第百十六話
シアンとの戦いが始まり幾度かの攻防を交わしたが、レオ達は闇の防壁を破るどころか、戦闘が始まってからシアンを一歩たりとも動かす事が出来ないでいた。
しかし、レオとパーラ、エルザの三人の連携によって、学者風体のシアンに致命傷を与えた事で、最初の約束通りシアンが本来の姿を現したのだった。
「この姿だと初めましてっ、私がシアン・グランセットよ」
闇から現れたシアンの姿を見て、レオ達は戦闘中にも係わらず一瞬惚けてしまう。暗闇から純白の髪を舞わせて現れたシアンは、それ程現実離れしていたのである。
だが、それも数回の瞬きをする間のことで、直ぐに武器を強く握りなおす。
「可愛い子の見た目を選んで、自分だって言い張ってるんじゃないでしょうねっ」
今のシアンは見た感じ魔族という要素は感じられず、人間と言われれば納得するだろう。
エルザの発想が面白かったのか、シアンは二度三度と目を瞬かせると、友人と話しているように親しげに笑った。
「あはは何それ、そんなことする訳ないでしょー」
笑いすぎて浮かんだ涙を指で拭う。その時、何かに気付いたのか曲げた指をじっと見つめて滑らかに指を動かす。
「いや~、でもやっぱ自分の身体だと馴染むなぁ。薄皮一枚もないって感じ」
更に手や肩など身体の動きを確認して頷く。レオ達には前との違いが分からないが、本人からすれば違うらしく、それは戦うレオ達からは不利益な事である。
しかし、何も悪いことばかり起こるわけでは無かった。ここでヘルヴィの魔法陣の準備が終わったのだ。
『父なる大地が命を育み、母なる大海が命を生み出す』
リリーの背中から手を離したヘルヴィは、パーラを呼んでリリーを護るように彼女の前に立つ。
「ヘルヴィさん、無理は為さらず」
「ふふっ、それは聞けないかもしれないわね」
ヘルヴィは魔力回復薬を飲み込むと、パーラとすれ違い際に差し出した手と手を合わせ、彼女が消費した分の魔力を渡した。
当然の話しだが回復薬を沢山飲めばお腹一杯になってしまい、エルザのように動き回るのなら、それは運動能力を低下させる恐れもある。その為、魔力を多く溜められ、直接敵と斬った張ったは出来ないヘルヴィが、その役割を担うことになったのだ。
「エルザちゃんとレオ君も」
そして、二人の背中にも触れて同じように渡していくが、今はまだそこまで減っていない。ただ、戦闘中は何が起こるか分からないので、早め早めの補給が必要となるのだ。
その様子を見ていたシアンだが、彼女にとって気になるのはレオ達の魔力回復よりも、彼らの背後で何らかの準備を行っているリリーだった。
「ふ~ん、そっちは交代で何かしてるってわけね。全員の力を一つに合わせてって奴かな……まぁ、私が邪魔するけど」
「そんな事、させるわけないでしょ」
リリーと眼差しを合わせて、妖艶にも思える笑みを浮かべたシアンの視線をエルザが遮る。シアンはそのままエルザ、レオとヘルヴィを見詰めた。パーラが下がった為に今戦うのはこの三人である。
「さっき人間の男だった私と戦ってみてさ、私がどんな能力を持ってるか分かる?」
「闇を使った空間に命を一杯溜め込んで、それを盾に使ったりとかじゃないのかしら」
「ん~、それも間違いじゃないんだけどね」
後方から戦いを見ていたヘルヴィの答えだったが、それは正解ではないらしく、シアンは軽く笑って否定して見せた。
今始めてシアン本来の姿に戻ったのだから、能力と言われてもピンと来ないエルザだが、彼女の言い方では先ほどの学者風体だった時でも能力が分かるらしい。こういったことはレオかパーラの役割なのだが、既にパーラは後方で魔法陣作成の準備に入っている。
