茜ちゃん
「鑑定・・・素晴らしいスキルですね。私も欲しいです」
ミトルスが羨ましそうに言う。
確かに、鍛冶師に鑑定は便利かも。
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食事を終え、庭で歓談していると、兵士が駆け込んで来た。
「王女様、此処におられましたか。大変です。西の森が襲われました」
兵士の報告を聞いたリーンは、悔しそうな顔を浮かべると、
「・・・兵を出します」
そう告げる。
ミトルスが首を振り、
「王女様、もう間に合いません。此処の護りも薄くなりますし、向こうも移動した後でしょう」
ミトルスの言葉に、リーンが悔しそうに俯く。
・・・不謹慎だが、これはチャンスなのでは?
「王女様、宜しければ、私に任せて下さい」
リーンは、じっと俺を見つめ・・・
「・・・リョータ・・・しかし、いくらキミでも・・・」
悲しそうに首を振る。
「王女様、大丈夫です。こう見えて、私は意外と強いのです。レベルも600有りますし」
「キミ、レベル上がるの早過ぎるよね!」
しおらしい様子から一転、ツッコミモードになる。
おや、このツッコミ方・・・
「王女様のツッコミを聞いていると、知人を思い出しますね」
リーンは、はっとした顔をした後、覚悟を決めた顔をする。
俺が続ける。
「近所の茜ちゃんを思い出します」
「それは誰かな!」
食いついてくるリーン。
「とりあえず、場所を教えて下さい。捕まえてきます」
俺が言うと、兵士がリーンの様子を伺う。
「良いよ、でも、僕も行くからね!」
リーンが有無を言わさない様子で言う。
いや、危ないでしょ。
「王女様、此処は私に任せて頂いた方が」
俺がそう言うと、ミトルスも同意する。
「王女様が行かれるのは反対です・・・勿論、リョータ様も心配ですが・・・」
リーンが、俺の肩を掴むと、
「僕と一緒なら、補充しながら使えるよ!」
おや、色欲増魔を知っている?
ラックルが教えたのだろうか。
だが、確かに魅力的だ。
「分かった、王女様、一緒に来て欲しい」
どこまでして良いんだろう?
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ぱっから、ぱっから。
呼び出した羊に乗って駆ける。
色欲増魔を使ってから使えばもっと早い気はするけど・・・今のストックをまだ消費する訳には。
リーンが協力してくれるなら、また回復出来るのかも知れないけど。
今チャージしてあるのは、それなりにお楽しみして貯めた奴だ。
それなりに威力がある筈。
「王女様、遅くて済みません」
「はや・・・早い・・・落ち・・・落ちる・・・?!」
大袈裟な。
乗り物が苦手なんだろうか。
「馬程快適では無いですからね」
「さっき、10メートル近くジャンプしてたんだけど!」
そりゃ、崖があったら飛ぶよね。
飛ばないと落ちるじゃん。
「・・・でも、夜の前に辿り着けるのは有り難い・・・朝になったら、移動を開始して、隷属呪法をかける筈だから・・・それより前に助けたい」
リーンはそう言うと、悔しそうに続けた。
「今は多分お楽しみタイムかな・・・」
混ざりたい、とか言ったら怒られるんだろうな。




