第一話 人生の転換期
この小説をお気に入りしてくれた皆様にお礼を申し上げます!
なかなか話が進まなくてすいません
side 夜絆
「はぁ~、やっと終わった~!」
一・二・三・四時間目のすべての授業が終わり、今はやっと昼休みになった。俺は偶にしか来ないからあまりわからないが、みんなこんな拷問の様な授業を受けて平気なのか?と考えてしまう
「やっと終わったって…夜絆はずっと寝てたじゃない?」
授業が終わって弁当箱を持ってきた未玖が余計なことを言う
「…それは言ったら駄目だって」
実際、さっきまで寝ていた。こっちはない眠気を必死に出して寝ていたのだ。責めるではなくむしろ褒めてほしいもんだ
「はいはい。じゃあお昼食べようよ」
「…お前のその会話の切り返し方は俺にはわからん」
「気にしない!」
未玖は勝手に弁当箱を机の上に広げ、食べ始める
「夜絆~、一緒にたべyってもう先客がいたか」
「別に一緒に食べてもいいだろ。…少し狭いけど」
流石に学校の小さな机で三人一緒に食べるのはきついが無理な事ではない
「そうだね、じゃあ私も一緒に食べよっと」
麻美も弁当箱を広げ食べ始めたので、俺も弁当を食べ始める
「そういや俺が休んでいる間に何か変わったことあった?」
「なんで?」
「聞いてみただけだよ」
「んー、そんなに変わったこと無いかな?麻美はなんか知ってる?」
「えーっと、冬雪先輩に恋人が出来たとか聞いたけど…」
「「マジか!?」」
未玖と一緒に大声を出してしまった
「あの姉さんに恋人ができるとは…相手はいったい?」
変な言い方だけど家の姉さんにはそういう事はまったく興味が無そうなイメージがある。だから全然信じられないのだ
「三年の誰かだって。まぁ噂だからなんとも言えないけど。でも最近冬雪先輩はよく部活を休んでいるからそのせいじゃないかな?」
「へー、部活休んでデートか。……駄目だ、全然想像できない」
「まぁ、夜絆のお姉さんってそういうことに興味なさそうに見えるもんね。でも校内じゃ人気高いよ。冬雪さんもそうだけど妹の樹理ちゃんのほうも」
「えっ!樹理も人気があんのか!?」
初耳な情報だ。まさか姉さんだけじゃなく、樹理までモテるとは…なんか物凄い敗北感
「知らないの?今年の一年生で五本の指に入るって言われてるよ?」
「初耳だよ。あいつとはあまり話さないし、一年のところに行く用事も無いからな」
「あれ?でも少し前まで一緒に遊んでなかったっけ?」
「俺が高1の時までな。二年になってから急に病状が悪くなったからそれ以来あまり遊ばなくなったよ。俺を気遣ってんだろ」
ほんの半年前までは普通に遊んでいたのに、最近は少し反応が素っ気無い。今朝は少し違ってたようだが
「そういえば急に休むようになったよね」
「そうそう、しかも二年になって始めて来た時なんかびっくりしたよ。全部白髪になってたし」
俺の髪が白くなったのは二年に入るちょっと前なので。この白髪はあまりなれない
「ま、気にしなくてもいいだろ。髪が白いのぐらい」
「いや、無理でしょ」
「なんで?」
「だって染めてるようにしか見えないよ、それ?」
「どこの世界に白髪に染めたがる奴がいるんだよ。それに生徒指導に呼ばれたこともないし問題ないだろ」
一部では休みあけデビューしたとか言われたけど、それって夏休みとかにしか言わないと思う
「ま、それもそうだね」
未玖は興味をなくしたように弁当を一気に食っている
だが逆に俺の食はあまり進まない
「「ご馳走様!」」
「二人とももう食ったのかよ…」
「夜絆が遅すぎるだけだと思うよ?もう食べ始めてから二十分経ってるし」
「そんなにか…?う~ん、今はそんなに腹へってないんだよな」
あまり動いたりしない俺には空腹が訪れる事はすくない。むしろ動かない分、エネルギーがあるのであまり食べないのだ。一日二食ぐらいだし
「食べないなら片付けたほうがいいよ。次は体育だから」
「そうだな。見学でも体操服には気がえなきゃ駄目だしnっ!?」
「「夜絆!?」」
立ち上がろうとした瞬間、急な眩暈に襲われ体制を崩してこけてしまった
「大丈夫!?」
「だ、大丈夫。少し眩暈がしただけだから」
「でも、顔色悪いぞ?本当に大丈夫か?」
「ちょっと体調が悪いだけだって。保健室に行って寝れば治るよ」
本当はさっきからどんどん眩暈が酷くなっていくのを感じるが、ここで正直に言うとまたこいつらに心配かけるから俺は平静を保つことにした
「付き添おうか?」
「だから大丈夫だって!あ、体育の先生に保健室に行ってるって伝えといて」
「う、うん」
未玖に用事を頼み、俺はフラフラしながらも保健室へと向かった
「し、失礼します」
「あら、夜絆君。どうしたの?」
保健室の扉を開けると保険医の先生がいた。この先生の名前はまだ知らない。というか俺はまだこの学校の先生の半分も覚えていない
「ちょっと眩暈がするので、ベッド借りていいですか?」
「いいわよ。でもそれは夜絆君の持っている持病のアレかしら?」
「さぁ、わかりませんが。フラフラするので休みたいです」
「そう…一応かかりつけの病院に連絡入れとくわね」
「…はい」
返事をした後俺はベッドに倒れこむように横になり、それから動くことも出来ないほどの倦怠感が俺を襲う
