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Elsaleo ~世界を巡る風~  作者: 馬鷹
第六章 『踏み込む勇気』
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第七十一話




 邪教徒ミレイユとエルザの戦いは、邪教徒特有の魔法による妨害が効果的に作用し、エルザは常に後手後手に回っていた。

 ミレイユとの距離を詰めての一撃も、それは水面に映っていたかのように触れば歪んで消えていく。驚くエルザが背後から聞こえた声に振り返れば、そこにはミレイユの姿が見える範囲で二十人以上はいた。


 しかも、今この瞬間にもその数は増えていき、驚くエルザを取り囲むように、何もない空中や地面から盛り上がって新たなミレイユが現れている。クスクスと笑い声を上げながらの出現には、少しばかり怖い物があった。


「もしかして、姉妹がたくさん」

「いいえ、一人っ子ですわ」


 エルザは気持ちを落ち着かせる為に軽口を叩きながら、いつミレイユが入れ替わったのかを考える。だが、これといって思い当たる瞬間はなく、時間稼ぎも兼ねて直接聞いてみることにした。


「でもいつの間に変わったの? 私ミレイユさんから目を離してないと思うけど」

「それは先ほど宝玉を撃ち返された時より前に。実はあの時、魔法が完成していて本体は隠れていましたの」


 宝玉とは竜巻を制御していた球体のことだろう。あの時は何か魔法が発動したようには感じられず、杖を振るうような仕種も見られなかった事から、エルザは詠唱を止められたと判断してしまったのだ。


「うわっ、騙されたっ」

「はい、騙せましたわ」


 エルザの冗談に乗るのは余裕の態度の表れか。だが、その間にエルザは右足のつま先を軽く地面に沈め、目の前で話しているミレイユとその周囲に向かって土を蹴り飛ばす。

 どの程度で幻影が消えるのかは知らないが、実体があれば土がぶつかり、幻影には多少でも歪みが生じると考えたのである。


「くっ」


 広く撒き散らされた土をミレイユは腕をクロスして防ぐが、狙い通り目の前の数人には波紋が広がりながら通り抜けていく。その中で一人、土が貫通することなく跳ね返るミレイユがいた。


「見つけたっ」


 当然、エルザはそのミレイユを目掛けて駆け出し、脇腹目掛けて右足で蹴りつけると、先ほどの幻影とは違い確かに手応えを感じた。いや、正確には有り過ぎた。

 普通なら脇腹で止まる足がそのまま沈み、ぐちゃりとした感覚がエルザの足を襲う。防御の間に合わなかったミレイユは、苦痛からか表情を歪めながら……消えた。


「なッ」

「残念それは――」


 そして現れたのは目も鼻も口もない、のっぺらぼうな黒色の顔。

 背後から聞こえてくるミレイユの声に、エルザは振り返ろうとするが、ミレイユだったモノに足を捕まれて振り向く事が出来ない。


「土塊ですの」

「ぐあっ」


 背後からの一撃。ガードも出来ないエルザは土塊にぶつかり、そのまま一緒に巻き込んで吹き飛ばされてしまう。

 ミレイユが身体強化しているとは言え、魔法ではなく杖で殴られたので、エルザの身体に致命傷はない。痛む背中を反らせつつ、立ち上がって周囲に視線を走らせた。


「一、二、三って数えるのもバカらしいね」


 かなりの数の幻影とその中に混じる実体を持つ土塊。表面上は普段通りなエルザだったが、内心では苦々しく思っていた。


 一つ目は場の悪さ。微かにでも触れれば歪んで消える幻影なら、石でも投げれば済むのだが、この場にはその小石が見当たらない。直ぐにバラける土では、遠くにいるミレイユまで届きはしないだろう。せめて土を固める時間が欲しかった。

