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第三話 選択、そして本当の家族

side 夜絆


「こ…こは?」


目覚めた俺が寝ていた所はベッド。見たものは、白い清潔感のある天井に、周りにはたくさんの機械があり白いカーテンで仕切られている。機械があるということは此処は保健室ではなく…


「病…院?」


たぶんだが急に意識を失った俺を見た保険医が病院に連絡を入れてここに運ばれたのだろう。周りに心拍数を示す機械があるところを見ると結構危ない状況だったようだ


「あれは夢か?それとも…っ!?」


右手に力を入れた瞬間一瞬だが鋭い痛みを感じ、手探りで何かを調べる。ゴツゴツした石見たいなものだ


「まさか…」


かけられている毛布から少しだけ右手を出し、目で見て確認してみるとそこにあったのは赤く濁ったあの時界石があった


「あれは…夢じゃないのか。なら能力っていうのはいっtっ!!」


能力について呟いた瞬間俺の見ている世界が変わった。さっきまで白ばっかりだった周りの色は全て青色のようになり、周りに黄色色のたくさんの線が行き交っていた


「なんだよ…これ!」


慌ててベッドから飛び起きる。だが周りの色は青色と黄色の線があるだけだ。一応物体は黒い線で形作られているので周りのものが見えないわけじゃない。だが急に色が変わったことに俺は驚いてしまう


「夜絆!」


「うわっ!な、なんだ父さんか」


急にカーテンが開き、そこには焦った顔をしている父さんがいた


「なんだじゃない!お前身体は大丈夫なのか!?」


「え…う、うん。今はなんとも無いかな」


実際には周りの景色の色が青色と黄色色に染まっている…いや、父さんは黄色い線が身体中に張り巡らされているように見える。それだけじゃなく頭の部分には赤色の塊があった


(あれは…いったいなんだ?)


「ふぅ、なら安心した。お前が急に倒れたって聞いて吃驚したぞ」


「ご、ごめん」


落ち着いた父さんは備え付けの椅子に座り一息ついている


「謝るなら僕にじゃなくて、太一君や未玖ちゃん達に言うんだね。みんな随分心配してたぞ。それに冬雪と樹理もな」


「…うん、そうだね。ところで今何時?」


「今は夜中の三時ぐらいだね。それがどうかしたかい?」


「いや、単に時間が気になって」


もうそんな時間ってことは俺の命はあと少しということ…みんなに謝るなら明日の朝にでもしないと間に合わないな


「さて夜絆が起きた事をみんなに知らせなきゃな。少し待ってなさい」


「わかったよ」


父さんは立ち上がりそのまま病室を出て行こうとする。そしてあの赤い塊はどんどん大きくなっていくのを不審に思った俺はそれを凝視する。すると何かが俺の頭の中に入ってきた


「ぐっ!」


「っ!どうした夜絆!大丈夫か!?」


入ってきた何かは俺に頭痛を引き起こさせる。そしてある言葉が頭の中に響いた


【なぜ僕は夜絆になにもしてやれないんだ!!】


(これは…父さんの心の声?)


もう一度父さんを見ると赤い塊は無くなり、黄色色の線が張り巡っている状態だ


「だ、大丈夫。少し頭痛がするだけだから」


「そ、そうか?あまり無理をするなよ」


「…わかってるよ」


父さんは病室を出て行った。今のはいったいなんだったんだろう?あの声は父さんの声だった、だけど実際には父さんは俺に大丈夫かという言葉しか言ってない。しかも俺はあれを直感で心の声と感じた


(今はさっきの事を考えるより先にこの状態をどうやったら止められるかを考えよう)


周りが青色の世界になった時俺は能力という単語を言った。ならもう一度能力といえば解除できるかもしれない


「能力…駄目か」


言ってみたが周りは青色の世界のままだ


「なら…解除とか」


解除といった瞬間世界は元の白色中心のものに戻った


(結構安直だな…しかしいったい何なんだろう?黄色の線は父さんの体の隅々まで張り巡らされていた…他に見えた黄色の線は周りの機械に集中していたな)


