第5話 驚愕!魔石が喋る!?
「あの……?」
『…………』
「こまったなぁ、少しは反応するかと思ったのに」
いや、待って待って待って待って待って!!!魔石って喋るんですか!?マジですか!?
な、ならば私も相応の反応を…………って、いかーん!!魔石がどう喋るかわかりません!まったく思いつきません!
「あの、本当に魔石を研鑽したんですか?」
「うげ。確かにここまでだんまりだと疑うよなぁ〜。でも、意思は感じるし、あとは生前のノリで話してくれると思ったんだけど」
「へぇ。じゃあ、また呼びかけてみますね」
「あぁ、そうしてくれ」
生前のノリ…………なるほど。なんだ、いつものノリでいけばいいんですね!わかりました!
……あれ?いつものノリって何?私、前世ではそこまで喋ったことないんですけど。
………え、ええい、出たとこ勝負です!この際、多少のキャラ崩壊は見逃して下さい!!
「えっと、私が貴方のご主人様のエルティです。聞こえますか?こんにちわ」
『識別完了。マスターを登録します。はい、こんにちわ、マスター。良い目覚めです』
「………………………」
……………………や、やっちまったぁ!
なんですか、このエセロボット口調は!アンドロイドか!……アンドロイドでしたよ。…………へたくそですか!?私、へたくそですか!感情表現クソ雑魚過ぎますよ!!
まぁいい、やっちまったものはしかたない。これからはこの口調で通しますか。
「え、えっと……」
「………とりあえず、話すことが可能になったんだから、『還らずの街道』で何してたのか聞いたら?」
「そ、そうですね。………あの、『還らずの街道』で何していたんですか?」
『『還らずの街道』…?あぁ、あの場所ですか』
ここは最初は知らなかったフリ。多分昔は別の名前で呼ばれてただろうから不思議じゃないでしょう。逆に知ってたら疑われる可能性大です。
『私は進化する石ですから。端的に言うと経験値を積んでいました』
でも、ここは嘘つかない。
私がこの人の武器に加工されてしまった以上、私が経験値を取得するにはこの人が私の埋め込まれた武器を扱う必要があります。遠からず協力する必要に駆られることになりそうですから。
「経験値……?」
「進化する石……?」
『疑問を確認。経験値ーー生物を殺す事で手に入る自己進化ポイント。これを用いてレベルアップします。
進化する石ーー私の種族と言うべき存在。レベルアップする事で存在的に進化します。上限は不明』
ここも嘘はつかない。いい協力関係でいたいなら、知る義務が向こうにはありますから。
「…………つまり、進化する為に人を殺してたって事?」
『そうなりますね』
一言で肯定する。
「人殺しは、ダメです!」
うっ………ごもっともです。
めっ、と言いながらこちらに指を突きつけてくるエルティの声にはちょっと力がこもっていた。
『その通りです。ですが、自発的に動けない私には街道を通る人間くらいしか狩りの対象がーーー』
「ちょっと待って。その経験値ってやつを手に入れられるのは人間だけなの?魔物でも大丈夫?」
そこで、私を加工した人ーーえーっと、そう!ランゼさん!……が、話しかけて来ました。
『………?命あるものなら何でもいいと思いますが……』
素直に答える。推測にすぎませんが、別に人間限定とか聞いてませんし、人間で経験値を貰えるなら魔物でも大丈夫でしょう。寧ろ人間より魔力持ってそうな分経験値多そうです。やけくそでテキトーな理論ですが。
「なら簡単じゃない。冒険者稼業の一つである魔物狩りで、あんたは進化できる。エルティは今まで通り、コイツを武器として使えばいいんだよ。そうすれば、エルでも冒険者稼業をしながらコイツの進化を手伝えるし、あんたもそれでいいんだろ?」
『逆に、マスターのいつも通りに武器として扱ってくれた方が経験値効率は良いと推測しますが。寧ろ人間は効率が悪いです』
「なら、決まりだね。エルも、人殺しの武器じゃなくて、将来的に強くなる自分だけの武器って考えた方が気分いいだろ?」
「そうですね。ありがとうございます、ランゼさん!」
意外とあっさり終わりましたね。人殺しはダメって言ってたけど、流石に日本の道徳教育程ではないらしいですね。まぁ、ファンタジーって割と人殺しで溢れてますし。
「そういえば、君の名前は?」
…………私の事かな?
『生前の名前はありましたが、この世界で言うのも何か違う気がします。まぁ、魔力しか取り柄のない石ころですし、適当に『エーテル』とでもお呼びください』
「わかった。よろしくね、エーテル」
生前の名前はこの世界では言えません。それに、ステータスを見ても私は【名前:なし】と書かれていた。つまり、前世の事は持ち出すなという意味でしょう。
私は、笑顔でこちらを見るエルティを見て、多少心がぐらついたものの、なんとか偽名を言いました。………いや、これがある意味この世界での私の名前ですか。
『はい。よろしくお願いします、マスター』
◆◇◆◇
ーーーー進化する石ーー私の種族と言うべき存在。レベルアップする事で存在的に進化します。上限は不明
ーーーー生前の名前はありましたが、ここで言うのも何か違う気がします。
「自分の種族を『進化する石』と言った以上、あの石は最初からそういう存在だったのでしょう。魔石、魔核というのはあり得ない。あれは、種族ではなく、生物の成れの果てですからね。………だと言うのに言葉の節々から感じられる彼の石の生前の存在……う〜む、訳がわかりません!
ふふふ、これは楽しくなりそうですよぉ〜……!」