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これは守護者の物語  作者: 橋 八四
二章 空の下、君と歩くための物語
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六三話:正直に

 

 ドクターの実に淡々とした言葉の数々は曖昧な反論を一切許さない。そのだらしない外見とは大違いで、流石は『学者』を名乗るだけはある。


(あの服装も『相手を油断させるため』とかだったら笑えねぇな)


 雰囲気も含め意図的にそう見せているのならば相当に策士だ。



 ――並行世界(パラレルワールド)



 それは『ある時空のある時点から分岐した世界』であり――言い換えるなら『I F(もしも)の世界』。


 世界には数多の可能性が満ちていて、その可能性の数だけ未来が存在するとするならば――この現状(未来)に辿り着いたとしてもなんら不思議ではない。


 そしてこの場合の『IF』は『魔力の活性化』でまず間違いないだろう。


(つか起きたら『情報もほとんど丸裸にされてました』ってか? っは……笑えねぇ)


 内心で思わず自嘲の笑みがこぼれる。

 まさか情報収集をする前に情報が向こうからやってくるとは予想外で、辿り着いた先もまた予想外だった。それに総護達側の情報も推測混じりではあるがほぼ暴かれているとは誰が想像できただろうか。


(はぁ、どうすっかなぁ)


 総護はドクターと言葉を交わしながら『この状況の打開策』を考えていたが、どう足掻いても言い訳程度のものしか思いつかなかった。

 そして総護が思っていた以上に警戒心が出ていたらしく、それによってドクターの警戒心まで高まるという負の連鎖が発生していた。


『どうするの? 全部バレてるわ』

『だな。――んで、どうすりゃいいと思う?』


 お手上げ状態になった総護は周囲に助けを求めることにした。


『考えてなかっただ!?』

『よく考えた結果、よく分かんなくなってきたんだよ。だから聞いてんじゃねぇか』

『……えぇ』

『仕方ねぇだろ、色々と予想外すぎんだからよ』

『そうね、まさか私の説明が裏目に出るなんて想像もしていなかったもの』

『あんだけ自信満々だったのになぁ』

『こ、今回は、相手も悪かったのよ』

『たしかになぁ。とにかく、「ドクターをいい感じに説得できる説明」を全員でさっさと考えんぞ? もたもたしてっと怪しまれるからなぁ』


 一応切れる『情報(カード)』もある。しかし、それを使うにはリスクが高過ぎると総護は判断した。

 確かに有益な『情報』ではあるが現状ではただの悪手でしかなく、間違っても今の親密度では使うべきではないものだった。


『――いっそのこと、もう全部ぶっちゃけたらいいんじゃないっスか?』


 今まで黙っていたピー助は突然、独り言のようにそう言った。


『ドクターは「いい人」っぽいっスから、きっと正直に言ったら上手くいくと思うッス。……多分ッスけど』


 ピー助なりに考えていたのだろう。内容は楽観的で自信の無いものではあったが、一考の余地のある内容でもあった。


 ドクターに今のところ敵意や害意が無いのは既に全員分かっている。加えて本人が『善意で助けた』と言っていたことを信じるのであれば、ピー助が言ったように『いい人』となるはずだ。

 またドクターが警戒していた理由は総護達が『何者か分からない』からであり『目的も不明』だから。――つまり総護と同じだった(・・・・・・・・)


『なるほど、確かにその手があるな』


 相手の警戒心を解く手っ取り早い方法は、『自分が警戒心を解く』ことだ。

 嘘をつかず正直に本心を語る。内容がよほど危険なものでなければある程度は警戒が緩むはずだ。


 最初からそうすればドクターに必要以上の警戒心を抱かせることはなかったのだろうが、〝転移〟早々から【怪獣(烏賊擬き)】に襲われた上に初めての『異世界転移』で総護も緊張していたのだ。だから警戒心が強まるのは仕方がないとも言えた。


『「腹を割る」かぁ、意外といけそうな気がす――』


 総護はピー助の案に賛成だったが、


『『――それはダメっ!!』』

『――うおっ!? なんでだよ!?』


 ――何故か女性陣は猛反対だった。


『「腹を割る」とかダメに決まっちょうがん!!』

『そうよ、もっと他に方法はあるはずよっ』


 本気で凄まじい勢いだった。『絶対に嫌だ』という意志を感じる。


『そうは言うがよぉ、やっぱもうこれくらいしかねぇんじゃね?』

『そうッスよ。というか急がないとドクターに怪しまれるッスよぉ』


 『正直に言う』ことの一体なにが駄目なのか、総護には皆目見当もつかなかった。仮にこれ以上誤魔化し続けたとしても、ドクターが総護達の説明の破綻(スキ)を見逃さないことは目に見えているのだ。

 関係性を改善できる時に改善しなければ、決定的な亀裂が生まれてしまうのは詩織も陽南も分かっているはずなのだが、どうやら分かった上で『嫌』らしい。


『――だけん、ダメって言っちょうがん!!』

『……なんでダメなんだ? ――つか、なんでキレてんだよ?』

『お腹よ、お・な・か。割ったらダメに決まってるじゃない』




(――――――――、はぁ――――?)




 茫然自失とは今の総護のことを指すのだろう。予想外すぎて危うく口が開きかけたが、どうにか間抜け面を晒すことは避けることができた。


『……まさか、マジで俺が「腹を斬る」とでも思ってんのか?』

『――えっ?』

『――違ぁだ?』


 心底不思議ではあるが、二人とも総護が物理的に『腹を斬る』と思っていたらしい。


『ったりめぇだろうが!! なんでいきなり「切腹(ハラキリ)」すんだよ!?』

『それはっ、総ちゃんが「腹を割る」とか言うけん、だがん』

『いや、どう考えても完っ全に慣用句だろ』

『…………どうやら私達の誤解だったみたいね』

『物騒な誤解ッスね!!』


 とりあえずよく分からない誤解も解けたので、満場一致でピー助の案が採用されることとなった。


(こっからはマジでドクターの反応次第だな)


 正直に話した後で『ドクターの善人という化けの皮が剥がれました』などという展開が来ないことを祈りつつ、総護は心を落ち着かせながら口を開く。


「――分かりました。全てお話しします」







「――――あ、ああ、うん、どうぞどうぞっ!?」


 ちなみに、押し黙っていた時間がドクターの精神をゴリゴリと削っていたことを総護達が気付くことはなかった。

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