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児童虐待は人生に大きな影を落とす ④

「親を困らせるために不良にでもなったのかい」

「英会話の教室があった教会でキリスト教に改宗したのよ」

「おお! …それは、おとうさんには痛手だね」

「でしょう。お寺の娘がキリスト教なんて恥ずかしくて法事にいけないと悩んでいたわ。だから、私は追い打ちをかけるように」

「かけるように」

「ミッション系の高校、大学へと進んだのよ」

「ひどいことをする」

「そして、もっと自堕落になって父親を困らせようと、同棲する男を大学内で捜したわ」

「そんなことしちゃダメだ! もっと自分を大事にしなけ…」

「あなたのことよ! 」

「あ! いい考えだね、うんうん」

「でも、失敗だったわ」

「どうしてさ!」

「なんで、ミッション系の大学に、あなたみたいな仏教研究会の学生がいたのよ」

「いや、これは一本とられたな」

「もう、どうしてあなたみたいな人を好きになったのかしら」

「フフ、それは運命の赤い糸に結ばれていたんだよ」

 恭平は宏美の肩に手をやろうとしたが、宏美はそれをするりとかいくぐり、部屋の窓に近づくと、遠くの景色を眺めながらつぶやいた。

「今だから言うけど、あの、初めてのデート、あれは本気じゃなかったの」

「本気じゃなかった?」

「本当は、あなたをからかうつもりだったの…」

「からかう…て」

「私たちテニス同好会のみんなは、あなた達、仏教研究会の学生たちが嫌いだったの」

「どうして、クラブハウスではお隣同士なのに」

「だから嫌だったのよ。私たちが『この夏の合宿は清里高原いこう、夜はみんなで花火大会だ! 』て盛り上がっているのに、横で『南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経』とお題目を大声で唱えるんだもん。興ざめもいいとこだわ」

「何を言っているんだよ、功徳があっていいじゃないか」

「よくないわよ。だからテニス同好会のみんなで、仏教研究会の部長のあなたをからかおうと、デートの約束をして待ちぼうけをくわせるイタズラを考えたのよ」

「イタズラか…知らなかった」

「6時の待ち合わせすっぽかして、テニスのみんなで飲みに行ったのよ。『ざまあみろ! 』てあなたの悪口を言いながらね。でも二次会も終わって、家に帰ろうと駅に行ったら、あなたが、まだ待っていたのには驚いたわ。本当にあなたは6時からずっと12時まで、駅前で立って待ってたの」

「うん」

「どうして? 」

「どうしてって、君と約束したからさ…」


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