24.パーティーがあるみたい
お勉強が終わって、お昼。
私達はまた、私のお部屋に集まってお話しをしていた。
でも、今日はいつもと違う。
集まったのは召喚された私達だけじゃなくて、フィル先生も一緒。最初は遠慮していた先生だけど、どうせこの後も暇ならって私達が強引に誘ったの。
「……パーティー?」
「ええ。近々、王国の貴族を集めたパーティーが行われる予定です」
沢山の人が集まって、お話しする。
それがパーティーだっけ?
「行かなきゃ、だめ?」
気乗りはしない。
騒がしい場所は好きじゃないし、知らない人とお話しするのは得意じゃないから。
……それに、相手は人間の貴族。
嫌な記憶を思い出す。
貴族は自分の利益以外のことを考えない。すごく身勝手で傲慢で、権力で色々なことを捻じ曲げる。それのせいでゴールドさん達は苦しんだ。クロも酷い目にあった。
正直に言っちゃえば……貴族は嫌いだ。
良い人なら大丈夫。
実際フィル先生はすごく優しいし、大好き。
でも、私の知らない貴族は……あまり会いたくない。
「どうしても嫌なら仮病を使っても構いませんが……そこで正式に勇者をお披露目したいとのことなので、なるべく参加してほしく思います」
え、って声が聞こえた。
その方向を見ると、ミカは驚いた顔で先生のことを凝視している。
「ミカ。どうしたの?」
「え? あ、いや……王族なのに、そんなこと言っちゃっていいのかなって……」
「構いません。どうせ誰も聞いてませんから」
私達が聞いちゃったけれど、それはいいのかな。
……まぁ、いいか。
「でも、そうか……パーティーがあるのか。……緊張しちゃうな」
「私、そういう場所でのマナーとか知らないけど大丈夫かな。今から習ったほうがいい?」
「流石に文句は言われないと思うけど、心配だよね」
三人は今から緊張しているみたい。
私はそういうものがない。緊張よりも面倒くさいって思いのほうが強いから、なのかな?
「顔合わせと多少話す程度なので、マナーは心配ありませんよ。当日は私も補助しますから、呼び出していただければすぐに駆けつけます」
「わぁ、フィンレール様って優しいんですねぇ……噂に聞いていた人と全然違うや」
「っミカ……!」
「あ! ご、ごめんなさい!」
フィル先生の噂? 噂って、なんだろう?
「気にしていません。……もう慣れたので」
そう言いながら、フィル先生は一瞬だけ顔を暗くさせた。
……聞かれたくない話題だったのかな。だったら、触れないほうがいいよね
誰だって人に噂されるのは嫌だと思うし、それが悪い噂なら尚更。
「フィル先生が何て言われていても、私は先生が好きだよ?」
「……レア様。ありがとうございます。私もレア様と出会えて……本当に嬉しいですよ」
フィル先生の手が伸びて、私の頭を撫でる。
とても温かい手。シュリに撫でてもらえると気持ち良くて好きだけど、こっちも好き。
「…………やはり、私はこの方が……」
「……?」
「ふふ、なんでもありません」
濁された気がする。
でも、もう先生は悲しそうな顔をしていないから、きっと悪いことじゃないんだと思う。
「…………あれ、私もやりたい」
「…………だめだよ。今は順番だもん」
「こういう時、俺はどうしたらいいんだろう」
その後、私はなぜかミカとユウナから「撫でさせて」とお願いされた。
ずっと三人に撫でられ続けたせいで、ちょっとだけ頭皮が心配になったのは……内緒。