「……取り込んだ生物の能力をそのまま扱えるってことか」
「へぇ、正解っ。よく分かったね」
エルザが投げかけるよりも早くレオが答え、シアンは両手を一つ叩き鳴らしてコクリと頷いた。
人間には魔者のような特殊能力保持者は少なく、先ほどの戦いでも別段特別な能力を発動してはいなかった。その中でシアンの能力を推理する事が出来るとすれば、学者風体の時に人間の魔法を使ったこと。レオはそこから推測したのだ。
「でもこの姿になるとちょっと違うんだよね」
「それじゃあ元の姿に戻ったらどうなるのか、見せてもらおうじゃないのッ」
そう言いながらシアンが手の平を上に向けて、挑発するように指で手招きをすれば、即座にエルザが乗って駆け出す。
シアンとの距離を縮めたエルザだったが、いきなり攻撃するようなことはせず、彼女を中心にして周囲を回り、惑わすように動きながら隙を窺っていた。そして、ヘルヴィはリリーの護衛に、レオはエルザが攻撃しやすいように魔法による援護を行う。
だが、レオの魔法ではシアンの闇を突破することは出来ない。
「見せてもらうって言ったけど、本当に見てるだけ――」
「……ッ」
シアンが全てを言い終える前にエルザが飛び掛る。今回は挑発に乗ったのではなく、闇靄の流れを見極めてタイミングを計っていたのだ。
そして、シアンの右斜め後ろから振り下ろされた刃は、闇が防ぐ素振りすら見せずにシアンの肩口から切り裂いた。
「……やっぱり効果はないか」
斬りつけたままシアンの正面へと移動し、振り向いたエルザの視線の先には、斬った手応えは有ったものの全く傷を負っていないシアンの姿。傷が回復しているのではなく、始めから傷など負っていないというように見える。
思わず舌打ちをするエルザにシアンは反応を示した。
「ねぇ、命に貴賤の差はあると思う?」
「何言ってるの? そんなの有る訳ないでしょ」
「そうだよね~」
何か考えるよりも早く出たエルザの答えに、シアンも同意するように頷く。エルザからすれば、敵に同意を示されても良い予感はしない。
そして、その予感が正しいことを示すように、シアンは楽しそうに笑いながら指を一本だけ立てた。
「ネズミ一匹」
「……は?」
「今の一撃を私の代わりに受けて死んだのが、人間界に来て適当に入れたネズミ一匹ってこと。貴方も言ったでしょ、命に貴賎の差はないってね」
その言葉の意味を理解し、エルザのみならずレオとヘルヴィも眉を顰める。別の生き物を身代わりにした事を不愉快に思ったのではなく、シアンの言葉が本当なら彼女を倒す方法が、リリーの魔法陣に頼らざるを得なくなってしまうからだ。
確かにそれを主軸に戦うことを決めていたとは言え、戦闘中に新しい突破口でも見つかる可能性も考えていたのだ。しかし、現状打てる手の限られている彼らでは、それも難しそうだった。
「そして、取り込んだ肉体は個別のものだから、さっきのナイフに毒が塗ってあっても他には伝染しない。私の身体が表に出たからって殺せないことは理解できた?」
確かに命の重さに違いは無い。だが、これがシアンを倒したと思った瞬間にネズミの命で生き返ったのだとしたら、不条理なものを感じてしまうだろう。
苦々しく表情を顰めるレオ達とは裏腹に、シアンは両手を組んで頭の上に挙げ、清々しそうに深呼吸をしながら大きく伸びをする。
「それじゃあ戦いを再開しよっか」
その仕草で胸が前に出され、一同の視線が一瞬そこに集中するが、それに気付いてもシアンは笑って両手を解き、構えることなくダラリと身体の左右に下げた。
「直接の斬った張ったは好きじゃないけど、人間に遅れをとってたらダナトに笑われそうだから、今度は私本来の戦い方を見せてあげる」