機械には父さんのとは比較にならない量の黄色の線が張り巡らされていた


「今のは人の心をみることのできる能力みたいなもんか」


俺はそう結論づける事にした。今は情報が少ないし仕方ないだろう


「……」


そして俺は暇になった


「…夜絆」


「なに、父さん?」


再び父さんが病室に入ってきた。何故かはしらないがすごく真剣な顔をして…


「もしかしたらもうお前と話せる時間が無いかもしれない。だからある事を話すよ」


「…ある事?」


不吉としか言いようが無いが実際にはあと半日も生きられないのであながちこれが最後に喋る機会だといっても過言じゃない


「お前は…僕と母さんの本当の息子じゃないんだ」


「…なんか定番的だね。死ぬ前にそれは無いんじゃない?」


死ぬ前に本当の子じゃないってドラマのワンシーンみたいだ


「驚かないのかい?」


「驚いてるよ。でも薄々そうじゃないかって思ってた。だって俺は家族の誰とも似てないしね」


よく父さんと似ていると言われてるだけで実際にはあまり似ていない。白髪になってからは余計に親子に見えなくなっている


「ハハハ、少しだけ僕に似てるんだけどね…まぁ夜絆の本当の父親は僕の双子の兄なんだだから。僕とも似てたんだよ」


「…じゃあ父さんは伯父さん?俺はてっきり捨て子って言われるかと思ったのに…」


「そんなドラマみたいなことは無いさ」


今の段階でも十分にドラマっぽいんだけどな…


「で、父さんのお兄さんは今どうしてんの?」


「…死んだよ」


「えっ?」


「夜絆の五歳の時だったかな。兄さんの家に強盗が入ったんだ」


「…父さんは強盗に殺された?」


「…ああ、兄さんは刃物を持った強盗相手に夜絆を守ったんだ。警察の人教えてくれたんだが、兄さんの遺体はお前を庇うように覆い被さっていたらしい」


「へぇ、…でも何でかな?そのことをまったく覚えてないや」


「たぶんだけど小さい時の夜絆は無意識にそのことを忘れたんだと思う。僕が君を引き取った時には夜絆は僕を見て父さんだと思い込んでいから…」


「そう言われてみれば…」


だいたい個人差はあると思うが小さい時の事をほんの少しぐらいはみんな覚えている。でも俺にはどう遡っても小学生も頃までしか思い出せなかった


「俺の母さんも違うの?なら本当の母さんは?」


「ああ。夜絆の母親はお前を生んですぐに亡くなったんだ…身体があまり丈夫な人じゃなかったんだ」


「じゃあ俺は両親の顔をどっちも覚えてないんだ…」


「…ここに夜絆の両親が写った写真があるよ。ただ高校生の時に撮った写真だからあまり正確じゃないけどね」


父さんに一枚の写真を渡される。写っていたのは学生服を着た若い頃の父さんに似た人と、アイドルの様に整った顔をした大人の雰囲気を醸し出す美女が笑顔で写っていた


「この父さんに似てる人が俺の本当の父さん…じゃあ隣に映っている人が俺の…?」


「そう夜絆の本当の母親、夜美さんだよ」


「…なんか全然釣り合ってないよね」


別に父さんの兄さんが不細工というわけじゃない。むしろ整っている方だが、本当の母親だというこの夜美っていう女性と年齢差があるような気がする。どこか子供っぽいのだ


「そうかな?確かに夜美さんは少し年上な感じはするけど同じ年だったんだ」


「凄い大人びてる…」


俺は写真の女性をまじまじと見る


「夜絆、悪いんだけどいったん僕は家に帰るよ」


「あ、うん。見舞いありがとう」


「気にしなくていいよ。こんな話をした後だけど僕も母さんも冬雪や樹理だって夜絆の事を本当家族の様に思っているから」


「…ありがとう。みんなにもそう伝えといて」


「ああ、わかってるよ」


父さんは病室から出て行った


「…俺はどうしたら!」


俺は究極の選択肢を前に悩み苦しむ。もしあの夢を見ず、この石を渡されなかったら俺は簡単に自分の死を受け入れていた。だが今の俺には選択肢が出来た、このまま死ぬか、それとも過去に戻り未来を変えるか。普通なら迷わず後者を選ぶ…だけど後者は俺の周りの人の未来までも変えてしまうことになる。そうなったら…俺は責任を取れるだろうか?


(でも…あれがもし本当に父さんの心の声なら俺が死んだら父さんは後悔する)


あの自称天使に貰った能力が本物なら、さっきの頭に響いた父さんの声は心、思考の声のようだ


「なら使うしかないのか…?この石を…」


時界石を見つめる。石はまるで迷っている俺を後押しするかのように濁った光を強くした


「あいつの言いなりみたいで尺だけど、それでも俺は…まだ生きたい!」


石の輝きはよりいっそう強くなり、白いはずの病室を赤黒く照らす


「頼む…俺を過去に連れてってくれっ!!」


強く握った瞬間時界石は粉々に砕け、破片が周りを黒く染めていく。まるで世界が無くなっていくように…


「みんな、勝手な俺を許してくれ…」


最後にみんなへの謝罪を残して俺は真っ暗な空間に呑まれていった










(俺は…?)


目が覚めた俺がいたのは病院のベッドではなく、毛布に包まれ誰かに抱かれていた。まだ上手く目が見えないところを見ると赤ん坊の頃まで戻ったようだ。どうやら時間逆行は成功したらしい


「…夜美安らかに逝けよ」


(っ!今夜美って…)


夜美…それは俺の本当の母さんの名前。それに逝ったという言葉で俺は理解した。今は母さんの葬式、そして俺を抱いているのは俺の父さん


「心配すんなって!お前がいなくても子育てぐらい大丈夫さ。俺一人でちゃんと育ててみせる。…例えこの子が障害を持ってたとしても」


(障害!?俺は障害なんて持ってなかったはず…これも運命を変える代償なのか?)


「流石に母乳は出ねーけどミルクぐらい作れるし、おしめも変えられるさ。それに俺とお前のこの子はお前に似て利口そうな顔つきしてるし大丈夫。こいつは立派になるぜ、なぁ?」


父さんは俺の頬をプニプニ指で押し、遊んでいる


「そうだ、こいつの名前なんだけどお前も夜美っていう名前から一文字と、沢山の人達を繋ぐって意味で絆を取って『夜絆』っていうのにしたんだ。どうだ、昔のお前に因んだところもあるんだぜ?」


そういって父さんは俺を高く抱き上げる


「見ろよ夜絆、お前の母さんは美人だろ?お前は母さん似だからな。将来はきっといい男になるぜ」


(あれ?俺は確か父さんの方に似てるって言われてたような…こんなところでも変化が?それに母さん似でいい男になるのか?)


俺はまだあまり見えない目を酷使して母さんの遺影を見ようとする。見えたのは大量の花が置かれた台のなかに一枚の遺影が飾られていた。そこに写っていたのは高校の時よりさらに大人びた母さんの写真だ


(この人が俺の母さん…写真で見たよりさらに美人になってる…し…)


写真には胸から上しか写ってないが整った顔立ちはあまり変わっていない、それに顔ばっかり見てて気づかなかったが艶やかな黒髪もいっそう美人さを引き立てていた

そして俺の意識はここで途切れる。どうやら赤ん坊は一日の活動時間が短いので寝てしまったようだ






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