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児童虐待は人生に大きな影を落とす ⑥

「あの時、私負けたなって思ったのよ。この人、本当に人間ができているんだって」

「いや、それほどでも」

「あの頃、私は馬鹿だった」

「えっ! 」

「一緒に生活して分かったわ。あなたは人間ができているのじゃなくて、ただ気が長いだけの鈍い男にすぎなかったって」

「そんなことはないよ」

「できた人間が後先考えずに、どうして同棲なんて簡単にオーケーするのよ」

「あっ! 」

「一緒に暮らしてほしいって行ったら、躊躇することなく、次の日に家財道具一式担いで、ニコニコしながら飛んできたじゃない」

「あはは…」

「父親にあなたのこと話したの」

「え! どうしよう。ああ! 君のお父さんに怒られる!」

「心配いらないわ。同棲している男が『大学時代は仏教研究会の学生だった』て言ったら、『災い転じて福となる。やっと娘がキリスト教から仏教に戻ってくれそうだ』て涙を流して喜んでいたわ」

「ほんと? いいお父さんじゃないか」

「このぶんじゃ、あなたが卒業して、葬儀屋でバイトしてるって言ったら『それはうちにも都合がいい。絶対に結婚しろ』と言うのじゃないかしら」

「宏美、幸せにするよ」

 恭平は宏美に近づいて肩を抱こうとするが、

「ちょっと、触らないでよ」

 と、宏美は、また逃げて恭平に背を向けた。

「えっ、結婚しないのかい」

「当たり前でしょう。私はあなたと結婚する気はないもの」

「どうして? 僕と結婚することが嫌なのかい? 」

「あなたはとてもいい人だと思うけど、でも私は、まだまだ今の仕事を続けたいの。やっぱし結婚っていうと束縛されるでしょう。私、嫌いなの、そういうのって。だから…」

 恭平に背を見せながら話す宏美に恭平は言った。

「宏美、前々から言おうと思っていたんだけど、こういう真剣な話をしている時ぐらい、僕の方を見てほしいな」

「そう…」


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