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これは守護者の物語  作者: 橋 八四
一章 はじまりの物語
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一二話:彼へ彼女と彼女から(一)


 「あっ、し~お~り~ちゃ~んっ!」


 徐々に茜色に染まっていく校舎。一人の夏服の少女が自転車を押しながら校門を元気よく駆け抜けていく。少女の先には黒い長髪で同じく夏服の少女が自転車を押しながら歩いていた。


 「今帰り?一緒に帰っていい?」


 陽南は勢いよく詩織の隣に並ぶと笑顔で尋ねる。


 「もちろんよ陽南ちゃん、断る理由が無いわ。ッフ、我が『幼馴染みの美少女と二人きりで仲良く下校』という素敵イベントをスルーするなど絶対に有り得んよ」

 「び、美少女って。もぅ、しゃんこと言っても何も出らんよ?」


 そう言いつつも陽南の表情は嬉しさ半分、照れ半分といったところだ。


 「――クハっ!?」

 「し、詩織ちゃん!?」


 突然会話の途中で詩織が左手で心臓のあたりを押さえながらその場に蹲ってしまう。慌てて自転車のスタンドを下ろし詩織に駆け寄る陽南。


 「詩織ちゃん大丈夫!?」

 「だ、大丈夫。大丈夫だから」

 「でも心臓が痛いならすぐにでも病院行かんと取り返しのつかん事になーよ?学校近いし戻る?」

 「安心して、本当に大丈夫だから。断じて病気なんかじゃないわ」


 立ち上がった詩織の顔色はいつもと変わらなかった。だが念のため陽南は詩織の脈拍数や呼吸を確認してみる。


 「……多分大丈夫、かな?ホントに何処も何ともないだ?」

 「ええ、健康体そのものよ」


 詩織の体に異常な点が無かった為、二人は改めて歩き出す。


 「じゃあさっきのは何だったの?」


 陽南の質問に対して詩織は歩きながら至極真面目に答える。


 「陽南ちゃん、『美少女が照れている顔』っていうのはね、時に凶器になるの。そう、それは―――心臓を撃ち抜く不可視無音の凶悪な魔弾」


 詩織としてはこの上なく真面目に答えているつもりなのだろうが、説明を聞いている陽南の視線には胡散臭いものが混ざり始める。だが、かまわず詩織は続ける。


 「特に本人が意識していないタイミングで放たれる場合、その威力は計り知れないの。今回みたいにね」

 「え~、それ本気で言っちょう?」

 「ええ、本気よ。実際に先程、我は撃ち抜かれてしまったのだからな」

 「しゃん事になるのは詩織ちゃんだけだと思ぅよ?」

 「―――そんな事はない」


 詩織は少し早歩きになり陽南の真正面に立つとその場で反転。左手で自転車の左ハンドルを握ったまま右手で指鉄砲を作り陽南に向ける。


 「先程の表情を我が盟友に向けてみるがいい、ヤツですらその魔弾は防げまい。フハハハ、視える、視えるぞ。ヤツの慌てふためく姿がっ!!」

 「じゃあ、きっと詩織ちゃんもだね」


 一人尊大な笑い声を上げている詩織に向かって陽南は喋りかける。


 「え?私も?」

 「だって『美少女が照れている顔』でしょ?詩織ちゃんが出来んわけないじゃん」

 「フ、フン。ぐ、愚問だな。()にしてみれば朝飯前よ」


 少し前の陽南の様に嬉しさ半分、照れ半分の表情の詩織。どうやらキャラの一人称が崩れる程度には動揺しているらしい。


 「あっ!?詩織ちゃんが言っとった意味が分かったかもしれん。これは納得だわ~」


 なるほど確かに、コレは凶器だ。同性の陽南から見てもこの表情は来るモノ(・・・・)がある。中二病モードの詩織言っている事は理解出来ない事の多い陽南だが、珍しく今回は納得する事が出来た。


 「……私で納得されるのはちょっと複雑なのだけど、でも納得してもらえて良かったわ」


 詩織は若干複雑そうではあるが、それでも嬉しそうだった。


 「そうそう、今日商店街のお肉屋さんけっこー安くなっとるみたいだけん行ってみん?」

 「そうなの?じゃあ行ってみましょうか」

 「決定だね、じゃあレッツゴー」


 夕暮れに染まる街へ向かい二人の少女は自転車にまたがり、仲良く走り出していく。


 ―――少女達は気付かない。背後から一人の男の視線が注がれている事に。

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