に響き渡った。

 …………そうだった。聞き覚えのない女の人の呻き声が聞こえてきたから、目が覚めたんだった。それを忘れてた。


「ん、っと……」


 声の出所を探す。

 ……………………見つけた。


 その人は部屋の端っこにいた。

 全身をロープでぐるぐる巻きにされていて、口には布を押し当てられていて、身動きも言葉も封じられている……おかしな格好の人。


「クロ、あれ……誰?」

『…………覚えていないのか?』

「ん」


 頷く。するとクロは困ったように小さく鳴いた。


『主は一度、この悪魔に会ったことがあるはずだ。シュリの話によれば、ラットベルンで──』

「クレアちゃん! 目が覚めたのね!?」

「レア様! お目覚めになられたのですね!」


 バタバタって外からうるさい足音が聞こえたと思ったら、お部屋の扉が勢いよく開かれた。

 入ってきたのはシュリとフィル先生。

 二人とも、私が起きて慌てて様子を見に来てくれたみたい。


「ん、シュリ、フィル先生……おはよ──うぎゅ」


「おはよう」って言い切る前に、シュリが文字通り飛んだ。

 そのまま抱きついてきて、私は少し……息が苦しくなる。


「あぁ、クレアちゃん……! ずっと寝ていたから心配だったのよ。きっと、すごく疲れていたのね。……どう? 体に違和感はない? まだ疲れてるなら、私と一緒に眠りましょうか」

「ちょっとお義母様! 独り占めはズルイです! 私にもレア様の温もりを……!」


 さっきまで静かだった部屋の中が、急に騒がしくなった。


『お前達……今、大事な話をしているところなのだ。騒がしくするつもりなら、ここから出て行け』


 クロはちょっとだけ怒気を含んだ声で、二人にそう言った。

 注意されて冷静になったのかな。それまでワーキャーって話していた二人は会話をやめた。


 でも、私に触るのはやめたくないみたい。


 私を奪っては奪われて、無言の圧力で牽制しあって……最終的に左右から抱きつく形で、二人は渋々納得したみたい。


『邪魔が入ったな。……あー、どこまで話したのだったか…………』

「んーーーーーーッッッ!!!!!!!」

『ああ、そうだ。そこの簀巻き悪魔について、だったな』


 そこで全員の視線が部屋の端っこ、簀巻きにされている女の子に向けられる。


「クレアちゃん、あの悪魔は私達をここまで運んでくれたのよ」

「ん」

「ラットベルンを出てすぐに眠ってしまいましたからね。覚えていないのも無理はありません」


 ラットベルン……?

 そこから運んでくれたの?


 ………………………………ん〜〜〜〜。


『どうやら、思い出せないようだな』

「ん、覚えてない」


 でもシュリとフィル先生が同じことを言っているから、多分、そうなんだと思う。

 私は覚えてないけれど、そっか……この人が私達を運んでくれたんだ。どうやって運んだのかは気になるけれど、もっと気になることが一つ。


「どうして、その人はぐるぐる巻きなの?」

『「「……………………」」』


 急にみんな黙っちゃった。

 聞いたらダメなことだったのかな?


『あれは、その……主の寝顔に落書きしようと企んでいたのだ。間一髪、それは未遂で終わったのだが、またやらないとも限らないため、主が目覚めるまで縛り付けることにしたのだ』

「それで、どのくらい経ったの……?」

『大体、10日くらいか?』

「…………そんなに?」

『悪魔には食事が必要ないからな。飢えて死ぬことはないので、そこは問題ない』


 10日も放置するのは、ちょっとだけ可哀想……。

 うーん、でも悪戯しようとしていたみたいだから、お仕置きって考えれば普通……なのかな?


「解放、してあげて」

『いいのか? あれは主に悪戯しようとした悪魔なのだぞ?』

「でも、このままじゃお話できない、から……」

『わかった。主がそう言うのならば、我々も許してやろう』



 クロは前脚を振り下ろした。

 すると、悪魔をぐるぐる巻きにしていたロープが細切れになった。

 縛るものがなくなった悪魔はゆっくり立ち上がって、少し体を動かした後に大きく息を吸い込んで、一言。


「自由だーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」


本作『ある日、惰眠を貪っていたら一族から追放されて森に捨てられました』が書籍化しました!


全国の書店にて発売中なので、ぜひお買い求めを……!


細かな改稿やオリジナルストーリーの加筆など、より面白い仕上がりになっています。

何卒、よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[一言]  書籍発売おめでとうございます。  他の方は書籍化! って発表してから、発売まで半年とかかかったりするところもあると考えると、存外早い。  相当スムーズに行けたようで何よりです。 >悪魔…
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