第27話「焔の武者修行!」
——翌日の土曜日。
「——話は聞かせて貰ったぜ、焔! 黒土美月に勝ちたいんだってな? なら、この俺様を頼ったのは大正解だったな! 借りを返すことも含めて、今日から毎日、バトルに付き合ってやるぜ!」
「はい、よろしくお願いします、王牙先輩!」
生徒会の仕事をする前に朝から時間を作ってくれた輝からの顧問としての指導を終えた後、焔は王牙のチームキングダムの部室に訪れていた。
昨日の夜、従兄弟に相談した所、「自分がそうだった様に、その子に勝って、これからはライバルの自分がずっと隣にいるって言ってやれ」とアドバイスされた。
だから強くなる為に、昨日の内に連絡先を教えて貰った王牙たちに電話した所、こうして今日から特訓をつけて貰えることになった。
ちなみに冬馬と小春は、今日は学園リーグ戦に挑んでいた。
美月の過去を聞いた二人も、自分と同じ様に今まで以上に強くなると意気込んでいた。
「でも、すみません……生徒会の仕事もあるでしょうに……」
「気にするな! こう見えて、俺様は親父の会社の跡取りだからな! 会計の仕事はいつも短時間でパパッと終わらせて、残りは全部バトルの時間に当てているんだ! だから、さっさとバトルしようぜ!」
どうやら話を聞くに、会社の経営を忘れて趣味の機体の開発に没頭しがちな夫を見ていた王牙の母が、そうならない様に、任せられた仕事をちゃんと終わらせてから好きなことをする様にと、その辺を躾けたらしい。
そして、その王牙の父は、今は妻の監視の元、溜まっていた仕事に加え、自社の機体が謎の暴走を起こした原因の究明に追われ、エナジードリンク片手に徹夜しているらしかった。
……何と言うか、大変そうだ。
すると自分たちのやり取りを聞いていた、王牙の弟たちが口を挟んで来た。
「だが、兄貴。 親父から念の為に、暫くは様子見する様にと言われている筈だろう?」
「雷牙の言う通りだぞ! 魔石ごと交換したから俺たちの機体はもう大丈夫とは言え……」
「そうだぜ、兄貴! もし何か起きたら親父に怒られるだけじゃすまないぜ!」
「音牙の言う通りなんだな。 人格システムの方も無事に回復したとは言え、もし僕たちがまた暴走したら……」
昨日電話した際に、王牙からレオたちに見つかった問題について教えて貰った。
一つは人工精霊の依代にして、メカニカルウィッチの心臓に相当する魔石に残っていた謎の汚染の跡。
これが何なのかは全く分からないらしく、それについてはイーグルの言った方法で解決したらしい。
だけど、魔石を交換すること自体が稀な為、それを管理する国への手続きがかなり面倒だったそうだ。
もう一つは人工精霊の脳に相当する人格システムに見つかったダメージ。
これは人工精霊の根幹とも言える部分で、この中には『ロボット三原則』を元にした安全上の為のプログラムや、倫理コードなども組み込まれていた。
それ故に下手に弄ろうとすれば、人格に影響が出かねないのだが、幸いにも暴走は直ぐに収まった為、オルカの言う通り大丈夫だったそうだ。
だから、王牙はもうバトルしても問題ないと電話で言ってたいのだが……。
「うるせえ! お前たちが黙っていれば問題ないんだよ! 俺様は昨日バトルできなかったせいで発狂しそうなんだよ!」
「吾輩もであーる! ウィッチバトルが解禁された日から一日も欠かさなかったバトルが昨日できなかったせいで、禁断症状がヤバいのであーる!」
「それに焔たちの特訓はウィッチバトルで行うから、いざとなったら俺様が体を貼って止めるから問題ねえ!」
「「む、無茶苦茶だぜ、兄貴……」」
兄を慕っている雷牙と音牙さえも、若干引いていた。
しかし、王牙はそんなことは関係ないと言わんばかりに、部室に備え付けられているウィッチバトル用のスタジアムを指差した。
「良いからバトルをするぞ、焔! そして、マーズ! 前回は直接バトルする機会がなかったからな……まずはその実力を確認してやるぜ!」
「はい、よろしくお願いします!」
「私たちの実力を見せてあげるわ!」
今回のバトルフィールドは目立った障害物物のない『荒野』で、練習や特訓にも持ってこいの場所だった。
そこにブラッドマーズと、昨日とは少し姿が変わったキングレオが降り立った。
「それが王牙先輩たちの本来の機体……!」
「おう! 前回はハイパーキングレオの合体変形の為に、改造を加えていたからな! どうせあの機体は暫くは使えないだろうし、俺様たち本来の機体であるこのキングレオで相手をしてやるぜ!」
変わったと言っても大部分は同じだ。大きな違いと言えば、合体変形用のアタッチメントパーツが取り外され、代わりに背中にビームのマントを装備したことくらいだろう。
話によると、王牙の父は最後までこのマントを取り付けられないか試行錯誤していたらしいが、合体変形の邪魔になってしまうので、最終的に泣く泣く取り外したらしい……。
