転校生
けっこう遅れて申し訳ありません。
また気が向いたら書いていきます。
何卒よろしくお願いします。
ごく当たり前の日常。それがこの学校生活全般を指していると言っていいだろう。俺は特別何かの才能に恵まれている訳でもない。ましてや、誰からも好かれているような人間でもない。唯のどこにでもいる普通の男子高校生だ。
通学路をボーっと歩いていると後ろから肩を叩かれた。
「おっす、元気か?」
元気のいい声で話しかけてきたのは刈谷雄大。この高校で出来た友人の一人だ。
「ああ、朝から元気いいね」
「まあな。朝から元気で行かねえと昼まで持たねえからな」
「逆に昼までにエネルギー切れ起こすなよ」
「おっと、そうならないように…」
そう言って鞄の中を漁り、
「菓子パン常備だぜ!」
大量の菓子パンを見せながら誇らしげに言った。馬鹿なのか本気なのか分からないが、刈谷は素直な奴だ。自分の気持ちに正直で分かりやすい。変に気を回されて微妙な感じなるよりは付き合いやすい。
教室に着くと、いつものように一番後ろの席に着き、教科書などの諸々の教材を出す。しかし、いつもは一つしかない窓側の俺の席の隣の列に新しい席が用意されていた。これはもしかして……
「転校生が来るんだってよ!」
刈谷が俺の机の前でそう伝えた。
「マジかよ。それで机があるのか」
「女子かな?女子が良い!」
「まあな。男だったら嫌だよな……」
そんな会話をしている内にチャイムが鳴り、担任の古川が入ってくる。
「席に着け~。今日は皆に転校生を紹介するぞ」
なんのひねりもなく、開口一番そう伝える。周りの奴らが少しざわめき出す。
そして、ドアが開き、少女が長い黒髪を棚引かせて教室に入ってくる。その少女は教卓の前で立ち止まった。古川が彼女の名を告げる。
「最明高校から転校してきた市川琴美さんだ。市川さん……」
古川に促されて市川琴美が口を開いた。
「親の都合で転校してきました。これから宜しくお願いします」
フォーマルな挨拶。なんのひねりもなく、形どおりの普通の挨拶だった。でも、それはどこか特別な雰囲気を醸し出していて、透き通った声に目鼻立ちが整った顔が印象的で背筋もしゃんとしている。
「じゃあ市川さんは一番後ろのあそこで」
「はい」
古川が俺の隣の席を指で示し、彼女は真っ直ぐ席に向かう。スッと席に着いた彼女に話しかけるべきかどうか迷っている俺を尻目に、市川さんは俺に軽く会釈した。俺も慌てて会釈する。すると古川が俺を指名し、
「軽く市川さんを案内してやってくれ」
と、校舎の案内を任せた。
「わかりました」
俺は訳の分からないままの頭で適当に返事をしてしまった。突然の事で動転してしまったのかもしれない。でも、とにかく言われたからにはやらねばならぬ。
市川さんの方を向いて
「じゃあ昼休みに案内するよ。その時間大丈夫?」
と尋ねると、
「わかった」
そういうそっけない返事だけ残し、市川さんはせっせと授業の準備をするのであった。