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とある冒険者たちのありふれた日常  作者: 案山子
第一章 登録番号・FL22667-D2 ガナット・レティー 21才 9年目 男 ヒューマン
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ガナット・レティー 14

 武具を体の一部として強化する技術は、肉体と武具の境目を無くすという意味を込め『無境強化むきょうきょうか』と呼ばれている。

 無境強化は特別難しい技術じゃないが、鍛錬の度合いにより得られる効果は大きく変わってくる。


 達人クラスになれば小枝で大型の魔物を仕留められるほどになるが、未熟なうちは武具の性能をほんの少し底上げするのが関の山だ。


 はっきり言って、実戦ではなんの役にも立たないだろう。


 鍛錬を積み、実戦に耐えうる精度にまで技術を磨いても、今度は闘気の消費に差がでてくる。

 魔導武具の性能によってその差は変わるが、無境強化で魔導武具と同じ効果を得ようとする場合、消費する闘気の量は数倍から数十倍になってしまう。


 魔導武具の使用は攻撃性能や防御性能の向上だけじゃなく、消費する闘気の量を抑えるというメリットも大きいのだ。


 人が持つ闘気や魔力といった魔素は使えば当然減っていき、減った分は一定時間で回復する。

 ただ魔素の総保有量や回復量には個人差があり、俺たちが採掘中ずっと無境強化を使い続ければ、回復が間に合わずすぐに魔素が枯渇してしまうだろう。


 魔素を使い切った状態では疲労やケガの回復が遅くなるし、なによりそんなヘロヘロな状態で魔物と会敵すれば非常に危険だ。


「いまより効率よく闘気を使えれば、なんとかなるとは思うけどな」

「効率、ローテーションを調整しますか?」

「いや、もっと根本的に変えないと駄目だろ」


 俺の答えに、ナチとバドが悩まし気な顔をする。それはそうだ、俺自身ナチのいう具体案はまるで浮かんでいなかった。


「ってかさ、わたしは攻撃系苦手じゃないけど、そもそも瞬発型だよ?」

「そこだよな、俺も完全に瞬発型だからな」


 魔素の使用には大きく分けて瞬発型と持続型があり、さらに闘法には攻撃系統や防御系統など様々な技術がある。

 それは個々の資質によって得手不得手があるのだが、苦手な型や系統での使用はは消費する魔素の量が多くなってしまうのだ。


 長時間つるはしを強化して採掘を続けるなら、持続型で攻撃系統の技術が得意な者が適している。


 しかしうちのパーティーの場合、俺とナチは攻撃系統が得意だが瞬発型で、バドは持続型だが攻撃系統の技術が苦手なのだ。

 ナチの言う通り闘気をローテーションで使用することも試してみたが、一回りした時点で続けられないことは明らかだった。


 現状では硬い岩盤に当たった時などに、単発で使うだけに落ち着いている。


「考えてみたら、うちって採掘向きのパーティーじゃないよねぇ」

「あー、それは前から分かってたことだけどな」

「ですねぇ」


 ナチの根本的な指摘に、俺とバドは一緒に苦笑いを浮かべ肩を落とす。


 問題は表面化しないと問題にならない。

 俺たちのパーティーが苦手とする依頼の種別なんて、ナチに指摘されるまでもなく分かっていたことだった。だけど、いままでそこに問題を感じなかったので、対処をしてこなかったのだ。


 こうして大した進展もなく議論が煮詰まりだしたところで、一人傍観を決め込んでいたオルトが口を開いた。


「強化するのが一本でいいなら、俺が付与をかければいいんじゃないか?」

「それも考えたけど、採掘中ずっとはきつくないか? サーチに影響がでるくらいなら別の方法を考えるけど」


 俺が尋ねると、オルトは腕を組み考える素振りを見せる。


 魔法による付与はオルトがいくつか覚えているが、サーチに集中して貰うためと魔力温存のため使わずにいたのだ。


「付与系は基本掛け捨てだから、サーチの精度に影響はないな。問題は魔力消費だけど、お前らのローテーション埋める感じならいけると思う」

「あ、それいいんじゃない?」


 オルトの提案に、まずナチが食いついた。それに続き、バドも目から鱗というような表情で頷いている。


「ようするに、闘気の使用と併用してってことか」

「ああ、悪くないだろ?」


 言われてみれば簡単なことだ。オルトの魔力を温存するということばかりに気を取られ、そこに気が付かなかった。


 確かに悪くない。いや、控えめに言って名案だ。

 現状を打破するには、それ以外考えられないと言っていいだろう。


「分かった、それでいこう」

「よし、決まりだな」

「ローテーション埋めるって、どんな感じ?」

「そうだな、オルト、付与はどれくらいいけそうだ?」

「あー、そうだな……」


 ナチに促されローテーションの穴埋めを考え始めると、オルトが俺の質問に目を細め遠くを見つめた。


「まぁ、個人的には、いっそ全力のスマッシュライトかまして、洞窟ごとガッツリいっちまいたいところだけどな」


 オルトは遠くを見つめたまま、俺の質問には答えずなにやら物騒なことを言いはじめた。

 疲労で頭が回っていないのかもしれない。目の座り具合から察するに、割と本気で言っていそうだ。


 スマッシュライトはオルトが得意としている攻撃魔法だ。

 攻撃系統としては基本的な部類だが、こいつが全力で撃てば分厚い石壁を二、三枚ぶち破るほどの威力がある。


「おい、やめろよ? 落盤でもしたらさらに面倒くさいぞ」

「分かってるよ。本当にやる分けねぇだろ」


 いや、こいつはやる。そういう男だ。

 ちゃんと止めておかないと、過去最大級の火力を発揮しかねない。

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