第五話
レオとエルザはオークリィルの宿屋の一室で横になっていた。エルザは少し前から横になっていたが、レオはたった今着いたばかり。
理由はやはり中々動こうとしないタウノのせいなのだが、そこはグウィードが無理やり担いできたので、結局は数十分程度の遅れで済んだと言える。
「ゆっくり休んで下さいね」
そして最後まで二人を見ていたマリアが部屋を出くと、しばらくしてレオが首を触りながらベッドから身体を起こし、隣のベッドを覗く。その視線の先には暢気に眠るエルザの姿。
グウィードから殴られて本当に気絶したのか、それとも気絶した振りをしていたら眠ってしまったのか。
レオはエルザのベッドの横に移動すると、労わるような優しい手つきで眠るエルザの顔にそっと触れる。
「……ッ、ぷ、ぷはっ、はぁはぁはぁ。何っ、何事ってレオかぁぁーー。う~~っ、もう少しで巨大肉まんが食べられる所だったのに~」
勢いよく身体を起こして現状を把握すると、息を止められた事より夢での食事を邪魔されたことに怒るエルザだが、レオはそんなエルザを無視して衝撃の事実を伝える。
「息止め記録更新だな」
「えっ、本当っ。良かった~、これで今まで特訓してきた甲斐が……っ無いわよっ」
基本的にボケであるエルザが突っ込む。しかも乗り突っ込みである。『突っ込みと常識を知らないとボケは活かせない』というのがエルザの信条らしい。まあ、どうでも良い話である。
だが、少し騒ぎすぎたのか誰かが部屋の扉をノックする音が響く。レオは夜更かしする子供の様に素早くベッドに潜りドアに背を向け、エルザは寝ようと思えばいつでも寝れる娘だ。
「まだ起きていないか。ふぅ、父上にもう少しキツク言っておかなくては」
部屋に入っていたイーリスは、ベッドに二人が寝たままなのを確認すると静かにドアを閉めて出て行った。
「少し大声を出しすぎだぞ」
またベッドから起き上がると、今度を声を押し殺してエルザに注意を促す。大声を出させた張本人ではあるが、そんなことは気にしてない。しかし、エルザは返事をせずに寝息を立てたまま。
レオは一瞬呆れた顔をすると、無言で握り拳を振り上げて容赦なく振り下ろす。
「さ、さすがに冗談よ?」
「ああ、分かってる。俺のも冗談だ」
振り下ろされた拳をエルザが片手で押さえると、引きつった笑顔を見せながら起き出し、そう返したレオではあるが、エルザが手を出していなければ確実に顔面にヒットしていた。横になりながら片手で止められた、という意味では冗談半分なのだろう。
大きく伸びをするエルザを見ながら、レオは自分が寝ていたベットに腰掛け、先ほどの模擬戦のことを訊ねた。
エルザもレオと向かい合うようにベッドに座る。その表情は真剣そのもの。戦闘に関連したことでエルザは嘘をつかない。
まあ、冗談を言ったり相手を挑発したり、地でバカな事を口走ったりするが、それでも最後以外は時と場所を弁えている。
「それで、どうだったグウィードさんは?」
「力、技、反応、そんなに動いてないし全然本気じゃなかったけど完璧。前の時代でもそうそうお目に掛かれないレベル。あの投擲は切り払われると思ってたけど、風圧だけで落とされる何てね。最後のはちょっと分かんない。魔法使った感じはしなかったし、魔道具か先天性のものかそれ以外か……。まあ、私の全盛だったら面白いんだろうけど、今なら本気を出したところでねぇ」
少し残念そうに肩を竦めるエルザは、前世の力をそのまま全て引き継いでおらず弱体化している。それでもイーリスとなら渡り合えるほどの力は持っているし、今の自分に少し不満を持って昔に近づけるよう影の努力も惜しまない。
先ほどの模擬戦を見れば分かる通り、エルザは戦うことが好きなのだ。
そのエルザがグウィードをそう評した。恐らく本気でそう感じたのだろうし、レオもほぼ同意見である。