そう言ったものの彼女から攻める気配は感じられず、レオとエルザ、ヘルヴィの三人は軽く視線を交わす。言葉に出さなくとも、それだけで誰が動くかは直ぐに決まったのだ。
「フレイムエンウェイブ」
動いたのはヘルヴィ。魔力を補充した上でなら前世と同じように魔法が使えるので、無詠唱で生み出された炎が高い波となってシアンに襲い掛かる。
熱波は部屋中に充満し、レオ達は焼け付きそうな顔を腕で庇いながら、波の奥へと消えていったシアンを見落とさないように視線を送っていた。すると百人近くは飲み込めそうだった大波が、何かに飲み込まれるように瞬く間に小さくなっていく。
「背後警戒してっ」
「分かってる」
当然レオ達は先ほどと同じように、シアンが闇で空間を繋げてそこに飲み込ませたのだと考えた。しかし、何時まで経っても周囲に闇が広がる気配はなく、警戒を続けたまま炎はその姿を完全に消したのだった。
「ふふっ、驚いてるねー」
炎の向こうから姿を現したシアンは、左手を前に突き出しただけで闇を展開してはいない。ただ、新雪を思わせるような白い左腕は別物に変わり、水が腕を模ったように青く透明で、手の平の部分は渦をなしていた。
そして、左手を引き寄せるのと同時に、振り上げた右腕をレオ達に向ける。一瞬、闇靄が右腕を包んだかと思うと、振り下ろした時には左腕とも違う別の腕が付いていた。
「これを避けられるかな?」
「なっ」
手の甲側に向かって細い青色の鱗に覆われた右腕は膨らみ、レオ達に向かって鱗を弾き飛ばす。レオはその見事な色合いの鱗と攻撃方法に思い当たる節があり驚きを見せる。
「まだまだ」
前に突き出したまま鱗が無くなった右腕を再び闇靄が包み、今度は薄赤と白の混ざった太く大きく頑丈そうなハサミに変わった。
そして、飛んでくる鱗を避けているリリーとパーラに狙いを付けると、大きく開いたハサミを徐々に閉じてガチリと力強くかち合わせる。瞬間、発生した衝撃波が轟音を響かせながら、リリー達に向かって一直線に突き進む。
「させないっ」
射線に割り込んだエルザは腕を交差させて衝撃波を受け止めたが、それは打ち落とすことが出来なかった証でもある。ただ、ジリジリと後退させられながらも、このまま耐え抜くことは出来そうだった。
しかし、一番強いエルザを抑えられた事で、シアンは笑みを浮かべ次の行動へと移る。両手を交差させ胸元を押さえながら背中を丸めると、闇靄が服の大きく開けた背中に纏わり、そこから純白の翼が生えたのである。
その見た目は彼女の容姿も相俟って、おとぎ話に出てくる天使のようだった。
「私に付いて来られる?」
だが、それに誰かが見惚れるよりも早く、シアンが微笑を浮かべて空を翔る。未だ耐えるエルザを回り込みながら避けて、室内とは思えないほど高い天井近くまで飛翔すると、リリーに身体を向けて翼を広げ二度三度大きく羽ばたいた。
すると無数の小さな空気の刃が発生し、雨のように降り注ぎながら空間を切り裂いていく。
「――】タイダルウェーブ」
そこに立ち塞がるのは、魔力の回復薬を再び飲んだヘルヴィの放つ青い波の壁。空気の雨が波を白く泡立たせて、巨大な波は空気を取り込みながら高さを増そうとし、両者の激突は一進一退だった。
しかしその最中、波の中から何かが飛び出す。それはレオの愛剣ニーベル。
シルフィンスによってレオの右手と繋がったそれは、投擲投擲を繰り返して空気の雨を避けるように迂回し、空中で止まっているシアンを背後から襲い掛かる。
「甘いよっ」
