これはいわゆる召喚術
結局、シムはゲートの前に戻って来た。
* * *
シムはゲートの前にいた。
絶望のようなどす黒い感情が沸き上がる。
早く帰って寝てしまおう――そんなことを考えていた。
これから魔力と腕力を駆使し竜の大地に帰る。
「充電持つかな」
かなりの労力だが、ここでこのままいるわけにもいかない。
意を決し、ゲートを開けようと集中する。
だが奇妙な現象がゲートの扉から聞こえた。
かすかだが、シムを呼ぶ声がする。
「………シム」
気配を探ると、向こうから誰かがゲート開けようとしていた。
「…シム………シムシム!」
シムはゲートを開け、手を伸ばした。
扉の向こうに誰かがいる。
シムはその人物の腕をつかんでいた。
この人物が自分を呼んだのだろうか? シムは不思議に思いながらもその手の方へと体を預けた。
「呼んだ? あ、あれ?」
シムが掴んだのは、シムと瓜二つの少年の腕だった。
* * *
そこはとても寒かった。
シムはほんの気まぐれで、機械の目の温度センサーをオンにした。
目の前の瓜二つの少年――シムと同じくシミュレーションドールかと思ったがそうじゃなかった。
機械などではなく間違いなく人間だ。
シムはそのことをなぜかとても安堵していた。