だが、エルザの言った通り模擬戦でグウィードは本気を見せておらず、そんな中での予想は当たらない可能性もあったが、それはそれで構わないのだ。別にレオ達は詳細なデータを取っているわけではないのだから。
「それはそうと、お前いつもより練り上げてただろ」
レオにそう指摘され身体をピクリと反応させると、ちょっと気まずそうにエルザは笑みを浮かべる。
「あはは、ごめん。ちょっとやる気が出すぎて、変えすぎちゃったみたい」
魔力と気の練り上げを上手く身につければ、魔闘士は格段に強くなれる。つまり、わざと練り上げを不十分にすれば、それだけで魔闘士は弱体化するのだ。
エルザはそれを調整することで本当の力を隠していて、今回の模擬戦では本人の言うとおり、やる気を出しすぎた事で設定した今現在のエルザより強くなってしまったのである。
エルザに誤られたレオだったが、もともと咎めるつもりはなく、模擬戦の時の強さを現在の基準に変えるよう伝えると、グウィード達の話に戻す。
「恐らくあのメンバーで一番強いのはグウィードさんだな。それに全力では無いし他にも隠し玉が有るとして、連携は良さそうないいチームだな。まあ、俺が敵だったら勝てない相手というほどでもないがな」
レオがそう評し、これはエルザも同意見だった。
エルザの時代でも最強の部類に入るグウィードだが、魔王との決戦ならそれ以上の力の持ち主が複数居ないと相手にならないのだ。今回の魔王のことは知らないエルザだが、グウィードと一対一で戦える四人でレオに挑んだからこそ分かる。
久しぶりのシリアスモードで疲れたのか、エルザは勢い良く立ち上がると机に置かれた水をコップに注いでがぶ飲み。高級宿らしく魔道具で冷やされた水は冷たく、身体の隅々まで浸食している気になる。
「ぷはぁぁーー。そう言やさ、時代も変わったよね~。私達の頃と違って、巫女の意味が余り無いんだもん」
もう一杯自分の分とレオの分の水を注ぎながらしみじみと呟いた。
エルザがそう言うのには訳が有る。先程グウィードがパーティーの中で一番強いと言ったが、これこそがそもそも可笑しいのだ。
それは『巫女』であるマリアが一番では無いということ。
そもそも巫女とは女神に祈る事だけが仕事ではない。本業は女神達の様に魔王と戦って倒し人々を守ることであり、「世界最強は誰?」と聞かれれば「巫女」と答えるのが、エルザの時代では当たり前だったのである。
「今じゃ、象徴だな」
マリアは能力も才能も悪くは無いのだが、それを鍛え上げるということがまだされていなかった。
巫女だからと言って、特別な力がある訳ではない。幼少から才能のある娘を鍛え上げた最強の戦士、それが巫女なのだ。その為、エルザの時代は近衛師団の全兵力数万を囮に、巫女四人で直接魔王を討ちに出たのである。
どうやらそこで話は一段落し、エルザは人の気配を感じないドアを見た。今度は普通に話しているので、先ほどのように誰か来るのかと待っていたが、幾ら待っても来ないからだ。
「マリア達来ないねー」
「それじゃ、出てみるか」
レオ達は水を飲み干して立ち上がると、自分達では絶対に泊まらないであろう豪華な部屋を後にした。
◇◇◇
「何なんしょ、この騒ぎは?」
階段を降りて宿屋のロビーに来ると、そこは人、人、人の山であった。まあ、予想するのなら、マリアを見に来たといった所だろうが、それにしては人が多すぎる。
「だから、何度も言ってるだろ」
その人集まりの中心から、グウィードのどこか疲れたような声が聞こえてきた。
「大所帯になっても移動が難しくなるだけで、これ以上入れる訳にはいかねぇんだ」
グウィードの言い分に周りからは不満の声。
どうやらこのロビーに集まってる人達は、マリアの仲間に加わりたいらしい。
「ここに連れて来た二人は、ここで加わったらしいじゃねえですかっ。何であんな弱そうな奴らが良くて、俺達はダメなんですかッ」
