其の拾質「曹操、一刀を連れ去るのこと」
ある日の街中、一刀達は街の宿(お金がないので、三食付きのタダ働き)に泊まり、一刀は翠と朱里を連れて買い物に来ていた。
朱里「これで暫くは生活できますね 」
朱里の手には今あるだけのお金で買えるだけの食料があった。
翠「これで少しはましなもんが食えるかもな! 」
今まで一刀達の食料といえば…
道に生えているキノコ、野生の猪や熊、川魚を食べていたが、
大食らいが三人(鈴々・翠・恋)もいるのでとても足らなかった。
そこで買い物に来たわけなのだ。
一刀「しかし翠もよかったけど愛紗や紫苑でもよかったな 」
にやけた顔をする一刀。ちなみに食料の代金は本人は嫌がったのだが自分にも責任があるということによる翠の色仕掛けにより半額にされた。
翠「もうあんな真似は絶対にしないからな!! 」
一体何があったのだろう?
そして一刀達が歩いていくと街の大通りに人が集まっていた。
一刀「これは何の集まりなんだ? 」
一刀が聞くと
街人「曹操様が来てるんだよ 」
この言葉を聞いたとたん翠の体が震えたのかと思うと一刀は
一刀「どうしたんだ翠?おしっこ漏れそうなのか? 」
あまりにデリカシーのない言葉を言った直後、一刀は翠に殴られた。
そして翠は人混みの中に入っていった。
朱里「はわわ〜!翠さんどうしたんですか? 」
街の大通り
そこには魏の王、曹操こと華琳が夏侯姉妹(春蘭、秋蘭)と共に視察へと来ていた。
華琳「今日も街は賑やかね 」
春蘭「何を言っております華琳様!華琳様が来た街におかしな点があるわけないじゃありませんか! 」
秋蘭「姉者の言う通りですよ華琳様 」
夏侯姉妹が言うと華琳は
華琳「それもそうね 」
少し笑う華琳。だが彼女は気付いてなかった。
翠「曹操!覚悟しろ!! 」
突然現れた翠が華琳に銀閃を向けていたことを華琳は気付いてなかった。
華琳に銀閃が刺さる…
しかし銀閃は華琳に届くことはなかった。なぜならば刺さる直前に…
一刀「翠!止めろ! 」
一刀の声で翠の動きが止まったからだ。
そしてそれからすぐに翠は夏侯姉妹に取り押さえられる。
華琳は翠を見ると。
華琳「あなたは確か西涼の太守、馬騰の娘の馬超じゃないの 」
馬騰とは翠の母であり、華琳に殺されたのだ。
翠「くそっ!母様の仇が討てなかった! 」
押さえられながらも悔しがる翠に華琳は
華琳「この曹操孟徳に刃を向けた罪として馬超、あなたを処刑するわ! 」
この言葉に街人は驚いた。そして心に刻むだろう。
『曹操に歯向かってはいけない』と
翠は華琳が街人に対して魏の力を見せ付けるために利用されたのだ。
街人が驚くなか、今まで我慢していたがついに一刀が動いた。
一刀「待て曹操! 」
華琳「あなたは確か天の御遣いの… 」
一刀が答える。
一刀「北郷一刀だ! 」
答えた一刀に春蘭は
春蘭「なぁ秋蘭、あいつは誰だ? 」
前に連合で会ったにもかかわらず一刀のことをすっかり忘れていた。
秋蘭「姉者、連合の時に会ったであろう 」
さすがに冷静な秋蘭も姉の馬鹿っぽさに呆れるしかなかった。
春蘭が連合にあんなヤツいたか?とかんがえていると華琳が言う。
華琳「黙りなさい春蘭!話が先に進まないでしょ!! 」
華琳に言われ考えるのをやめた春蘭。
華琳「それで、御遣いがこの私に何の用なのかしら? 」
一刀は答える。
一刀「翠は俺の大切な仲間だ。仲間がやってしまった罪は俺がとる! 」
この一刀の言葉にみんなが驚くなか華琳は
華琳「自分の命と引き替えに仲間の命を助けるというの?あなた相変わらずの馬鹿ね 」
一刀「たとえそれが馬鹿なことだとしても俺は自分の命を捨ててでも仲間を守ってやる! 」
この言葉にみんなが驚いた。何故なら自分の命より仲間の命が大事だと言う大将なんてそうはいないからだ。
華琳は言う。
華琳「そう、分かったわ。馬超、諸葛亮、仲間に伝えなさい。北郷一刀は魏で預かるとね 」
華琳のこの言葉に驚く翠と朱里、更に何故か春蘭さえも驚いていた。
翠「ふざけんな曹操!人質ならあたしが… 」
一刀が人質扱いされるのに我慢できない翠だったが一刀は
