侵入者
まずはつかんでいた拳を破壊する。
握力で握りつぶす。
「お…おぉ?」
思わぬ反撃に相手は戸惑ったようだ。
「僕は侵入者だ。さあ、どうする?」
「侵入者、排除する」
「そうだね。それが正しいよ」
片手がつぶれても攻撃をしかけてくる相手に、シムは魔法攻撃をくらわせる。
ふっとんだアンドロイドの腹部に穴があく。
「じゃあ、逆に僕は侵入者じゃないと言ったら? どうする?」
「しんにゅうしゃは、排…除……」
アンドロイドは同じ言葉を繰り返す。
侵入者じゃない者に出会った時の、行動パターンがない。
「もう完全に壊れてるんだね」
シムは哀れみのような気持ちが浮かんだが、躊躇はしなかった。
「しんにゅうしゃ…は、はい…除……」
頭を狙って、打撃を加える。
アンドロイドの頭部が飛んだ。
今度は何も質問せず、頭を踏み潰す。
アンドロイドの胴体は動かなくなった。
シムは改めて周囲の状況を見た。
洞窟に集落をつくり暮らす種族だったんだろう。
他の種族との争いを避け、アンドロイドをガードマンにしてたのだろう。
その結果が……
* * *
シムは洞窟の中を探索してみた。
入り組んだ作りになっている。
もしかしたら生き残ってる者はいないかと思ったが、いなかった。
全員殺されてしまったのか、生き残った者は逃げたのか――シムは後者であることを願った。
死体はドワーフたちだった。
あのアンドロイドもドワーフが作ったのだろう。
それらしい作業ブースもあった。
あのアンドロイドはゲートの管理人すらも殺してしまったのだろうか?
それはシムにもわかりかねる。
結局、よくわからない状態で、一体のアンドロイドを破壊してしまった。
シムは気が滅入ってしまった。
せめて、シムはドワーフの死体を弔ってやりたいと思ったが、やり方がわからない。
洞窟の中の住民はどうやって死者を葬るのだろう?
放っておけば、腐って、この洞窟はひどい有様になる。
もう、ここには誰も来ないだろうか?