「準備は良いな? バトルスタートだぜ!」
「良し、いつもの先手必勝だ!」
バトル開始と同時にブラッドマーズのスラスターに火をつけ、飛び出させる。
杖を装備した機体は普通なら距離を取るのがセオリーだが、そんなの関係ない。これが自分たちのバトルスタイルだった。
「ハッ、良いじゃねえか! やっぱり初手から真っ直ぐに突っ込むのが一番楽しいからな! だが、今回は焔たちの実力を確かめる為にも先手を譲ってやるぜ!」
「行くよ、マーズ!」
「ええ、焔君!」
「「マジカルスキル! 幻影の炎!」」
王者の様に仁王立ちするキングレオを取り囲む様に影分身を発生させる。
これは序の口。このマジカルスキルは、他と併用してこそら真価を発揮する。
「「マジカルスキル! マーズファイア!」」
影分身と共に、蝙蝠の様に飛ぶ魔法の炎を、四方八方から打ち込んだ。
本物は一つだけだが、追尾式の特性を持つ為、相手に対処を強いることができる。
「……成程な。 中々に考えられた使い方だぜ! ……だが、甘いぜ!」
しかし、キングレオは偽物に引っかかることなく、即座に見破った本物の攻撃を、背中の『キングマント』で防いだ。
「くっ……!? どうして!?」
「またなの!?」
マーズの言う通り、美月たちの様な強者にはいつも通じない。
使い方は決して悪くはない筈なのに……。
「残念だったな! このキングマントは飾りじゃなくて、歴とした防御装備なんだよ! それに追尾式だからこうして受け止めたが、基本的に俺様たち相手に飛び道具は当たらないぜ」
「その通りなのであーる! 皆、吾輩たちを恐れ、飛び道具ばっかり使って来るから、直感力が鍛えられたのであーる!」
「ああ、だから俺様たちの直感による警戒網を突破できる奴は殆どいねえ! その点、冬馬たちはそれを掻い潜って狙撃を成功させたからな! 素直に凄いぜ!」
冬馬とマーキュリーの狙撃の腕前は自分たちが一番良く知っているつもりだった。
だって自分たちを最初に負かした相手なのだ。忘れる筈がない。
それに幼馴染として、今まで数え切れないくらいバトルして来たが、自分も小春もどこから来るか分からない最初の狙撃を避けられた試しがなかった。
「だけど、それを抜きにしても、囮である影分身の動きが単調過ぎる上に、最初から死角である背中を素直に狙いすぎだ! だから、こんな風にカモフラージュしないとな!」
「ーーッ!?」
キングレオがマントを退かすのと同時に、胸部の『キングキャノン』からビームが発射された。
当然、位置がバレている本物の自分たちの元に飛んで来るが、ギリギリまで隠されていたせいで、避けるのが間に合わない。
咄嗟に防御するが、そのあまりの威力に吹っ飛ばさてしまう。
影分身の使い方が拙いのは薄々自覚していた。
その点、歌とピスケスは流石に全てを手動で動かしている訳ではないだろうが、その使い方が抜群に上手かった。
そこら辺は後で教えて貰う予定だった。
「……さてと、先手は譲り終わったから、今度は俺様たちから行くぜ!」
その場を動いたキングレオがマジカルブーストで加速しなから一気に突っ込んで来る。
今の状態で距離を詰められると不味いので、通常攻撃の魔法の弾をばら撒く様に発射することで弾幕を作る。
しかし、王牙たちは足を止めることなく、両手のキングナックルでそれを迎撃した。
「言った筈だぜ! 俺様たち相手には通じないってな!」
「吾輩たちのパワーの前では弾幕など無意味なのであーる!」
こちらもマジカルブーストを使って一度距離を取ろうとするが、王牙たちは明らかに一回り大きい両腕の『キングナックル』をパージさせ、こちらへと飛ばして来た。
前回の学園リーグ戦で使っていたドローン武器だ。
「オラ! オラ! オラ! オラ! オラ!」
キングレオがシャドーボクシングをすると、その動きに連動する様に、ドローン武器が攻撃を仕掛けて来る。
「「マジカルスキル! マジカルシールド!」」
防御魔法を展開させるが、それを叩き割ろうとする様にラッシュが襲って来る。
威力もそうだが、一撃一撃が重いせいで、防御魔法にどんどんヒビが入っていく。
「くっ……!?」
「どうだ! ドローン武器を併用すれば、こんな風に俺様たち十八番の格闘攻撃を間合いの外にも叩き込めるんだぜ!」
ドローン武器の強さと厄介さは、この身をもって知っていた。
先週から始まった輝とヴィーナスによるティーチングバトルで、いつもドローン武器にボコボコにされているのだ。
冬馬と小春も合わせて三対一で挑んでいるにも関わらず、それを突破して本体の元まで辿り着いた試しがなかった。
輝も美月とサターンもこれに苦戦していたから仕方ないと言っていたが、いつの間にバトルしたんだろう?