 二つ目は緒戦で受けた魔法の妨害。左右の腕がくっ付き、腕を振るって戦うことが困難なのだ。魔闘士のエルザとしては、本来の実力を発揮できない。

 そして何よりも三つ目。それは単純にミレイユがエルザより強いということ。魔法の使い方からタイミング、エルザの動きを読む知力や接近戦を行なえる棒術。非常に厄介な相手である。


「では、参ります」


 ニコリと微笑んだ後でミレイユ達は、取り囲んでいるエルザに右手を向けながら同じ構えで回る。詠唱は同時にミレイユ達の口から発せられ、微かにしか聞こえない言葉が、太く重く幾重にも重なって聞こえてきた。


「カフィスィフィス」


 そして、杖を持たない右手に緑色に輝く球体が浮かび、エルザに向けて放たれる。

 実体は一つだろうが、全方位からによる集中攻撃。しかも、一体何の魔法なのか分からない状態で再び受けてしまえば、今以上の窮地に陥るかもしれない。


 エルザは悪い選択だと分かっていながら、敢えて空に跳んでかわす。当然、自由に動けないエルザを狙ってミレイユが再び詠唱を始めるが、エルザは闘気を開放して無詠唱術印のエアーショットを利用し、素早く地面に降りる。


「退いた退いたッ」


 そして大地を駆け巡りながら、すれ違い際にミレイユ達に肩をぶつけていく。途中、実体のある土塊にぶつかっても、バランスを崩さないように触れる程度だ。


 そうやって駆け回りながら、周囲に視線を走らせて戦況を見つめていると、数多くのミレイユの中にも役割があることに気付く。

 エルザの近いところで視界を隠そうと動く前衛、その後ろで魔法を放つ中衛。そして、更に後方で見え隠れする程度に姿を現しながら、魔法を放つ後衛である。


 エルザは見え隠れするミレイユとの距離を一気に詰めると、胴体目掛けて前蹴りを繰り出す。


「――ッ、やっぱりッ」

「当然ですわ」


 だが、それもまた幻影。蹴りだした足は何も当たる事なく、そのまま突き抜けた。

 そして、空振りに終わったエルザを狙って魔法が飛んで来るが、それはエルザも予想していたこと。前蹴りを選択したのはその為で、突き抜けた後地面に降ろしてそのまま走り抜ける。


「本体が影に隠れて狙い撃ち。当然考えられる手ですので、エルザさんもそこを狙ってきたのでしょう。さて、本物の私は前衛か中衛か後衛か、それとも戦場に居ないのか」


 クスクスと冗談めかしながら笑う。


 エルザは苦々しい思いを体外に出すように、身体の底から深いため息を吐き出す。ハッキリ言って戦う相手としては、エルザの苦手なタイプだった。

 その一言一言に虚実が取り混ざり、全てを疑って掛からないといけない。レオもミレイユと同じ戦い方をするが、実力は圧倒的にミレイユの方が上である。


「……レオか」


 何か良い案でも浮かんだのか、エルザは目蓋を一瞬閉じると呪文の詠唱に入り、薄目を開けて周囲を確認する。


「【――】エアーショット」


 通常とは違う詠唱で放たれたエアーショットは、巨大な空気の壁となってエルザが手を向けた先一面を押していく。

 これは坑道でレオとはぐれた時に使った魔法の強化版。遠くまで居るミレイユに当てるには、周囲全てを狙うよりもこうした方が良いと考えたのだ。


 効果としてはただ強い突風が吹いただけである。しかし、それが幻影相手ともなれば話は別。エルザの前面に居る幻影のミレイユ達は姿を消し、土塊はそののっぺらぼうの顔を現す。


 前面に居ないのならば次は左、と向きを変えたエルザを妨害する為、近くにいた黒色の土塊が襲い掛かる。


「邪魔しない――」

「欠点を把握していなければ弱点となりますが――」


 ただの土塊。そう思って無造作に振りぬいたエルザの右足は容易に止められ、凹凸のない黒色の身体がぶれてミレイユが姿を現す。

 それを見たエルザの目は驚きから大きく開かれ、己の迂闊さから苦々しく奥歯をかみ締める。そして、開かれた眼が向ける視線の先は、ミレイユの右手にある雷鳴轟かせる黄色い球体。