周りからも「そうだそうだ」と賛同の声が上がる。
どうやら問題は、当初のメンバー以外で近衛師団にすら所属してないレオ達が加わったことで、自分達も入れるのではと考えた人達だった。
一体、何処から情報が漏れたのか。何てことない、騒ぎを起こしている中の誰かがマリア達の会話を盗み聞きしていただけのこと。
まあ、それでもマリア達視点でエルザの様に「魔王を倒す」という意気込みが有れば、それはそれで仲間に加えることは出来ないが、気持ち的には嬉しかったかもしれない。
ただ、ここに集まった人達には魔王を倒すという目的より、巫女の仲間に加えてもらって歴史に名を残したい、自慢したい等の欲望や野望がありありと伺えた。
「どうやら、観光気分らしいわね」
そんな雰囲気はマリア達だけでなくエルザにも伝わり、ロビーの人達を見下す様に冷たい視線を送る。
「……人の事言えないぞ」
もっとも、レオ達も野次馬としてこの旅に同行しているので、集まった人達の事をそんなに言える立場では無い。
レオにそう指摘されて、エルザは頬を少し赤らめ二度三度指で掻いた後、わざと話題を逸らすかのように大きな咳をした。
「あっ、エルザさん、レオさん気が付きましたか」
その咳が聞こえたのか、レオ達に気付いたマリアが近くに寄ろうとしたが、それは周りの人垣に阻まれて出来ない。
マリアがレオ達の名前を口にしたことで、レオ達が担ぎ込まれる姿を見ていない人達も、二人が新しい仲間だと気付き睨み付ける。
「それでマリア、これは一体どういう集まりだ?」
レオの発言を聞いてロビーはざわめき出した。
それはレオがマリアを呼び捨てにしたことにある。普段、マリアを呼び捨てにしているイーリス達ですら、公の場や第三者が居る所では様付けなのだ。無礼以外の何物でもない。
「それが、皆さん私達に同行したいとおっしゃるのですが」
しかし、困ったように笑いを浮かべてそう答えるマリアは、特に気にした様子もなく、むしろ気兼ねなく話してくれる二人だからこそ好ましいと感じていた。
「おいっ、女。どうやって同行を許可してもらったんだ」
エルザの近くに居た男が、詰め寄らんばかりの勢いでそう言い放ち、それは他の人も聞きたい事。一斉にエルザへと視線を向ける。
「え~、私~?」
エルザは思い出してるかのように腕を組んで「う~ん」と唸った。
今エルザが考えているのは、この人達をどうやって追い返すかである。
エルザがマリア達に同行を許可させた方法を言ったところで、それを聞いた時点で二番煎じで不可能だと気付くだろう。そうなれば、先の様にゴリ押しを続けかねない。
視線を周囲に送り何かいい方法を思いついたのか、一瞬瞳を怪しく煌かせるがエルザだが、それに気付ける者は居ない。
「べ、別に私は四聖会にお金を寄付してもダメだったからって、生きたプアッフルを送ったり何て全然してないわよ。本当よっ」
エルザは少しあたふたとしながら答えた。
その言い方は説明口調でかなり怪しい。少し考えたら何かが可笑しいと気付くだろうが、エルザが言い終わるや否や、人垣で姿は見えないが一人の男が声を上げる。
「それなら俺はそれ以上にレアな獣を捕まえてやるっ。そうしたら歴史に名を残す巫女の仲間入りだっ」
そして直ぐに扉を蹴破らんばかりの音を立てて宿を飛び出して行く。それを皮切りに「俺も俺も」と我先に宿屋から飛び出していった。
その場には展開の速さに唖然としているマリア達と、満足げなエルザだけが残っていた。
「ん? 所でレオは何処だ?」
つい先までエルザの隣に居たはずのレオの姿が見当たらず、もしかしたら人波に浚われて店の外へ追い出されたのかもしれない。
イーリスが外の様子を見てこようと動く前に、姿の見えなかったレオが扉を開けて外から戻ってきた。
「あら、歴史に名を残したい人。プアッフルよりもレアな獣は見つかったのかな~?」
