神の子 バルバトス
この話を考えるのに一時間とかかりませんでしたが。
決して適当に考えてはいません。
よろしければゆっくりと見ていただけると幸いです。
彼は1人だった
彼は無欲だった
彼は神の子だった
欲のない神はいいようで悪い。
心無き人形である為殺処分されるべき
存在だった。
彼は天才だった
生まれた時から親を超える力を有していた
時には無空間に物質を創り出し
時にはその物質の速度を上げ物体を創り出しそれを壊すという意味の無い事をしたり
彼は寂しかった
無欲な為に友人にも恵まれなかった
彼は悲しかった
面白くない、そう言われ話し相手すらできなかった
それでも彼はー
その場所を愛していた。
いつしか無くなる場所が愛しくて
仕方がなかった
彼は初めて欲を知った
彼は天才だが感情的な育ちはとてつもなく遅かった
神は言った
何でもできる代わりに何かを失う
それはとてもとても大切なものだ。
バルはそれが何かはわからなかった。
大切なものとは失って気付くものと知った
彼は負の感情しか持って育たなかった
次第に彼の体はどんどん黒く染まって行く
誰も進行を止められない。
白目まで真っ黒く染まった頃
彼は己の弱さを克服する
負の感情のうち悲しさ虚しさ切なさは
行動を制御すると考えた
彼は気付けば真っ赤に染まった
何もかもを殺し尽くした。
あの愛しかった場所、時間を自分の手で
すべて壊したのだ。
彼は泣いた。
彼は鳴いた。
彼は啼いた。
気づけば彼は
笑っていた。
感情とは通り越す時
全く正反対の物になる。
その時の彼の体は白く青く目に火をともした。
彼は立ち上がり掠れた消えそうな声でこう囁いた。
誰か助けてよ。
とー
それから歳月が経つ
彼は自害を選ぶが生半可な刃物では
傷一つつかない。
彼は死にたいと思った。
死にたいと願った。
だが死ねない。
息を止めた。
時間が止まった。
彼は目の前に広がった
山々に垣間見る湖を見た
なんて綺麗なんだー
息を止めている間、鳥が空中で停止し
音もなく。ただ静かな場所を手に入れた
彼は息を止め続けた。
苦しくはない。
後ろから誰かが歩いてくる音が聞こえた。
ふと空を見ると鳥が停止し浮遊している。
一体何が起こっている!?
そう叫ぶ神に答えを返す者が1人ー
私は時を操るアールス
みんなが気味悪がるからここから
飛び降りようとしていたのだけれど
どうやら先客がいたみたいね
彼女は美しく光が反射する白髪に目を奪われたバルバトス。
バルは聞いた。
俺が怖くないのか?
彼女は答える。
そのセリフは私のセリフよ
とー
2人は話した。
時に何十万年という時を
2人で話した。
アールス・ルイアルテ
私の名前。
バルバトス・ドルトグル
俺の名前だ。
そう言い終えた瞬間
彼は彼女に触れようと小指を頬に
触れた瞬間
アルスは灰になり砂となって
彼の手のひらに虚しく積もっていく。
彼は大声で叫んだ。
内気な彼が喉と腹を楽器のように大きく唸らせ叫んだ。
俺が何をした!!!彼女を灰に変える必要は無いはずだ!!!!
これは誰に向けたわけでもない。
いや、たった1人に向けて言い放った
自分だ。
彼はアルスという人物をもう1度夢見て
来世を待った。
いつまでも永久に近い命が尽きるのを
その場所で待った。
もしかすると彼女がもう1度現れるのではと
期待もあった。
しかしー
無限に近い時間を越した頃気付いた
この灰を戻せばアルスは戻るんじゃ…
また彼女の笑顔を見たい話したい。
そう願って灰の時間を戻した。
途中灰が手のひらに戻り
彼の手に彼女の手のひらが重なる。
ッ!?アルス!!
手を引いた。思い切り手を引いた。
体が重なるまでに灰はアルスの外見と
なっていた。
あくまで外見だ。
中身は空っぽの魂の器でしかない。
目も口も開かない。
ただの人形でしかない。
彼は彼女の目を無理に開けた。
目に光は灯されていなかった。
彼女は空を見ていた。
真っ直ぐに空を眺めていた。
彼は抱きしめた。
例え魂の器であるとしても彼女の
居た場所では代わりがなかったからだ。
彼は話しかけた。
また無限に近いほどの時間
彼女に話しかけた。
彼女はいつしか灰になっていた。
彼は泣き叫んだ。
今度は出る言葉も無かった。
彼は息を止めるのをやめた。
大きく息を吸いこんで
彼女の名前を呼んだ。
鳥は逃げ出し、大地は揺れ、空は真っ二つに
裂けた。
一瞬で前にあった景色は崩れ落ち
地獄絵図とかした。
そうしたのは他でもない彼だ。
気が付けば冥府の門を叩いていた。
彼女を求めて探して行き着いたのが
冥府の門であった。
門を潜るなり第1歩と共に
彼女の名を叫ぶ。
アールス・ルイアルテ!!!
俺は君を追ってここまできた!!
居るなら返事を!!
どうかその…声だけでも聞かせてくれ!!
彼は涙腺から溢れんばかりの雫を零れまいと必死になりながら叫んだ。
すると、彼の前に大きな黒い髭を蓄え
髪は綺麗な白で
コウモリのような羽を背に生やし
槍のような尾を振りながらこちらへ
降り立った。
この老人は悪魔だ。
老人は言った。
想い人を追いかけし気高き者よ。
願いを叶えてやる。
だが条件がある。
貴様の記憶は貰っていく。
老人は静かにかつ冷酷に微笑んだ顔で
彼に条件付きの交渉を持ちかけた。
彼に考える余地はなかった。
勿論、即答だった。
構わない。欲しいものはくれてやる。
ただし彼女には一切影響を及ぼさないと
約束した上での条件だ。
老人は答える。
良かろう。貴様の言う通り
彼女には一切手出しをしないという
条件を飲もう。
老人がそう答えた瞬間
後ろから白い影が見える。
彼はそれを見逃さなかった。
アルス!!
返答はなかった。
だがそこにいるのは確かに彼女であった。
老人は口を開く
まだ心に鎖をかけさせて頂いてます。
今しばらくは貴様の声は届かないでしょう。
彼は憎悪に満ちた顔でこう言い放つ
今すぐに彼女の鎖とやらを外せ
今すぐにだ!!!
老人はニヤリと不気味な笑みを浮かべ
ゆっくりとした口調でこうかえす。
では貴様の記憶は頂戴いたします。
その途端、彼女が目を開く。
奇声にも似た歓声を彼女が上げる。
風より早く、彼の元へ行き
彼女は彼に謝罪をする。
ごめんなさい。突然貴方の前から
消えてしまって…
だが、返答は帰ってこなかった。
どうやら彼の記憶は綺麗に消えてしまったようだ。
彼女が目に涙を浮かべると
彼が口を開いた。
どなたか存じませんが…僕と関係がある方なのでしょうか…?
彼女は泣き崩れながら彼の体を強く抱き締めた。
今後連続小説として
詳細にこの物語を描くかもしれません。
その時は宜しくお願いします。
多分タイトル名は変えます