16.先生の先生
一人で頑張ってみようって、やり始めた魔法のお勉強。
それは思っていた以上に、難しかった。
魔力を操ることは出来る。
でも、肝心の魔法が使えない。
色々と試行錯誤して頑張った結果、魔力を固めて撃ち出すことはできたけれど……なんか違う。私が思ってた魔法じゃない。
もっと派手で、どかーんってなるやつがいい。
なのに、どうしても地味になっちゃう。
「進歩は、どうですか?」
「……先生」
一人で頑張っている私を心配してくれたのかな。
明るい声を出しながら近寄って来たフィル先生だけど、その表情は少し暗い。
「…………だめ。一人じゃ、難しい」
私は正直に答える。
ここで誤魔化しても、どうせすぐにバレるから。
「……ごめんなさい」
「ん? どうして先生が謝るの?」
「魔法師団長の、マグノリアのことです。……レア様は、以前に亜人の扱いについて話したことを覚えていますか?」
亜人のこと?
「……あ、肯定派と否定派のこと?」
「そうです。マグノリアはその中でも否定派。亜人を毛嫌いする派閥に属しています」
言われて納得した。
私に対するあの人の態度は、普通じゃなかった。
お風呂場で話した第二王女と同じで、すごく嫌われているって分かったから。
「彼女が否定派だと知っていたのですが、流石に公私混同はしないだろうと甘く見ていました。……第一王女として、事前に注意しておくべきでした。だから、ごめんなさい」
そう言って、先生は頭を下げた。
先生は、あの人が否定派だと知っていた。
でも流石に、王様の命令を無視しないと思っていたけれど、あの人は王命すら無視してあからさまに私のことを差別した。
それを謝っている、んだよね……?
「どうして先生が謝るの?」
「それ、は……」
「先生は何も悪くないよ?」
悪いのはあの人。
なのに、どうしてあの人が謝らないで、先生が謝らないといけないんだろう?
王族だから?
それって、謝る理由になるのかな。
でも、責任感の強い先生のことだ。
私が大丈夫って言っても、先生は申し訳ないって思い続けるんだろうな。
…………それなら、
「それなら、魔法教えて」
「え? …………えっと、魔法ですか?」
「ん。あのね、私は馬鹿だから、一人じゃ難しいの」
頑張って考えて、やっと出来たのは固めた魔力を撃ち出すことだけ。
もっと派手な魔法が使いたい。
でも、私だけじゃダメなんだって分かった。
「私が教えて、よろしいのですか?」
「ん、先生がいい」
先生はいつも優しく教えてくれる。
だから、先生が魔法の先生になってくれたら嬉しいな。
「あ、でも……忙しい、よね……」
よく考えたら、先生は第一王女だった。
王女様は色々忙しいだろうし、私なんかのために時間を潰している暇はないよね。
やっぱり、私だけで頑張るしかないのかなぁ……。
「っ、いいえ! 私で良ければ、ぜひ! レア様のお力になりたいです!」
「…………おぉぅ」
手を握られた。
力一杯、ぶんぶんされた。
…………すごい気合いだぁ。
「それじゃ……うん。よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いいたします」
こうして先生は、魔法でも私の先生になった。