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第21話 刺客追い払いTai!

う〜ん、年齢がバレそうなサブタイトルですね(笑)。


「ねこたぬ」もいよいよクライマックス近しです!


 「スイヨー、出てきたぞ!」


 西陽の眩しさを避け、夕暮れ時に合わせた様に、ねこキューブ型の無駄に可愛いロケットから3人の人影が確認出来る。


 1人は完全宇宙服姿でたどたどしい歩き方だが、残りの2人はヘルメットを外して軽快に動き回っている。

 重力訓練を受けたと思われるその2人は片方がライフル、もう片方が大きなリュックを持っており、それぞれ射撃と爆破を担当していると思わせる雰囲気を漂わせていた。


 「奴等が証拠隠滅を狙うハンターか。顔が見えねえが、ヘルメットを被った奴が本社の人間か?」


 スイヨーの問いに大和は身を乗り出し、そのオロオロした動作と上背から彼がギゼーン副社長だと見抜く。


 「ドーデッシュ社長じゃないな。多分ギゼーン副社長だよ。あの人は命令役で、恐らく戦力にはならない。2対2みたいなもんだ。イケるな!」


 「お前はすぐ調子に乗るな……あそこを見てみろよ。小屋に向かう人影を見て、熊もスタンバってるぜ」


 スイヨーは事を急ぐ大和の腕を掴んで彼をたしなめ、ハンターだけではなく人間の匂いを嗅ぎ付けた熊の動向にも注意を向けさせた。

 

 あの熊は最近、小屋の周りをうろつく事が多い。

 つまりそれは人間を襲いたいのではなく、何度か吸引してしまったコカインを無意識に欲しているとスイヨーは判断していたのである。


 「俺達はギリギリまで奴等の動きを探る。ママードと一緒にコカインを小屋にひとつ残した理由も、俺達が強引に攻め込むよりは熊が小屋に現れた方が奴等を混乱させられるからだ」


 作戦を理解した大和は、ホワーンから預かった遠隔操作の鍵をかけ、外から出入り口を開けられない様に細工した上で、集音機付き双眼鏡をスイヨーに手渡す。


 「副社長!表入り口には鍵がかかっています!アタシのテクニックじゃあ無理でさぁ!」


 爆破と恫喝担当の小柄なバーコードヘア男、ムーニー・スズキはピッキングの名手でもあるのだが、流石はドーデッシュ社長が使う予定だった山小屋、セキュリティは万全だ。


 「……こっちの裏口は鍵に銃弾跡がある。調査隊が強引に開けたのか……入るならこっちだな」


 若く屈強な体格のブロンドヘア、キンリー・ニッチギンは射撃と融資貸し剥がし担当。

 大和達にとって、一番厄介なのは彼だろう。


 「……奴等気付いたな。じきにライフルで強行突破される。奴等が中に入ったら、熊に気を付けながら間合いを詰めるぞ」


 「オッケー!」


 大和はスイヨーと作戦を確認し、小さな音での遠隔攻撃が必要な時に備えてリュックからサッカーボールを取り出した。


 岩と草むらに隠れて姿を隠せているが、小屋との距離は僅か20メートル。

 元プロサッカー選手の大和が狙いを外す距離ではない。


 「……中から鍵がかけられているな。離れていろ」


 ドオオオォン……


 ニッチギンはためらう事無くライフルを裏口ドアノブ付近に撃ち込み、その銃声に驚いたギゼーン副社長が慌てて彼に詰め寄った。


 「ニッチギン君!ノックぐらいしたまえ!中に居るのがスイヨーならともかく、大和君だった時の私の身にもなってみなさい!」


 動揺するギゼーン副社長を横目に、ニッチギンは小屋の向こう側を指差し、ライフルの安全装置をかけ直して呟く。


 「俺達の姿は、ロケットからここまで筒抜けだ。外から攻撃が無ければ、中に罠を仕掛けて留守にしているんだよ」


 ニッチギンは小屋の入り口を蹴破り、夕暮れ空で赤く染まる小屋に白いライトを照らしてトラップを確認した。

 小屋に人の姿は無い。


 「……武器は無いな。調査隊が運び出したのか。……おっ!あれが社長の言っていた金庫だな!」


 ニッチギンのライトを頼りに小屋を調べ上げたギゼーン副社長は、ドーデッシュ社長から最優先で回収する様に要請されたコカインを取り出す為、金庫の扉に触れた。


 「……おや?妙だな、鍵が開いている。それに、コカインが1袋しかない。社長の話では4袋、2㎏と聞いていたのだが……?」


 訝しげに首を傾げるギゼーン副社長に割り込んだスズキが、ここぞとばかりにダジャレを捩じ込む。


 「スイヨーが吸いよーった、ヒッヒッ!」


 危険なレベルの親父ギャグが湖畔を急激に冷やし、活動しやすい気温になった熊はニッチギンの背後に忍び寄っていた。


 「仕方ない、コカインを1袋だけ回収して小屋は爆破する。スズキ君、爆薬を仕掛けてくれたまえ。私は先にロケットに……うわああぁ!」


 コカインを持って裏口から出てきたギゼーン副社長を待ち受けていたのは、スズキのダジャレのお陰で筋肉が引き締まり、身体のキレが良くなっていた熊である。


 全く気配を感じずに不覚を取ったニッチギンは急いで振り返り、ライフルの引き金を引こうとするも、安全装置を解除していなかった。


 「ガアアァッ!」


 熊は鋭い爪でニッチギンの頬を引き裂き、負傷した彼はライフルを落として地面に倒れ込む。


 「ひいいっ!」


 ギゼーン副社長は熊の攻撃をかわすときにヘルメットを落としてしまい、素顔を晒したままコカインを持ってロケットへと逃亡した。


 「……大和!今の録ったか?」


 「ああ!バッチリ!コカイン所持の現行犯!」


 大和は教会の撮影用カメラでギゼーン副社長の確固たる証拠を録画し、サッカーボールをセットして助走を取る。


 「おらああぁっ!」


 大和渾身のキックは時速100㎞超の弾丸フリーキックとなり、スズキに襲いかからんとしていた熊の側頭部を直撃した。


 「……フガアアァ……」


 無防備な側頭部に衝撃を受けた熊は一瞬よろめき、その隙を突いてスイヨーが麻酔銃を2発熊へと撃ち込む。


 「……とどめだあぁっ!」


 ヘルメットを被った大和は熊に全速力で接近してジャンプし、熊の身長を超える打点の高さから伝家の宝刀、ヘディングを叩きつけた。


 「みぎゃあ〜」


 何故か気を失う時だけ可愛い声を出した熊は大地に沈黙し、かつて「ヘディングの鬼」、「あの(おとこ)」と呼ばれた大和はやり遂げた男の顔で夕陽を全身に浴びる。


 「さあ、大人しくしな!」


 スイヨーは恐怖の余り腰が抜けたスズキと、怪我の痛みで逃げ出す体力が残っていないニッチギンの両手を縛り上げ、大和と協力してライフルと爆薬を盗み、彼等を教会へと連れて行くのであった。


 「……くそう……許さんぞ!私の意地とプライドにかけて、彼等を懲らしめてみせる……!」


 パイロットのマルハンが呆れ顔の中、おめおめとロケットに逃げ帰ったギゼーン副社長は悔しさを露にし、本来ニッチギンにしか使いこなせないとされていた、非常戦闘用のパワードスーツに目を向ける。


 「……私だって、コンパニマル社の時期社長なんだ。自分のピンチは、自分で切り抜けて見せる……!」


 

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