其の参拾弐「馬岱、劉備を襲うのこと」
一刀達一行は道中ドタバタしながらもようやく西涼に着いた。
愛紗達の話ならここに翠がいるからだ。
しかし、西涼は翠の故郷であると同時に母である馬騰が亡くなった地でもあるのだ。
西涼は過去に華琳(曹操)に攻められてしまい、その時に馬騰が亡くなり、それ以来翠は華琳を倒すために旅に出ていたところを俺達と出会ったのだ。(其の拾肆参照)
鈴々「翠は一体どこにいるのだ? 」
鈴々が辺りを見渡してみるが周りは焼け野原だらけでひとっこどころか犬一匹すらいなかった。
みんなが周りを探していると
ガバッ!!。
焼け跡から何かが飛び出して桃香に襲いかかった。
一刀「桃香っ! 」
みんなが桃香の方を振り向くと桃香が人質にされていた。
桃香「ひ〜ん!ご主人様!愛紗ちゃん!みんな〜助けてー! 」
桃香は必死に助けを求める。
桃香に襲いかかった者は桃香の首筋に鎌をあてると叫ぶ!
馬岱「五胡の軍勢め!お姉様がいない隙に攻めてくるなんて、たとえ天が許しても、この馬岱様が許さないもんね♪ 」
この子は何を言ってるんだとみんなが思っていると
馬岱「人質を放してほしかったら武器を捨てなさい! 」
馬岱はさらに鎌を桃香の首に近付ける。
愛紗「仕方がありませんね 」
みんなは次々と武器を地に置いた。
一刀が前話のように飛び出さなかったのは相手が女の子だったからだ。
しかし一刀は刀を地に置かない。
馬岱「そこっ!何をしているのよ!さっさと武器を置きなさい! 」
馬岱が言うと一刀は刀を置かずにそのまま
ヒュンッ!!。
刀を上に放り投げた。
馬岱「まぁ別にそれでもいいけどさ 」
馬岱が安心していると投げ出された刀は回転しながら落ちてくる。
すると一刀は突然、足を後ろに出して蹴りの構えを繰り出すと
一刀「北郷流八の型『剣蹴』 」
一刀は投げた刀の柄の後ろをめがけて蹴りを繰り出した。
蹴り出された刀はそのまま一直線に馬岱めがけて飛んでいく。
馬岱「うわっ!! 」
思わず馬岱は桃香を突き飛ばして刀を避けた。
その隙に一刀は馬岱に近付いて
一刀「終了だ! 」
馬岱の腹に拳を当てようと構える。
これだけ接近されればどんな武人でも身動きがとれない。
馬岱「う〜!参りました降参だ… 」
馬岱が続けて言おうとすると
?「タンポポー! 」
はるか遠くから人がやって来た。
馬岱「お姉様だ!助けて〜タンポポ殺されちゃうよ〜 」
何を言ってるんだこの子は?
?「この五胡の奴らめ!性懲りもなくまた来やがったな! 」
駆け付けた女の子は槍を構えるがその槍は旧北郷軍のみんなは見覚えがあった。
愛紗「あの十字の槍は! 」
星「あやつしかあんなものを使わんだろう 」
朱里「じゃあやっぱりあの人は!? 」
鈴々「翠なのだ! 」
みんなの言う通り駆け抜けてきた娘は翠であった。
しかし翠は
翠「タンポポからその手を退かしやがれ! 」
周りが見えていなかった。
翠の銀閃が一刀に当たろうとする!。周りが必死にやめるよう叫ぶが翠は聞いていない。
翠「喰らえ―!! 」
銀閃が一刀に当たろうとしたその時!
