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18.本当の姿


「あのですね? 魔法というものは本来、詠唱が必要なのです」


 そういうフィル先生は、私の前で実演してくれた。

 なんか色々難しい言葉を並べていて、途中から聞き取るのが面倒になったけど、先生は拳一つくらいの火の玉を作り出してお人形に打ち出した。


 当たった時にちょっとした爆発が起きて、お人形は少しだけ揺れる。

 でも、私のやつみたいに木っ端微塵に砕けることはなかった。ちょっと焦げが付いただけ。


「これが初級魔法。すでに属性は分かると思いますが、火属性ですね。これは初級魔法の中でも威力は高い方です」


 なんか、思ってたより使いづらそう。

 あの程度の威力なのに難しい言葉をいっぱい使うし、その間は集中しなきゃいけないみたいで隙だらけだし。


 正直な感想を言うと、フィル先生は肯定するように頷いた。


「魔法使いは一人で戦うものではありません。前線で戦う仲間を支援しつつ、守ってもらいながら安全圏より高火力を叩き込む。それが基本の立ち回りとなります」

「上級になると、どのくらい強いの?」

「初級が無し。中級が一人。上級が三人から十人。これは一度の魔法で人を殺せる範囲を基準に考えられています」


 一度に何人殺せるか。

 それを基準にするのは意外だったけれど、そういう考え方って分かりやすいのかな。


「なので、レア様が先程放ったものは、威力だけを見るならば中級魔法なのですが、無詠唱という特別な事例を考慮して上級魔法だと判断しました」


 特別な事例って、無詠唱ってそんなにおかしなことなのかな?


「絶対に、詠唱しなきゃダメなの?」

「一応、詠唱が必要ない魔法も、あるにはあります。……ですが、少量の水を出すとか、そよ風程度のものを生み出すとか。どれも初級にすら満たない簡単なものばかりです」

「詠唱しなくても魔法は使えるけど、初級にすらなれない……ってこと?」

「そのような解釈で問題ありません」


 じゃあ結局、詠唱しなきゃ強い魔法は使えないんだ。

 でも、私にできるのかな。


 自慢じゃないけど、私はすっごい面倒くさがりだ。

 誰かの名前を覚えるのも難しいのに、そんな私が、色んな言葉の羅列を覚えられるとは思えない。初級魔法があれなんだから、中級や上級になったらもっともっと、難しいんだろうな。


 …………ちょっとだけ、自信なくなってきたかも。


「そんな落ち込まないでください。むしろ、レア様には好都合かもしれません」

「……え?」

「先程のは無詠唱で中級を凌ぐ威力でした。しかも、まだまだ余力がある様子。これを練習していけば、無詠唱でも上級魔法に近い威力のものを撃ち出せるようになるかもしれません。更には威力の他にも、軌道修正や反射といった様々な効果を付与することも────」


 急に、先生がよく話すようになった。

 いつもの大人しくて物静かな口調からは考えられない、ちょっと興奮したような早口。


 先生、もしかして…………


「魔法、好きなの?」

「っ! ……、……申し訳ありません。みっともない姿をお見せしました」

「ううん。先生、すっごい目がキラキラしてた。すごく好きなんだって分かったから、そういう先生も好きだよ?」


 好きな気持ちを隠す必要はないんだ。

 だから、魔法が好きなら、そんな素の先生も見てみたい。


「…………本当ですか?」

「うん」

「……引きませんか?」

「うん」


 魔法が大好きな先生なら、私の魔法のことも本気で考えてくれると思うし、あの状態の先生なら魔法のことをもっと詳しく教えてくれそう。


 だから、嫌になんてならない。


「それでは、お言葉に甘えてもよろしいですか? ……その、幼少期から魔法には憧れがあって、やっと独学で学べるようになって本当に嬉しくて、気がついたら随分とのめり込んでしまって…………魔法のことになると、どうしても我を忘れてしまうのです」


 恥ずかしそうにそう言う先生は、可愛かった。

 今までは大人っぽい女性だなって思っていたけれど、こういう一面を見ると、先生も女の子なんだなって分かる。


「コホンッ。それではレア様のお許しも得たことですし、早速、先程の魔法を詳しく調べてみましょう。──そうだ。名前もまだですよね? 詠唱せずとも名前くらいは決めたいですよね。どうせならカッコいいのが好ましいですが…………魔力の弾丸……『魔弾』は如何でしょう。短くて簡単だと思うので、レア様でもすぐに覚えられるでしょう。

 ああ、とても気分が良いですね。私達で新たな魔法を研究できるなんて、こんなに興奮したのはいつぶりでしょうか。──さぁ、レア様。もっと先程の魔弾を私に見せてください。私が全力で、レア様の魔弾を改ぞ────研究してみせます。遠慮しないでください。きっとお役に立てるはずですから」


 前言撤回。

 もう少しだけ、お手柔らかにお願いしたい。


 延々と続く先生の早口を聞き流しながら、私は内心、そう思っていた。


先生を(色々な意味で)魔法特化キャラにしました。

新しい魔法とか見ちゃうと「はぁはぁ」言うタイプ人です。


カイちゃん(結界)と出会ったら面白いことになりそうですね。

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― 新着の感想 ―
[一言] あー。 本当の姿って言うから、血の棺桶とかを呼び出して、吸血鬼だって正体を明かす回かとおもってましたわ。 いやぁ、騙された騙された(なんか楽しそう)
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