一刀「俺は大丈夫だ。翠、朱里すまないが他のみんなに伝えといてくれ! 」
そう言うと一刀は兵に手枷(手錠のような物)をつけられて連れていかれた。
そしてすぐ翠の方を見て言う。
一刀「翠、憎しみは人を善にも悪にもすることを覚えてくれ 」
そう言った後一刀は華琳に連れていかれた。
朱里「はわわ〜!!ご主人しゃま〜! 」
翠「…くそっー!! 」
朱里は己の無力さに、翠は自分のせいでの責任に二人は嘆いてしまった。
一刀達が泊まっている宿
愛紗「なんだと!ご主人様が曹操に連れて行かれただと! 」
宿に戻った翠と朱里はみんなにさっきのことを話した。
翠「すまない!あたしのせいで! 」
頭を下げる翠。
星「翠よ、そんなに自分を責めるでない。仇の相手が目の前にいれば仇を討ちたくなるのが普通だ 」
星が翠を慰める。
そんな中愛紗は
愛紗「こうしてはおれん!今すぐにご主人様を助けに行くぞ! 」
鈴々「お兄ちゃんを助けるのだ! 」
すぐにでも一刀を助けに行こうとする二人に対し、紫苑が言う。
紫苑「待ちなさい愛紗ちゃん、鈴々ちゃん!。今行けばご主人様の命が危ないわ 」
紫苑の言うことはもっともだ。本当は紫苑だって助けに行きたいが、いうなれば一刀は現在人質状態。そんな中考えもなしに突っ込めば一刀の命が危ない。
月「へぅ〜!!ご主人様大丈夫かな〜? 」
心配する月の肩に恋が手を置く。
恋「…心配ない。ご主人様生きてる 」
セキト『あいつが簡単にくたばるかよ! 』
そして詠が言う。
詠「確か曹操は才(才能)がある人は殺さないというからあのバカチ〇コは天の御遣いで有名だからきっと無事よ! 」
この言葉に全員が少し安心をした。
愛紗「(ご主人様!必ず助けに行きますからそれまで無事でいてください) 」
愛紗は一刀の無事を祈るのだった。
さてその頃連れ去られた一刀はというと
街の魏の拠点の城
一刀「……… 」
一刀は呆気にとられていた。なぜならばこの城は華琳の持つ小さな城の一つのはずなのにとても大きかったからだ。
華琳「さて、天の御遣いを手に入れたのはいいけれどどうしようかしら? 」
華琳は一刀の使い道を考えていた。
一刀「言っておくが俺にはできることとできないことがあるぜ! 」
一刀が言うと華琳は
華琳「じゃあ、あなたは何ができるというの? 」
華琳の問いに一刀が答えた。
一刀「まず…。洗濯だろ、それに簡単なお菓子作りに、買い物、のぞき… 」
最後が気になるがきりがないことに春蘭がキレた。
春蘭「貴様―!!さっきから色々と言いおって!きりがないではないか! 」
春蘭は一刀の胸ぐらを掴んで叫んだ。
それを見て姉を止める妹の秋蘭。
秋蘭「姉者!それ以上やってしまうと北郷が死んでしまうぞ! 」
それを聞いて手をはなす春蘭。しかし…
一刀「ありがとう秋蘭 」
この言葉を聞き、再び春蘭は…
春蘭「貴様―!!秋蘭の真名を言ったなー!! 」
今度は自分の武器である七星餓狼を一刀に向けた。
それを再び止める秋蘭
秋蘭「姉者!真名ならば許したからいいのだ 」
それに驚く春蘭。そして華琳が聞く。
華琳「秋蘭!あなたいつの間に真名を許したの? 」
秋蘭は答える。
秋蘭「華琳様、姉者。実は連合の時に 」
実は袁紹が虎牢関を攻める前の夜。一刀は華琳達の天幕に寄り、
一刀「夏侯淵って人に伝えてくれ、天の国の予言で定軍山に登る時は死ぬかもしれないから気を付けてくれと 」
そしてその返事が
秋蘭「分かった。もしその予言を守って私の命があったならば再び会った時、我が真名である秋蘭を呼んでくれても構わない 」
実際、定軍山に登ってみたところ、大量の賊が現れたのだ。すると話を聞いた春蘭は…
春蘭「秋蘭が許したのならば私も真名を許そう。我が真名は春蘭だ覚えておくがいい! 」
胸を張って言う春蘭だった。
すると華琳は
華琳「そうだったの、ならば私から褒美としてあなたを城の中限定で自由にしていいわよ 」
何とか殺されずに喜ぶ一刀であっが
華琳「ただし!もし逃げたのならば… 」
一刀「逃げたら… 」
唾をのむ一刀!!
