第8話 人間のスキル
「それでいいのか、魔導科学者……」
「いや、確かに考えてはいたんですよ〜。『成長する』と態々鑑定したスキルに書かれていた事もありますが、肝心のその『成長』がどこまでの範囲を示すのかわからない。なら、本来人によって決まっている筈の所持スキルを『成長』の過程で手に入れてもおかしくないかな〜?とか。……まぁ、仮説にすらなってない理論なんですがね〜」
『はぁ……?よくわかりませんが、スキルって個人で決まってるんですか?』
己の知識から得た仮説を披露するファルル氏の言葉は殆ど分かりませんでしたが、そこだけは気になったので聞いておきましょう。
「はい。基本的には5歳の春に祝福の儀を受け、自身のスキルを確定させます。人は神より祝福を受ける事で、スキルという恩恵を受けるんです。受け取れるスキルは千差万別で人によって違うのですが、共通してるのは〝後天的にスキルを取得、もしくは変質させる事は出来ない〟というものでして……。つまり、基本的に人間はスキルという領分では祝福の儀を受けたその時からできる事は決まっています」
その説明はマスターがしてくれました。
なるほど。人は5歳からスキルを神とかいう訳分からん存在から授かる。しかし、そのスキルは授かったら最後、返品も改造も不可能で、一生向き合わなければならないと。
これは……、スキルというのは〝練度が存在する技術〟というより、〝生まれ持った異能〟と言った方が近いかもしれないですね。ある程度の応用はできるでしょうが、あくまで人はスキルの領分でしか戦えないということなのでしょう。
こうなると、単なる『成長』によってスキルを取得した私の異常さが際立ちますね。ファルル氏が思考停止したのは、訳がわからない状況に直面したが故といった所でしょうか?
「ところで、いきなり話は変わるんだけど、鑑定で書いてたエーテルのステータス。FとかAとか書かれてたけどアレは何?」
本当にいきなりですね。まぁ、マスターの疑問に答えたい所ではありますが、残念な事に私はそれについて充分な知識がない。……しょうがないですね、正直に答えましょう。
『ーー疑問を確認。ステータスの等級の事と判断します。現在F〜Aランクまで確認しております。状況的にSランクも存在している可能性を想定中。等級による力の程度については、情報不足の為、不明。ーーー要するに私もわかりません』
「がくっ。そうなんですか……」
すみませんね。わかったら教えますから。