だが、それを察知したシアンは翼を大きく広げると、大袈裟に半回転することで竜巻を発生させて前面の波を抑え、後方から迫り来る剣にも対処することが出来たのだ。
シアンはハサミに変形させた右手で、レオの操るニーベルと打ち合う。
ただ、比べる相手が悪いかもしれないが、直接の戦いではヘイムほどの脅威は感じられない。しかし、レオも遠距離で剣を操っていることもあり、普通に振るうほどのキレは無かった。
「ふふっ、挟んであげるっ」
そして、レオが振り下ろしたタイミングを見計らい、ハサミを大きく空けてガッチリと挟み込もうとした。
「あんまり私達を――」
だが、至近距離で聞こえてきた声に、ハサミを閉じることなく急いで振り返る。そうしなければ不味いと予感が走ったからだが、案の定シアンの視界に飛び込んできたのは、エルザが至近距離で右拳を振り抜くところだった。
「甘く見ないでねっ」
シアンがレオに向かって放った言葉の返しと共に、重い一撃がシアンの腹に叩き込まれた。その衝撃にシアンは身体をくの字に折り曲げて吹っ飛び、天井にぶつかってそのまま落下し始める。
一方、殴った時の反動もあり、一足先にエルザは地面へと戻ってくる。
「……いったぁーー」
だが、肩膝をついて右手を押さえ痛がってみせたのは、シアンを殴り飛ばしたエルザの方。
エルザから遅れて地面近くに落下したシアンは、空中で一回転して体勢を整え翼を一羽ばたきすると、ゆっくりと優しく地面に降り立った。
「跳んで接近して来たら気付けたと思うから、あの波に乗って接近したのかな。面白いことをするねー」
「くっ~、お腹に何を仕込んでるのよ」
「ん? これのこと?」
シアンが服をたくし上げてお腹を曝せば、そこには割れたグレーの腹筋に青い鱗が並んでいた。彼女の素肌と色合いが違うことから、腹回りを入れ替えたのだろう。
「手とか翼とかと同じで私サイズに合わせてあるから、この魔獣のお腹が引っ込んでて助かったし。よく変化させる部分は露出してあるけど、もしかしたらお腹の部分から服が破けて、胸が見えちゃうような格好で戦わなきゃだったかもしれないから」
困ったと笑いながら肩を竦めていると、すべすべで綺麗な引き締まった腹筋が現れ、それを確認してからシアンはたくし上げた服を下ろす。
気がつけば腹回りだけでなく両腕や翼の部分も元に戻り、最初に姿を現した時のシアンに戻っていた。
「取り込んだ生物を部分的に表に出して戦えるのか」
今までの戦いの流れを見てレオがポツリと呟く。
「……強いな」
「弱いよ、というよりも戦いに向いてないし。私はただ強い道具を振るってるだけ、それ位気付いてるんでしょ」
だが、強いと言われたシアン自身が即座に否定する。
確かに彼女の言う通り、エルザ達にはシアンが戦い慣れをした者の動きでないことが分かっていた。
だがそれは、シアンも同じだろうが比べる相手がヘイムやダナトだったからで、身体の切り替えや戦況の判断力に瞬発力など、弱いと呼べるものではないことも分かっている。
ましてや魔族と人間とでは基礎能力が違うのだ。その上強い道具を適切に使われてしまえば、実力の差は歴然だった。
「でも負ける気はしない。盾に関しても防御力の高い魔獣から順に置いておけば、人間には一匹目すら簡単に突破出来ない、絶対の盾になるからね。そして――」
シアンは余裕の笑みを浮かべて一歩リリーに向けて足を踏み出す。それは威圧した一歩ではなく、まるで散歩をしているかのような軽い足取りで、二歩三歩と進めていく。
当然リリーへの接近を防ぐために三人が立ち塞がった。
「スプラウフルエクザキュート」
「エンブレイスクァック」