パシンッ!!。
一刀は銀閃を素手で横にそらした。
翠「なにっ!? 」
さらに驚いた翠に対して一刀は
ガバッ!!。
翠を抱き締める。
翠「このっ!はなしやが… 」
翠が抵抗しようとすると一刀は
一刀「ご主人様を忘れちゃったのかな? 」
翠の耳元で囁く(ささやく)。すると翠は
翠「えっ…!? 」
驚いて銀閃を落とした。そして
一刀「只今!翠 」
すると翠は
翠「うっ…グスッ!かってに帰るんじゃねぇよ!ご主人様のバカー! 」
一刀の胸で大泣きした。
凪「感動の再会ですね 」
雛里「見てるこっちが泣いてきましゅ 」
桃香「いいな〜。あの子、ご主人様にあんなにくっついて 」
馬岱「お義姉様が泣いている!? 」
確かにこのままいけば感動の再会だっただろうがそうはいかない。
スリッ♪。
これに翠が反応した。
翠「この…! 」
そして
翠「どさくさにまぎれて尻触ってんじゃねぇぞ!このエロエロ魔人! 」
パシーン!!。
翠の平手打ちが炸裂した。
しばらくたって
ここ、西涼の隠し家の中には
翠と北郷軍と顔に真っ赤な紅葉をつくった一刀と頭にタンコブができた馬岱がいた。
翠「悪いなみんな!ウチの蒲公英の早とちりでよ! 」
タンポポとは馬岱の真名である。翠とは従姉妹にあたるのだ。
タンポポ「お姉様だって槍を向けたくせに 」
タンポポが愚痴を言うと
ゴチンッ!!。★彡
翠のゲンコツが炸裂した。
タンポポ「お姉様いた〜い! 」
翠「何がいた〜いだ!お前が紛らわしいことを言うからだぞ! 」
星「まぁ落ち着け翠よ 」
星が翠をなだめると
愛紗「それより翠よ!我々には勿論ついてきてくれるのだろうな! 」
しかし翠は
翠「ごめん!あたしはいけないよ 」
北郷軍『えーー!! 』
驚いた北郷軍が理由を聞くと翠は
翠「この西涼にはさ二ヶ月前から五胡っていう奴らが攻めてきて、だからあたしが守らなくちゃならないんだ。だからあたしはみんなについていけないよ 」
翠が言うと一刀は
一刀「翠は馬鹿だな 」
翠「なんだって!今のはいくらご主人様でも許さないぞ! 」
途端に食いかかる翠に一刀は
一刀「だって翠は一人で何とかしようとしてるじゃないか!ここには仲間がいるのにさ! 」
一刀が言うとみんなも言いはじめる。
愛紗「確かに馬鹿だな我々がいるというのに 」
鈴々「翠は馬鹿なのだ! 」
鈴々には言われたくなかろう。
朱里・雛里『私達も知恵をしぼりましゅ! 』
凪「賊退治なら任せて下さい! 」
これを見た翠は
翠「みんな… 」
星「そういうことだ!一人で何もかも抱えこむでない! 」
これに対して翠は
翠「確かにあたしは馬鹿だったぜ!みんなよろしくな! 」
そしてタンポポも
タンポポ「お姉様がまともなことをいってる!? 」
このあと、タンポポは翠に殴られた。
そして翌日
五胡の軍勢が西涼に攻めてきた。
その数、およそ五万。対する北郷軍は十人と一匹
約五千倍の差があるのだ。しかし、もとから兵数など北郷軍には関係がない。
五胡大将「あの女め!これだけ数がいれば今日こそ勝ってやるぜ! 」
これをみていた部下達は思った。(彼らは一刀達が来ていることを知らない)
部下達『(たった二人相手に五万はないだろ) 』
しかし、誰一人とて口に出すことはなかった。
その状況を見ていた一刀達は
一刀「五万とはまた少ないな 」
鈴々「後から味方が来るのかなのだ? 」
愛紗「いや、どうやらあれで全力らしいぞ 」
星「すぐに倒れぬといいのだがな 」
猛者だらけの北郷軍だから言える言葉である。しかし入って間もない桃香とタンポポは
桃香「五万の兵相手に楽勝な感じのみんなって何なんだろう? 」
タンポポ「力の差を知らないのかそれとも強すぎるのかな? 」
慣れていない二人は頭をかかえていた。
そして戦いが始まる。
翠「それじゃあ行くぜ! 」
翠が飛び出そうとするがそれを一刀が止めた。
一刀「待て!ちょっと敵の数を減らす! 」
凪・雛里以外『数を減らす!? 』
減らす方法を知る凪と雛里以外が驚いた。
星「主は弓でも学ばれたのですか? 」
星が聞くと一刀は
一刀「弓じゃないよ!ちょっとした方法でね 」
そう言って一刀は刀を上に構えると
一刀「北郷流二の型『燕刃』 」
一刀が刀を上から勢いよく振り下ろすと刀から何かが飛び出してきた。
翠「何なんだよあれは!? 」
翠が驚いていると凪が説明する。