「まあ、バカは沢山釣れたな」
そうレオが外に出ていたのは人波に浚われたからではない。
最初に声を上げて出て行った男こそがレオだったのだ。考える暇を与えずに誰かが飛び出せば、先を越されると思い何も考えずに出て行くだろう、とレオは考えて実際その通りになったのである。
「で、ですが何時の間にそんな打ち合わせを?」
タウノが見ていた限りでは、二人を見つけてから二人が会話をしてる様子は無かった。もちろん、この場に来るより以前ということも考えられるが……。
「打ち合わせ? そんなのしてないよ」
だからこそ、今の発言にマリア達は驚いた。あれほど息ピッタリな行動にも関わらず、打ち合わせをしていないと言うのだ。
「周りを見たときにレオが移動してたし、私に釣らせろって事かと思って」
「いや、お前があの手以外思いつくとは思わなかったし」
互いが互いの思考を理解しあう。グウィードは模擬戦での二人の連携の良さに納得がいった。
「しかし、あの人達はわざわざあんな説明口調なことを言う人が居るとでも思ってるのか?」
それにマリア達は苦笑いで返すしかない。
マリア達もレオが帰ってくるまで、特に疑問を抱かなかったのだから。むしろ疑問を感じさせるよりも早く、レオが叫んで飛び出すことが一番大事だったのだろう。
しかも、プアッフルという獣自体が珍しく、余程の運が無い限りでも出会えない生物で、それ以上にレアな生き物と言えばそれこそ数十年は掛かる年月だ。
そして最後に、巫女の仲間に入って歴史に名を残す。彼らにとって美味しい餌をちらつかせたのだ。
「しかし、嘘とは関心せんな」
「あらぁ~、嘘は言ってないよ。私は『してない』って言ったし、『本当だ』って念まで押したんだから」
そう言いながらも顔は笑ってるグウィードに対し、エルザも堂々と胸を張ってそう答えた。
「そうですね、はいっ。確かにエルザさんは『してない』って言いましたもんね」
マリアは嬉しそうにエルザを褒め、エルザも頭に手を置いて満更でもなさそう。
しかし、それ以外の人は隅の方に集まり……。
「ち、父上、マリアが」
「安心しろイーリス、この世界にはエリクサーという秘薬があるらしい」
「しかし、果たして効果があるのでしょうか」
「あれは質の悪いウイルスだ。元凶を隔離する必要がある」
マリアがエルザに毒されてるのを嘆いていた。
「こら、そこーー何を話してるーーーー」
どたどたと足音荒くエルザが近寄ってきた。その形相は老い先短い老人に止めを刺すか、地獄からの使いだと勘違いされそうなほどである。
「「「冗談だ(ですよ)」」」
「えっ、冗談?」
男三人は声を揃えて言い放つが、それに驚いた人物が一人。
しかし、向かってくるエルザの形相を見ると、慌ててレオ達に合わせようと何度か頷いてみせると、それを見たグウィード達は笑い出し、マリアも楽しそうに微笑んだ。
◇◇◇
外は太陽が沈み既に夕食の時間。
今日はレオ達が仲間になった初めての夕食というこもあり、多少豪勢に奮発している。食事時の話としては相応しくないが、話の内容は先ほどの戦いにおける分析の結果についてだ。
「先ずはエルザだが、あのスピードには正直驚いた。それに近接戦闘の動きや度胸も考えて、ランクB+かA-といった所だな。スピードには驚いたが、それ以外はまだまだ甘い。特に顔面みたいな小さい的よりも、当てやすい腹辺りを狙った方が良いな。それとエルザは右利きだろ、そっちの動きと攻撃が多かったぞ」
グウィードはそこまで言ってお茶で喉を潤す。
それを聞くエルザの様子が真剣なのは、本気で戦っていないが技量は隠していないからこそ、グウィードの分析を聞く必要があるのだ。
そして、やはりその価値はあった。右の動き。無意識ではあるが、弱体化したことで力の入る利き腕を良く利用し、また利用しやすい状況を作る為に動いてしまっていたのだろう。
