日常
「おい!何時だと思っているんだ!遅刻するぞ!!」
「分かってるよ……あと五分……」
「ったく、お前はいつもそうやって…もう高校三年だぞ?少しは自立しようとしたらどうだ?」
「それは…」
朝七時。朝が苦手な俺にはこの時が一日のうちで一番の苦痛だ。今日も親父が隣で起こすついでに説教だ。眠気がまだ残る意識の中で適当に返事をしてやり過ごす。
「もう進路も決めたのか?そろそろちゃんと……」
「うっさい!!!起きればいいんだろっ!!」
唯でさえ先生から言われ続けられているから耳タコなんだ。その話題には一番触れてほしくなかった。
俺は布団を乱暴に剥ぎ取り、サッと制服に着替える。呆然としている親父を尻目に階下のダイニングへ向かった。
「あら、早いじゃない。いつもは七時半ぐらいに降りてくるのに」
「何でもない。いただきます」
母が珍しそうに眺める中、朝食のパンに噛り付く。バターの風味が口いっぱいに広がった。親父が怪訝な顔をしながら席に着く。
「まあ、起きればいいんだがな。朝起きるのが辛い以外は勉強も充分やってるみたいで問題ないしな」
親父も仕方ないと言った様子で新聞を広げる。
「あなたが考えているよりも、ずっとしっかりしているんじゃないの?でも朝はちゃんと起きないとだめなのよ?」
母がいつものように注意を促してきた。
「分かってる。ごちそうさまでした」
俺はパンとコーヒーの簡単な食事を済ませると、すぐに家を出た。
まさか、あの日、あんなことになるとも露知らず……。