シミュレーションロイド
「僕はシム。初めましてだね、お嬢さん?」
「初めまして。私はシームァ」
シームァ。シムに似た名前に驚く。
「僕たち、顔だけじゃなく、名前も似てるんだね」
「そのようね」
「もうお互いの正体、わかってるってことだね?」
「そのようね」
シムは確信した。
シムは、シミュレーションドールと呼ばれる機械。
目の前のシームァと、この前出会ったシーザーはシミュレーションロイドと呼ばれる人工的に生み出された人間。
ということはこの近辺にそういう施設があるのだろう。
「あなた、機械なのよね? その端末、操作できるの?」
その言葉に違和感があった。
シムはじっとシームァを見た。
そこで、シームァの両手が機械なのに気づいた。
今の段階では、シームァの指先では液晶端末の操作ができないようだ。
――また機械の手か。
シムはそんなことを思った。機械の手に導かれ、全滅した集落にたどりついたのを思い出す。
「できるよ。だって僕は高性能だからね」
シムは、えっへんと鼻の下を指でこすった。
暗い感情が態度に出てもよくないと思っての行動だが、なんか不審な目で見られてる気がする。
「シームァの手も素敵だよ」
いわゆる義手という分類になるのだろう。体の欠損を補うためのもの。
シームァは自分の意思でその機械の手を動かせるようだ。動力源はどうなってて、神経伝達はどういう仕組みなのだろう?
シムは、シームァを裸にしてじっくり調べたい願望が沸き起こってきた。だが、そんなことは口に出さなかった。
ふと手だけじゃなく、目も機械だということに気づいた。
それもかなりの高性能だ。
おそらく、シムの目よりも視力が高いだろう。
なので、それをそのまま口に出してみた。
「それに、僕の目よりシームァの目の方が高性能だね」
目と手がないのは生まれつきだろうか、事故だろうか?
それなりに辛い人生だったろうな、とシムは思っていた。