エルザは一度深く頷くと、右手の握り拳を抑え込むように左手でそっと包み込んだ。
「次はレオなんだが……補助に回ってたからな、正直良く判らん。まあ、中級魔法も使えて、そのタイミングも良かったことだし、B-はいけるだろう。接近戦の能力は分からないが、何ならもう一度やるか?」
次はレオの番なのだが、自分が言ったとおり補助に徹していたレオを、ただそれだけで実力を見ていいのか迷い、グウィードは再戦するかどうかを訊ねた。
レオが魔術師なら近接能力は関係ないのだが、レオは魔法剣士。剣士の部分を見ないので評価するのは悪いと思ったのだ。
「いえ、俺は魔法でエルザに勝ってますけど、接近戦ではエルザの方が上なんで、それ以下と考えてもらえばいいです」
しかし、レオはそう言って辞退した。
エルザの方が接近戦に強いのは事実だが、再び模擬戦の為に移動を遅らせるのは得策ではないと考えたのである。先ほどの仲間騒動を聞いて、他所の街から同じことを考えた人がやってこないとも限らないからだ。
ただ、辞退されたグウィードは少し残念そうで、これから成長する若者の実力を見ておきたいのかもしれない。
「ですが、二人は個々で戦うよりも一緒に戦った方が良さそうですね」
「そうですね。チームワークも凄く良かったですし」
「さっきの騒動を見ても納得できる」
今度はタウノの分析による評価で、マリアとイーリスもそれに同意した。
あの戦闘において、レオかエルザが個々で力を出した場面はそれほど無く、常にどちらかが相手を庇いサポートしていたのだ。
そして、それよりも簡単に思い浮かぶのは、先ほどの目と目で通じ合う以上の出来事。
「正にベストパートナーって感じだな。もしかしたら前世で何か有ったのかもな」
どこか茶化すように喋るグウィードを、レオもエルザも否定することが出来ない。
恋人関係の話なら即座に否定出来るが、確かに今の所はベストなパートナーであり、前世において何か有ったのも事実。微妙に嫌そうな顔をする二人とは別に、眉を顰めて不思議なモノでも見た様な、何とも言えない表情を浮かべる人物がいた。
「イーリス、どうかしたのか?」
「い、いえ……その、ただ父上が前世を信じるのは、ちょっと不似合いと言うか……」
目をキョロキョロとグウィードに合わせないようにしてポツリと呟き、それを聞いたタウノとマリアは思わず噴き出してしまう。
「確かにそうですね。今を楽しめ的なグウィードさんがそんな事を口にするなんて」
タウノが言ったとおりグウィードは今この時を楽しむ性格で、過去は引き摺らずに知れぬ明日に苦悩するということは余りしない。もちろん、それが部隊を率いたり立場の有る場合は別として、グウィード個人とすればそんな性格である。
そしてそれは本人も分かっていることだが、真実でも笑われるのは面白くないらしく、不機嫌そうに腕組みをして答えた。
「何を言う。俺も四聖会に身を置いてるんだぞ。それ位考えない方が可笑しいだろ」
四聖会とは巫女や近衛師団が属する、女神を崇める為に創立された組織である。
四聖会によって唱えられ、もはや世界の常識となった考え方に『四天精論』というものがある。
この教えは四柱の女神の力『火水風土』が現世を創造しているというもので、その中に『ハル様は亡くなった者達の魂を集め、再び生を与える』という一文がある。
その為、四聖会に身を置いてるグウィードが転生という発言をしても、何ら可笑しくは無いのだ……建前上は。
「それも、そうですね」
言い訳のようなグウィードの口調が面白かったのか、未だに微笑んで頷くマリアはこれでも表向き四聖会のトップの一人である。
そして、いじけてみせたグウィードを全員でなだめると、今までの生活や学園生活など世間話に華を咲かせたが、レオとエルザも疲れているだろうということで、いつもより早い就寝となった。