ヘルヴィは巨大な氷の狼を創り出し、レオとエルザは彼女の邪魔にならないよう、複数の風の弾丸を回り込ませながらシアンの側面に襲い掛かる。
しかし、予想通り上級魔法だろうと闇の盾を破ることは出来ず、悠々と進むシアンの歩みを止めることは出来ない。三人は視線を交わして一つ頷き、同じ効果を持つ魔法の詠唱に入る。
「ディンクスロア」
「ディグランジフィルッソ」
爆発によってシアンの周囲全てを攻撃、盾を無効化しようとしたのだ。
しかし、これも彼女が自身の周囲を闇の球体で覆い包むことによって防がれてしまう。だが、これが狙いの一つだった。シアンが闇に包まれてから、リリーとパーラはその場から移動を開始する。
闇を全面に展開していると移動出来ないのか、シアンは爆発が収まるまでその場から動かず、しばらくすると卵が孵る瞬間のように闇に亀裂が入っていく。
そして、顔を覗かせる程度の穴が開いたのだが、次の瞬間ヘルヴィの待機させていた雷がその穴目掛けて一斉に襲い掛かった。
「……あれ? 移動したんだ」
しかし、雷を浴びてもシアンは特に気にした様子すらなく、リリー達に向かって歩みを再開させた。
事前に分かっていて予想も出来たことだが、不死性の厄介さに思わずレオの表情が歪む。
「っ、これは」
「ゴリ押しじゃないっ」
レオと同じ考えに至ったエルザも、毒づきながら短剣を振って衝撃波を飛ばすが、それも闇盾によって防がれる。
ヘルヴィの雷によってシアンを何度か倒せたのかもしれない。しかし、彼女はその都度溜め込んでいる無数の命を代償に、何事も無かったかのように行動を続けているのだ。
「だから言ったでしょ、私は弱い……でも、負ける気はしないって」
エルザの言う通りこれはゴリ押しである。だが、ただのゴリ押しではない。
自分の向き不向きを理解した上で、敵からの攻撃は取り込んだ生物を盾にして無駄に食らわず、無数の命を代償にしての無限行動。そして攻めに関しては、取り込んだ生物の各種能力を的確に使用するのだ。
自身有り気に笑うシアンに対し、ヘルヴィも鋭い眼光を向けると口角を上げて笑う。
「私達も最初から負けるつもりでこの戦いに挑んでいないわ」
「それに、貴女はご自身を弱いと仰いましたけれど、わたくし達人間とは比類なき強者。その魔者と戦うためにわたくし達人類は策を弄しますのよ」
魔法陣発動の為の第三布陣を敷き終えたパーラが、リリーから離れて前線へと戻ってくる。そして声を抑えてエルザに話しかけた。
「エルザさん、貴方の番ですわよ」
「……分かった」
エルザの返事が一瞬間を置いたのは、今自分が戦場を離れて大丈夫なのかという葛藤。だが、結局は魔法陣を完成させなければならないので、その悩みは意味が無いと頷いてリリーの許へと向かう。
「へぇ~」
その動きを視線で追いかけながら、シアンは闇を纏って白目が黒くより紅く輝く瞳と入れ替える。その魔眼により、リリーの術が完成するまで後一つか二つの工程が必要だと理解した。
「その人エルザだっけ、下げちゃって大丈夫なの? 後ろの子を庇うように動いてて面倒だったんだけど、下がってくれるんなら嬉しいなぁ……そろそろ本気で邪魔しとかないとだし」
前線で戦う面子を見回すその表情から、レオ達は挑発しているのだと感じ取った。しかし、その言葉に心乱されるような人物はこの場に居ない。彼らもエルザが抜けた時こそ、踏ん張りどころだと理解しているのだから。
だからこそ彼女の次に強いパーラが、左右の手に剣を持ち一歩前に出る。
「その事でしたらご心配には及びませんわ。エルザさんの二番煎じになってしまいますけれど……余りわたくし達を甘く見ないで下さいませ」
戦いは最終局面に移行しようとしていた。