華琳「首をはねるわよ 」
そう言うと華琳は自分の武器である「死神鎌・絶」を一刀の首にあてた。
一刀「絶対に逃げません!! 」
びびりまくりの一刀であった。
華琳「分かったわ 」
華琳は絶を一刀の首から離した。
華琳「それでは春蘭と秋蘭が真名を預けたことだし私も… 」
そういおうとした時だ。
突然扉が開いたかと思うと猫耳頭巾を被った女の子が入ってきた。
?「駄目ですよ華琳様!!華琳様が男なんかに真名を預けては真名が腐ってしまいます! 」
何を言ってるんだこの子は?
一刀「腐るわけないじゃん 」
一刀が猫耳少女に手を触れようとすると
その手は弾かれた。
?「触らないでよ!妊娠しちゃうでしょ! 」
何を言ってるんだこの子は?
秋蘭「すまないな北郷、彼女の名は荀イク 文若。我が軍の軍師だ 」
荀イクといえば頭脳ならば孔明(朱里)にも劣らない人物であるが、まさかこれほどの男嫌いだとは一刀も予想していなかった。
華琳「ちょうどいいわ、桂花あなたが北郷を部屋に案内しなさい 」
桂花とは荀イクの真名である。しかし桂花は
桂花「いくら華琳様の命令でも汚い男を連れていくことなんてできませ… 」
桂花が最後まで言おうとするが華琳は
華琳「桂花、あなた私の命令が聞けないって言うの? 」
その時、華琳のその小さな体のどこにあったのか分からない程の覇気が流れていた。
これには軍師の桂花や、戦わない一刀ですらも分かっていた。
桂花は脅えながら言う。
桂花「失礼しました華琳様!案内します! 」
桂花の態度がさっきまでと変わった。
余程恐ろしかったのだろう。
桂花「早くついて来なさいよ!この全身精液男! 」
酷い言われかただ。
そうして桂花と一刀が歩いていくとやはり桂花は不満がたまっていたのかこんなことを考えていた。
桂花「(なんでこの私が男なんかを連れていかなくちゃならないのよ!!これもそれも全て全身精液男のせいだわ) 」
と考えた桂花はあることを思い付いた。
桂花「(そうだ!こいつをあの部屋に閉じ込めてしまいましょう。フッフッフッ!) 」
不気味に笑う桂花だった。
そして二人はある部屋の前にたどり着いた。
桂花「ここがあんたの部屋よ! 」
一刀は部屋の中を見るが
一刀「暗くて奥が見えないなー 」
と考えていたその時だ。
突然桂花が一刀の背中を押して部屋に入れた後、鍵を閉めた。
一刀「ちょっ…!開けろよ荀イク! 」
しかし桂花は
桂花「きやすく呼ばないでよ妊娠するでしょ!あんたはその部屋の魔獣に殺られなさい 」
桂花はその場から立ち去った。
一刀「妊娠するか!ここから出せ―! 」
一刀が必死に扉を叩いていると奥の方から音がした。そして…
?「ガルルー!! 」
奥の方に何かがいた。
春蘭「おい貴様! 」
西森「なんだよ? 」
春蘭「ちょっと気になるが私の片目はどうなったのだ? 」
西森「無事だよ 」
春蘭「…それだけかー!! 」