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児童虐待は人生に大きな影を落とす ③

「熱帯夜の夜、布団の上で、少し膨らみかけた胸を持て余しながら寝ていると、音もなくスウッと襖を開けて、父親が忍び込んできた。私が、はっと気がついて起きあがると、父親の力強い手が私を布団に押さえつけて」

「えっ、押さえつけて!」

「父親が私の体に馬乗りになって…」

「ゴクン…馬乗りになって…」

「バリカンもって私を頭を丸坊主にしようとしたのよ、信じられる」 

「なんだ、バリカンかよ」

「私がいくら女だからできないって言っても、『なにを言うんだ宏美。女を差別してはいけない、男女雇用均等法もある。男にできて女にできないはずがない』とか言って…」

「で、丸坊主にされたの」

「ううん。私の頭に父親がバリカンを当てたとき、隣の部屋で寝ていたおばあちゃんが止めに入って」

「それで助かったの。いいおばあちゃんだね」

「ううん。ちがうの」

「ちがうって?」

「おばちゃん、父親の手を押さえつけるつもりが、バリカンを私の頭に押さえつけたのよ! 」

「えっ!」

「バリカンの刃が私の頭に突き刺さって、頭からプシューっと血が吹き出したの」

「うわ! 」

「それを見て心臓の弱かったおばあちゃんは、ポックリ逝っちゃった」

「死んじゃったの!」

「もう家のなか大変! 救急車は来るわ、霊柩車は来るわって大騒ぎ」

「で、どうなったの」

「『おまえの頭は縁起が悪い。坊主にはむいていない』て父親の奴、二度と私の頭に触ろうとはしなかった。おかげで、私は丸坊主にしなくてすんだんだけど…」

「だけど?」

「それ以来、私は一度も大好きな父親に頭をなでてもらえなかった…」

「え、それが問題なの? 」

「あなたに分かる、大好きな父親に頭をナデナデしてもらえない娘が、どんなに寂しい思いをしたか」

「さあ、そんなこと突然言われても、ナデナデしてもらえない娘のことなんて考えたことないから…」

「だから中学生になったとき、父親を困らしてやろうと誓ったのよ…」


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