「それを把握していれば、罠にもなりますのよ」

「しまっ」


 受けた右足にそっと触れるだけで、雷がエルザの身体に伝い、エルザは思わず叫び声を上げた。

 だが、ミレイユの表情は歓喜でも悲観でもなく、いつも通りの儚い笑みのまま。それを深めてエルザを見つめるだけである。



 ◇◇◇



 魔闘士であるエルザと呪術師であるミレイユの戦いは、誰が見てもミレイユの優位で戦闘が進んでいた。

 それは、彼女達と離れた場所で二人の戦いを見守る、レオ達だからこそ余計に強く感じるのだった。


「ミレイユさん強いな」

「あぁ」


 戦闘に関してソフィアは詳しくなく、リカルドが戦いの後で何か食べられる物を作っておいたほうが良いと言って、今は少し離れた場所で食事の準備中である。

 ただそれは、これからの話を聞かせたくないリカルドが、彼女を遠ざける為に行なった行為だった。


「あの人、邪教徒だな」

「……気付いていたのか」


 鋭い視線で戦場を見つめるリカルド。その横顔はいつに無く真面目で、剣を握る手は強く指の先が白く変色している。そして、顔を赤らめながら奥歯を強くかみ締めた。


「全く、全く気付かなかったーー。あの清楚で儚げな容姿、礼儀正しくたおやかな物腰、知性と品性を感じられる言葉遣い……くっ、俺の女性を見る目もまだまだってことかっ」


 そして剣から手を離し、両手で思いっきり頭を掻き毟る。

 そんなリカルドの態度はレオの予想とだいぶ違い、余りの事に呆気に取られてしまう。目を軽く見開いてマジマジとリカルドを見つめていた。


「何だそんなに見て。……あぁ、俺が気付いた理由か。それなら彼女よりも実力は劣るが、以前に邪教徒の奴とやり合ってな」


 雰囲気は全然違うのだが、戦闘中の空気で感付いたとのことらしい。レオはリカルドが本気で戦った姿を見た事はないが、高位ランク保持者ということを久々に思い出していた。


「それは何気に凄いが……普通、邪教徒と聞いたら態度が違うんじゃないのか」

「まあ、そうだろうな。ソフィアさんに離れてもらったのも、あの人に聞かせる必要は無いって思ったからだし」


 さすがのリカルドも、邪教徒が普通の存在でないことは分かっている。少しばかり声を潜めて、遠くで調理の準備を進めるソフィアを横目でチラリと見つめる。

 そんな二人を見たレオが戦場に視線を戻すと、雷を喰らったエルザが立ち上がって反撃を試みるが、杖で往なされてもう一撃喰らってしまうところだった。


「それで、リカルドは一対一なら勝てるか?」

「簡単に負けないとは思うが……エルザは無理かもな。そろそろ止めるか」


 リカルドはそう言って立ち上がると、左腰に剣を着けながらエルザ達の許へと歩いて行き、レオもその後を追う。

 幻影や土塊の多い戦場だが、土塊が魔道具などを使っていなければ、エルザに雷で攻撃しているのが本物だということだろう。リカルドはそう考えて彼女に話しかける。


「そこまでっ、この勝負はミレイユさんの勝ちっ。いやー、お強いですねー」


 どこかふざけた様子で話しかけたリカルドだが、元から戦闘独特のピリピリとした空気をまとっていなかったミレイユは、普段と変わりない様子のまま小首を傾げて見せる。


「そこまで? まだ戦いは終わっていませんわ」


 チラリとミレイユが視線を投げかけるのは、今も震える身体に力を入れながら立ち上がろうとするエルザの姿。これが真剣勝負だというのなら、ここで止めるのが無粋だという事はリカルドにも分かっている。