「夜絆君!?」
先生の心配する声を聞いた瞬間俺は倦怠感に呑まれ意識を完全に失い気絶した
「こ…こは?」
目を覚ました俺は周りを見る。そこは見たことが無いほど綺麗な場所だった。周りは一面の花畑、何の花かはわからないが花のいい香りと色のバランスがとておマッチしている。そして中央に噴水があり、ここあら出ている水はまるで天然水のように濁り気の無い純水にも見える。俺は噴水の傍で横たわっていた
「…こんなに綺麗な場所あったっけ?それに…」
もしこれが夢だとしても俺の記憶の中にこのような場所は見当たらないし、花が好きなわけでもない。だが今はそんなことよりも気になることがあった
「人が…誰もいない?」
こんなに綺麗な場所なら観光客の一人や二人ぐらいはいそうだが、人気が全くない。先程夢ではないことを自分で決めたので、さらにおかしいことに気づく
「誰もいないわけじゃないよ?」
「うわっ!吃驚したぁ~!」
いきなり背後から肩を叩かれ俺は振り返る。俺の背後に現れたのは銀髪の青年。日本人離れした顔つきに、太陽の光を浴びた髪はまるで銀を頭にかけたかのようにキラキラと輝いている様にも見える。外見を見る限り俺と歳はそう変わらなさそうだが、どこか不思議な雰囲気を漂わせている青年だ
「な、なんですか貴方は!?」
なぜか敬語で話してしまう俺。たぶん先程の不思議な雰囲気が年上を思わせるからだろう
「う~ん、話せば長くなるから単刀直入に言うけど天使…っていう表現が君の頭の中では一番合ってるかな」
「は?」
ニコニコした顔で意味不明なこと言われた俺はふ抜けた顔になる。天使…俺は宗教に興味は無いから具体的な姿は思い浮かばないが、人間の姿をして羽が生えて、頭の上に輝く円環があるという存在が一般的だろう。だがこの青年には羽はおろか円環すらない
「えーっと、天使ってあの天使?」
「あの天使って言うのは知らないけどたぶんその天使だよ」
さっきから馬鹿げた事をニコニコした顔で言う青年に俺は不信感を抱く
「君の名前は?」
だがそんな俺の態度を無視して青年は自己紹介を求めてきた
「夕月夜絆」
何故か不信感があるのにすんなりと答えてしまう
「夜絆君か…うん、いい名前だ。僕の名前は…言わなくていいか」
「なんでだよ!?俺が名乗ったのにお前が名乗らないなんて不公平だろ!」
「だって夜絆君に教えたとこで意味がないし、僕は自己紹介なんかしたくないからね。それより君に聞きたいことがあるんだ」
…なんていうかこの青年はマイペースなようだ。少し苦手な性格である
「…なんだよ?」
「どうして君はここにいるのかな?」
「そんなの俺が聞きたいよ!俺だって目が覚めたらいきなりここにいたんだ!」
よく考えたらなんで俺は慌てていないのだろう?普通に考えて、こんなところにいきなり来たら戸惑うはずだ
「ふーん、それは困ったね」
「なんで?」
「ここはね俗に言う三途の川なんだよ」
「三途の川!?ってか俺死んだの!?」
自分が死んだということにも驚いたが、なにより想像していた光景と違うことに戸惑う。なぜなら周りには綺麗な花が咲き誇っているだけで川なんてものは見当たらない
「三途の川って死んだ後に渡る川の事だろ?でもここら辺に川なんて見当たらないぞ!」
「あるじゃないか、ここに」
青年が指差したのは先程から綺麗な水を出している噴水
「はぁ?これのどこが川なんだよ!」
「疑うなら噴水の水の中に顔を突っ込んでごらん?」
「…わかったよ」
俺は半信半疑のまま水の中に顔を突っ込む。噴水の中は透き通った綺麗な水しかないので一番下まで簡単に見える
(ただの綺麗な水があるだkっ!なんだ、あれ!!)
噴水の下の方から無数の手が生えてきて俺の頭を思いっきり掴む
「(くそ!離れろ!!)ガボォ!」
俺は噴水の中で力いっぱいもがくが手の力は強力で、振り払うどころかどんどん俺の身体を水中に引っ張る
「(やばい、息が…)ガボガボ…」
「はーい、大丈夫?」
もう少しで引きづり込まれるというところで俺は青年に引き上げられる
「ガハッ!ゲほっゲほっ!」
俺は手から解放されたが大量の水を飲んでしまった為むせた
「危なかったね~、後もう少し水の中にいたら君は今頃死者の仲間入りだよ」
「ゲほっ!い、今のは?」
「死神だよ。まぁ下っ端だけどね。それはともかく君をこれからどうしようかな?君はまだ死んでないし」
「え?お、俺死んだからここにいるんじゃないのか?」
三途の川=死んだではないようだ。いや、あの手に引き込まれたら死は確定するのか?
「君はまだ死んでないよ。だって死んでたら君はもう噴水の中に引き込まれてるはずだしね。たぶんだけど君は今、生と死の境目なんだよ」
「じゃ、じゃあ俺はまだ死んでないんだな!」
俺は飛びかかるように青年の胸ぐらをつかむ
「…そんなに嬉しい?」
「当たり前だろ!俺はまだ死ぬ気はないし、もっとやりたいことが沢山あるんだよ」
「…そうかい、でもそれは叶わないね」
「なんでだよ!」
「だって君は今死んでないって言うだけでもうすぐ死ぬ運命だからね」
「…え?」
俺はさらりと告げられた死の宣告に対し素っ頓狂な声を出した
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