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中編

「ええと……今更だけど、君なんて名前?」

 

 まずは基本である名前の把握。名前で呼び合うことで互いの距離がぐっと縮まるからな。


「さっきも言った」

「え? さっき? ええと…………」

「座敷童」

「ああっ、そうそう。座敷童。さっき言ってたよね。あはは」

 あれ? 座敷童って妖怪の名前じゃなかったっけ? いやでも妖怪なんて現実にはいないし……。からかってる?


「えー、えーっと。座敷童ちゃんはなんで俺ん家に来たのかな?」

「…………」

「い、家出かな? お母さんとか心配してない?」

「…………」

「あ、あのー……。今日はその……ここに泊まっていく感じ……かな? い、いやっ! 変な意味じゃないんだけど、そのー……」


「…………」

「…………」

「…………」

 

 ダメだ! かんっぺき無視されてる!

 多分あれだ。会話の内容がいけないんだ。今みたいな質問っぽい話じゃなく、全然関係ない雑談でいいんだ。

 雑談だ、雑談。雑談…………えぇーっと、雑談……。

 ……。

 …………。

 ……………………。


「…………」

「…………」


 ダメだぁあああああ! 何話せばいいのか分かんね~~~~!!

 ってか、雑談って何話せばいいの!? 何を話したら雑談になるの? そもそも雑談ってなに??

 今日は天気がいいですね――か? 部屋の中なのに? そもそももう夜なんだけど。

 じゃあ今日は夜空に輝く星が奇麗だね――か? カーテン閉めきっているのに? わざわざカーテン開いて窓開けて言うセリフかそれ?

 

 ダメだダメだぁああ~~。だいたい、見知らぬ誰かと雑談できるようなスキルが備わっていたら、友達の一人くらい作れているわ。

 

 くそう、諦めるしかないのかおっぱいを。しかしどうしても諦めきれぬ。

 などと、自分の頭の中で反省会をしていたら、思わぬ所からチャンスが巡ってきた。

「おい」

「は、はいっ」


「お風呂を用意しろ」


「……ッッ!! た、ただ今っ」

 き、来た! お風呂イベント!!

 まさか相手の方からわざわざこのフラグを立ててくださるとは。

 

 高鳴る鼓動を右手で押さえつつ、お風呂の準備をする。追い炊き機などといった高性能なお風呂ではないので、お湯と水の流量の調節に細心の注意を払い、最高の湯加減を創り出した。

 

 お風呂の準備が出来たことを告げると処女……じゃない。何回間違えるんだ俺は。――とにかく少女はこう言ってきた。


「では私は入るが覗きは厳禁だ。もし覗いたら私の力でお前に最高の〝呪い〟を与えてやる。簡単には死ねぬ。今まで体験したことのない最悪の地獄を存分に味わった後、一生死ねぬ体で世界が滅びるその日までこの世を彷徨い続けるのだ。……分かったな?」


「ハイ」

 これはあれですな。ザ・照れ隠し!

 

 何て事はない。要は『覗くな=覗け』という小学生でも解ける簡単な数式であろう。

 つまり少女は覗かれる事にとてもビビっているのだ。だからあんなちんちくりんなことを言ってしまったのだろう。恥ずかしいならそう言えばいいのに。でも覗くけどな!

 

 では。いざ参らん。

 

 しかし冷静に考えるとこれは犯罪……で、でもっ、ここは覗くのが自然な流れ。それに今は二人しかいないんだし、バレなきゃいいんだ。

 

 でもご近所様に悲鳴が聞かれたら?

 いや速攻で口を塞げばいい。

 ああでもそれだと別の犯罪っぽく……。

 ならいっそ俺も一緒に入っちゃうとか……。

 いやそれだと…………。

 う~~ん…………。

 ……。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「着替えるから今度はお前がお風呂に入れ」

「…………はい」

 覗けなかった。

 

 理由? フッ、そんなもん決まってるじゃないか。

 つまりチキンハートだってことよ。

 

 決してお縄になることが怖かったとか、少女の言う『呪い』にビビったワケじゃあない。純粋に、いたいけな少女の裸を見ることに罪悪感を感じたってことさ。

 

 え? それじゃあチキンハートが理由にならないって? ……あ。

 ……もういいだろう何だって。要は俺が言いたいことは、俺はいつだって紳士だってことなのさ。


 風呂から上がると、少女はどこから用意したのかパジャマ姿になっていた。これがまた可愛い。

 その後少女は俺ん家にあるマンガを読みあさり、ゲームをしたりと俺を無視して大いに満喫していた。俺の方も何とか少女に話しかけてみるものの、その全てをスルーされ、時間はあっという間に流れていった。

 そしてこの一言。


「寝る。電気を消してくれ」

 

 ここだ。もうここしかない。

 少女は俺の了承も得ず、俺の布団で寝てしまった。消灯するのを待たず目を瞑り、数分後には寝息を立て始める。


「(ゴク……)」

 

 いいよな? していいんだよな?

 だいたい布団は少女が寝ているそれ一つしかないんだから、必然的に俺もそこで寝るしかない。そして寝ている時に、寝相が悪くて謝って胸を揉んだり、パンツの中に手を突っ込んでしまうこともあるよな? そう言い訳がきくよな?


「ふ、ふうぅぅ~~」

 これからやろうとすることを想像したら急に下半身が熱くなってきた。一旦落ち着くまで待つか……いや! このまま行ってしまえ!!


「そうだ、ケータイ!」

 せっかくだからパジャマがはだけた姿を写メに撮っておこう。って、なんか俺変態だな。

 いいや! そんなことはない!

 むしろ大学で彼氏彼女いるやつはみ~~んなヤってる! 毎日毎日来る日も来る日も。実際にヤってる方がもっと変態だ! ならば未だヤってない俺は健全なハズだ。

 だがそれも今日までよ。今夜から、俺もその変態の仲間入りだ。


 では。少女よ。遠慮無くご馳走させて頂きます。


「ふふ…………ん?」

 

 あ、れ? 少女がいない?

 し・か・も。

 

 

 何故か、少女が寝ていた所に男がいる。

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