 しかし、それでも止めなければならないと感じていた。


「えっと、どこまで続けるおつもりで?」

「彼女の神髄が見えるまで、ですわ」


 それはこのまま続けば、ミレイユはエルザが死ぬその時も浮かべた笑みを消しそうにない。殺してしまいそうだと感じたからである。


「それはエルザが死ぬことになってもか」

「私は極限の状態にあってこそ、人の本心を垣間見ることが出来ると思いますの」


 ふざけた態度から引き締めた顔つきのリカルドに対して、ミレイユも真顔でそう返した。

 しばらく、或いは一瞬の交錯の後、やれやれとため息を吐き出しながらリカルドは鞘から剣を抜く。


「残念だ。なら邪魔するしかないな」

「仕方ありません。とは言え、そちらの彼も興味深い存在ですので、実はありがたいのですけれど」


 ミレイユはクスリと笑ってレオを見つめた。その視線からレオは狂気を感じず、どこか違う視点で眺めているだけとしか思えない。だからこそ余計に壊れているという雰囲気を感じさせた。


「リカルドに俺とエルザ、早々に退いた方が良いのではないですか」


 やはり普通の人間とは違う、そんな内心を隠しつつ、レオはミレイユに撤退を勧める。しかし、ミレイユは笑みを深くするだけで、退くつもりは一切なかった。


「ご忠告ありがとうございます。しかし、問題ありませんわ」


 そう言うと地面を杖で叩き、レオ達には聞こえない小さな声で詠唱を始めた。

 当然、リカルドとレオはそれを止める為に駆け出してミレイユと接近する。だが、近付くほどにリカルドが動きを緩め、遂には走るのを止めて歩き出してしまった。


 それは、接近する二人を警戒することなく詠唱を続けるミレイユに、攻撃を仕掛けることを躊躇ったわけではない。訝しげに眉を顰めているのがその証拠でもある。

 不審に思ったレオが足を止めてリカルドに話しかける。


「どうした、リカルド」

「ッ、レオっ」


 だが、答えるよりも早く、突然大声で叫びレオの腕を掴むと、その場を急いで飛び退く。

 その直後にミレイユだったものは爆発。稲光を発生させながら土煙が舞い、爆風がレオ達を襲う。


「やっぱ魔道具でも持たせた土塊かっ」


 爆風が治まる前に周囲に視線を走らせるリカルドだが、そこにはいつの間に現れたのか、再び多数のミレイユの姿。とは言え、先ほどの爆風が治まっていない中では、姿がぶれている幻影も見られる。おそらくは只の時間稼ぎのつもりなのだろう。


「ヴァイジエアエッジ」


 リカルドが周囲を探る中、レオは短縮魔法術印により真空の刃を放つ。詠唱を邪魔しようとしているのだが、一向に当たった気配は見られない。

 そして、ミレイユ本人を見つけることが出来ないまま、彼女の詠唱は終わった。


「ンジャルバグィカッツァーゾ」


 魔法を唱えると共に幻影の姿は消えていき、最後に本物のミレイユが姿を現す。

 場所はエルザが足を取られた親鳥もちのあった所で、正確にはそこでエルザが足場に使った球体の上。そこに誰かいたという記憶が無い以上、姿を隠していたのだろう。


「お二人にはこの子の相手をして頂きます」


 ミレイユが球体から降りると、それを合図に球体から突起物が伸びていく。

 途中で複雑に絡みながら出来上がった物を、地面に伏したエルザだけは、似た物を見た記憶を思い出す。形状や球体の大きさは違うが、白滝の森で偽者のミレイユのコアとなっていた物だ。


