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27.夜のお散歩(2回目)


 結果から言うと、みんなが提案してくれた魔弾の改良案は全部できた。


 フィル先生は魔弾の同時発動を。

 ミカとユウナは魔弾の自動追尾を。


 魔弾を撃つ時、脳内で想像したら簡単にできた。

 ついでに同時発動しながら、魔弾の追尾性能も追加することもできた。


 その代わりに消費する魔力はちょっと増えたけれど、私からすればそんなの誤差だ。


「レア様はとことん、規格外なのですね」


 呆気なく全部のことを試しちゃった私に、フィル先生はそう言った。

 特別なことをやったつもりはないんだけど、フィル先生もミカもユウナもびっくりした顔をしていたから、多分私がおかしいんだと思う。


 今回の実験で私の魔弾はまだまだ改良できることが分かった。

 最初は魔力を撃つだけで魔法っぽくなかったけれど、これから改良次第で魔法っぽくなれるんだと思ったら、ちょっとだけ頑張ってみようって思えた。


 でも、いつもより魔力をいっぱい使ったから、疲れちゃった。


 実験は一時間だけで終わり。

 他に試したいことはまたの機会にってことで解散して、私はお部屋に戻ってすぐに眠った。




「…………んにゃ……」


 そして目が覚める。

 お外は真っ暗だから、また夜遅くに起きちゃったみたい。


 …………どうしようかな。

 ぐっすり眠れたおかげでまだ眠くないし、どうせみんな眠っちゃっただろうから話し相手もいない。


 こういう時、ここが私の街だったらシュリが話し相手になってくれたんだけど……居ないから暇潰しにもならない。話し相手になって、って誰かを起こすのは申し訳ないし、それなら────


「ん……お外、行こ……」


 車椅子に乗って、お部屋を出る。

 次はどこに行こう。また誰かに会えるとは限らないから、あまり遠いところには行かないようにしなきゃ。途中で眠くなったら大変だもんね。


「…………?」


 誰もいない廊下を移動する。

 そうやって広い場所まで辿り着いた時、建物の外で誰かが動いている気配を感じた。


 光も何も付いていない時間。

 こんな夜に何をやっているんだろうって、ちょっと気になった。


 その人は隠れながら移動しているみたい。

 耳が発達している吸血鬼の私でも聞き取れない小さな音で、コソコソと動いてる。魔力の動きを辿らなかったら、その気配に気づけなかったかもしれない。それほどに上手く隠れていた。


 …………もしかして、変質者?


 夜は変な人が出やすいから、女の子が外を出歩く時は気をつける必要があるんだって、ミカとユウナが言ってたっけ。

 あと、いつか私がそれに出くわしちゃった時は、大声を出して近くの人に助けを求めなさいとも言ってた。


 でも、まだ変質者だって決まった訳じゃない。

 確かめずに助けを呼んだ時、勘違いだったら申し訳なくなるから、本当に変質者なのか確認しないと。


 …………もし本当に変質者だったらどうしよう。


 大声を出して助けを呼んでも、みんな眠ってる。

 そもそも、私の声が届くのかも怪しい。


 だから、うん……その時は頑張って逃げよう。


「………………ちらっ……」


 変質者の位置がギリギリ見える場所まで移動して、覗き見する。


「…………むぅ」


 そこに居たのは二人。

 フードを被っているから顔は見えないけれど、キョロキョロしながら周りを警戒しているから、ちょっと挙動不審に見える。


「──────」

「──────」


 その人達はボソボソと小さく話しているから、遠くからじゃ何を言ってるのか分からない。

 見た目だけで人を判断しちゃダメだってパパから教えてもらったから、その人達の会話を聞いて変質者かどうかを判断しようと思ったのに…………残念。


 うーん、どうしよう。

 なんか怪しい気がするけど、これ以上近づいたら面倒なことになりそうだ。


 それに、動いたおかげでちょっと眠くなってきた。

 もうお部屋に戻ってベッドでぬくぬくしたいから、見つかる前に行こうかな。


「…………レア様?」


 と、右回りで戻ろうとした時、後方から私の名前が呼ばれた。

 そこには懐かしい人がいた。たしか名前は、えぇと……。


「……ロマンスさん?」

「ロマンコフです」


 違った。


「レア様、こんな夜中にどうされました?」

「えっと、目が覚めちゃって……眠くなるまでお散歩してたの。ロマンコフさんは?」

「私もそんなところです。歳を取ると中々寝付けず、気晴らしに歩き回ろうかなと。……しかし、夜はまだ肌寒い。近いうちにパーティーも控えていることですし、勇者様に風邪を引かれては困ります。そろそろお部屋に戻ったほうがよろしいかと」


 ロマンコフさんはフードを着込んで、暖かそうな格好をしている。

 ……そういえば、寝る時の格好のままだったな。道理でちょっと肌寒かったんだ。


「ん、そうする。おやすみなさい」

「ええ、おやすみなさい。……いい夢を」






          ◆◇◆






「…………来たか」

「ちょっと遅いんじゃないの?」


 そこに着くなり、文句を言われる。


「すまない。こっちは見張りが多くてな。撒くのに苦労したのだ」

「…………見つかってないでしょうね」

「私を誰だと思っている。抜かりはない」


 途中、面倒な奴と出会ってしまったが……あの間抜けが気付くはずがないだろうし、問題はないだろう。


「そう。ならさっさと情報共有しちゃいましょ。早く戻りたいの。夜は寒くて仕方ないわ」

「こいつと意見が合うのは癪だが、こっちは明日も早いんだ。手短に頼む」

「分かったから急かすな。私だってわざわざ夜に出歩きたくないんだ」


 だが、これを知られるのはマズい。

 そのために細心の注意を払い。ここまでやってきたのだ。


「計画までもう少しだ。役目を怠るなよ」

「ハッ! 誰にものを言ってるの?」

「無論だ。ここで失敗すれば全てが水の泡だからな」


 長かった。

 ずっと我々は、この時を待ち望んでいた。


 もうすぐだ。

 もうすぐで歴史は正しい方向へと修正される。


 そのために最後まで我々は戦おう。


 全ては──来たる革命のために。


覗き見をする時のクレアですが、

「………………ちらっ……」

 ↑これは「………………(ちらっ)」の間違いではありません。


つまり、集中しすぎてつい口に出しちゃっているわけですね。

なんだそれ可愛いかよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >今回の実験で私の魔弾はまだまだ改良できることが分かった。 >最初は魔力を撃つだけで魔法っぽくなかったけれど 撃ち出すことばかり考えてますな。 撃ち出さず、第三の手みたいに使うことも考え…
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