凪「刀から飛び出したのは気ですよ!隊長は気を使えるんです 」
これに翠とタンポポが驚いた。
なぜならば気を扱える人なんてこの大陸でも数えるくらいしかいないからだ。気を扱えるだけで最早達人の域に達している。
刀から飛ばされた一刀の気の斬撃は五胡の部隊に直撃した。
突然、不意打ちを喰らった五胡軍に一刀は
一刀「行くぞー!! 」
先陣を賭けて行った。
その後に続いて愛紗達も向かっていく。
五胡大将「奴らの方から攻めてきやがるとはな。野郎共!返り打ちにしてしまえ! 」
五胡大将は勢いよく言うが相手が悪かった。
一刀「でりゃっ! 」
ズバッ!!。
五胡兵に斬りかかる一刀を見た翠は
翠「ホントにご主人様が強くなってやがるな 」
愛紗達から話を聞いたとはいえ、一刀が強くなっていたことに驚いていた。
星「あちらも負けてはおらんぞ! 」
戦いながら星が指差した先には
凪「はぁっ! 」
凪が五胡兵を蹴り飛ばしていた。
周々「ガルルー!! 」
朱里「周々ちゃん!次はあちらでしゅ! 」
雛里「あわわ〜! 」
朱里と雛里が周々の背中にまたがって指揮をしていた。
翠「あいつらもやるなぁ!こりゃあたしも負けられないぜ! 」
翠も果敢に攻めていった。
さすがの五胡の軍も不意打ちと猛者だらけの北郷軍には勝てずただただ数が減っていくだけであった。
五胡大将「嘘だろ!?たった十人相手に五万が負けそうだなんて! 」
大将は自分の頬を引っ張るが痛いので夢ではない。
その後、あっという間に五胡軍は伝令一人を残して壊滅した。
ちなみに伝令を残したのはわざとである。
一刀は伝令に
一刀「今度西涼に攻めてきたらただではすまさんと五胡の王に伝えな! 」
伝令は脅えながらその場を走り去っていった。
タンポポ「ホントに十人たらずで五万をやっつけるなんて、この人達って何者なんだろう? 」
タンポポが驚くのも無理はなかった。
そしてしばらくして
愛紗「そうかやはり翠もついてきてくれるのか 」
翠「あぁ!五胡の奴らも当分は攻めてこないだろうしあたしもみんなに会いたいからな! 」
という翠だが本音は一刀から離れたくないだけであった。
翠「うっせーぞ! 」
鈴々「翠は誰に叫んでいるのだ? 」
朱里「多分、天の声にだと思います 」
翠が伽羅坂に乗り込むと
凪「ところでタンポポさんは来ないのですか? 」
凪の問いに翠は
翠「この先はあいつには辛いだろうしな、それにあいつも一人立ちする年頃だしな! 」
一刀「それじゃあ行くぜ! 」
一刀はエンジンをかけると伽羅坂は走り出した。
しばらくして
星「ところで鈴々よ、さっきから気になっていたのだがその廿楽は何だ? 」
星が指差した先には鈴々の横に『すごいごちそうが入っているよ♪タンポポより』と書かれた大きな廿楽があった。
鈴々「タンポポからの差し入れなのだ! 」
すると廿楽を見た翠は
翠「タンポポはどこだー! 」
急に叫ぶと廿楽が開いて
タンポポ「ここにいるぞー! 」
中からタンポポが飛び出してきた。
飛び出してきたタンポポは出てくるなりいきなり
ゴチンッ!!。★彡
翠に殴られた。
タンポポ「お姉様いた〜い! 」
タンポポが頭をかかえると翠は
翠「何がいた〜いだ!勝手についてくるんじゃない!とっとと帰れ! 」
しかしタンポポは
タンポポ「イヤだよ〜!タンポポだってご主人様と一緒にいたいもん! 」
タンポポも下がる気はないらしい
星「まぁ、いいではないか今さら一人増えたところで同じであろう 」
星が言うとタンポポは
タンポポ「星お姉様さっすが〜!どこぞの脳筋とは違うね! 」
この言葉に翠がキレて
翠「待ちやがれタンポポー!!! 」
タンポポ「待つわけないじゃん♪ 」
伽羅坂の中で追いかけっこをする二人であった。
凪の技講座
八の型『剣蹴』
刀を上に放り投げて相手が油断している隙に回転する刀の柄をめがけて蹴りを繰り出す。蹴り出された刀は相手めがけて飛んでいく。(失敗して柄ではなく刃に当たれば足はズタズタ)投げる角度とタイミングが重要な技
二の型『燕刃』
某死神主人公の月〇天〇に似て、刀に気を流してその気を相手にぶつける遠距離型の技。
応用技でぶつける気を多数に分けることで威力は劣るが数が多い『燕刃・全解』がある。
凪「ちなみに隊長は刀に気を流さなくても腕に気を流して素手で燕刃が使えますが気の力が強すぎて腕がボロボロになるため刀に気を流しています 」