 地面に突き刺さった六つの突起から、土が吸い上げられるかのように肉付いていき、土が黒色からくすんだ白銀色へと変わっていく。


「こりゃまた変な形で」


 完成したと思われる物体を見て、リカルドがそう呟くのも無理はない。


 胴体から左右に伸びる六本の足は細長く、中央部分で折れ曲がっていることで胴体は地面近くにあるが、それでも側に居るミレイユの倍近い高さがあった。

 そして、その胴体にも六本の腕らしきものが付いていた。肩のラインから出ている両腕は、蟷螂のように鋭い鎌の形状をしていて、その少し下に人間のように引き締まった二本の腕。残りの二本は肩の裏から伸びる長い触手状のもので、顔らしきものは前後に二面付いていた。


「この子が我が家に伝わる左邪(サジャ)ですのよ」

「……なら、さっきエルザが吹っ飛ばしたのが右邪(ウジャ)か」

「えぇ、その通りですわ。大切なものですので、後で探しに行きませんと。では、この二人は任せましたよ」


 そう言って軽く足の部分を触ると、それでサジャに意志が宿ったのか、俯き加減だった顔を起こす。それを見届けたミレイユはエルザの居る場所へと向かった。


 もちろん、レオ達は彼女を止めようと考えているのだが、目の前のゴーレムがそれを簡単にさせてくれるとは思えない。一つの顔に四つある細長い目、そこから覗く紅い瞳が二人の動きを油断無く見つめている。


「リカルド一人で奴を抑えられるか?」

「どうだろなー、とりあえず一発殴ってみるわ」


 剣を肩に担ぎながら無造作にサジャへと近付く。それに対してサジャも身体を起こし、一歩一歩リカルドとの距離を詰める。

 まるで決闘のように張り詰めた緊張が漂う中、密かにレオがエルザの方へと足を進めようとした。だが、それに気付いたサジャが紅い瞳の一つで見つめ、相手の実力も分からない以上、レオは踏み止まざるを得ない。


 しかし、それはリカルドが攻め込む切っ掛けとなる。


「ぜりゃああぁぁーーー」


 四つある目の内の一つにしか過ぎないが、それを操り状況を把握する脳は、例え顔が二つあっても頭は一つ。リカルドは一瞬の隙を狙って、一気に距離を詰めると上段から斬りかかる。

 だが、それは先端を地面で固定させた右鎌で受け止められた。リカルドが力を込めたところで、鎌はビクともせずピクリとも動かない。


 簡単に受け止められたことで、一瞬頬を引き攣らせたリカルドはその場を飛び退き、反動をつけて再び懐に飛び込んだ。


「ハアアァァァッッ」


 しかし、今度は左鎌で簡単に受け止められる。この二合で何かに気付いたのか、リカルドは驚愕の表情を浮かべて頬を汗が伝い落ちる。


「おいおい、まさか」


 唖然とするリカルドに追い討ちを掛けるように、右腕の鎌が持ち上がるが、あまり速度は早くない。

 リカルドは振り下ろされる鎌を避けながら横に回りこみ、無防備な足の一本を狙って思いっきり剣を振り抜いた。細く間接の部分を狙った一撃は、土で固められたゴーレムなど容易に打ち砕く、そう考えられた。


「ちっ、やっぱりかッ」


 だが、実際はリカルドの腕の筋肉が盛り上がるほど力を入れても、土で出来た足を砕く事が出来ずにいる。リカルドは舌打ちをすると、半分ヤケクソ気味に壊れなかった足を蹴って、その反動でレオの近くまで退いた。


「どうなってる」

「ありゃ、物理耐性持ちだな。俺は余り役に立てそうもない」


 物理耐性というだけならそれほど珍しいものではない。硬い魔物は大抵そう言えるだろう。ただ、リカルドほどの実力者がそう言わざるを得ないほどの耐性を持つ魔物は稀である。

 しかも、それが何の変哲も無い土から形成されているのだ。


「ただの土をそこまでの代物に変えたのか」

「あぁ。媒介に使った玉が凄いかは分からないが、ミレイユさんは超一流の呪術師だ」


 両手の鎌を振り上げて威嚇しながら近付くサジャに対して、レオを護るようにリカルドが前に立つ。二人の前に巨大なゴーレムが立ち塞がった。







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