確かに、御影とカロンも、歌たちの援護込みとは言え、その奇襲性で美月たちを事実上後一歩の所まで追い詰めていた。
何かの参考になるかもしれないので、こちらも後で教えて貰う予定だった。
「それと黒土美月たちを相手にするなら覚えときな! 俺様たちの様な近距離戦闘に特化した機体は、防御魔法くらい簡単に突破する手段を持っていることをな!」
そして、遂に防御魔法が叩き割られ、盾を失った機体に重量級の一撃が叩き込まれた。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっーー!?」
「焔君!?」
そのままバトルフィールドの外壁へと叩きつけられる。
「その点、小春たちは俺様たちの攻撃を真正面から防げるだけの良い防御力をしていたぜ! あれも素直に凄いぜ!」
小春とジュピターの鉄壁の防御力も良く知っている。
あれは小春が憧れているきららたちの機体である『テディベアポラリス』の様に、丸っこくて可愛くなる様機体を盛りに盛りまくった結果だった。
それには及ばないとは言え、今のブラッドマーズは背中の翼を閉じ、ローブの様に纏った『魔法使いモード』で、遠距離での魔法の撃ち合いを想定した防御よりの姿だった。
そのお陰で、どうにかマジカルバリアを破壊されずにすんだ。
でも、美月たちに勝てるくらい強くなる為にも、このままではダメだ。
相手が近距離先頭に特化した機体だろうが、近づいて喰らいつくしかない。
それが自分たちが一番得意なバトルスタイルなのだから。
「もう一度行くよ、マーズ!」
「ええ、焔君! 飛び込むわよ!」
「「簡易変形! 吸血鬼モード! そして、マジカルスキル! マーズブラッドサイス!」」
閉じていた翼を展開させ、近距離戦闘を想定したスピード特化の姿となり、さらにブラッドロッドの先端に血の様な巨大な鎌を生成させる。
そして、マジカルブーストの加速を使って一気に懐に飛び込んだ。
王牙たちは呼び戻したドローン武器を再び腕に合体させ、その攻撃を受け止めた。
そのまま繰り出されたカウンターパンチをどうにか回避しながら、再び鎌で攻撃していく。
「ハッ! マジカルスキルの扱いに長けた杖を装備した機体は、近距離戦闘に弱い傾向があるが……。 そう言えば、焔たちの機体にはそれがあったな! しかも、近距離戦闘の筋は悪くないどころか寧ろ良いじゃねえか! 焔たちは近距離の方が強い強いんじゃねえのか?」
「はい、そうです! でも、魔法を自由に操る杖は使いたいので!」
「成程な! なら、これならどうだ?」
その攻防の中で、王牙たちは不意に、再びキングキャノンからビームを放った。
「ーーッ!?」
咄嗟に飛び退いて回避したが、このままでは……いや、まだだ。この動きを利用しろ。
ブラッドマーズの空いている左手に、腰に着いている『ブラッドリボン』を装備させた。
そのままキングレオの顔に巻きつけ、それを起点に一気に背後へと移動する。チャンスだ。
「マーズ!」
「ええ、決めるわよ、焔君!」
「「マジカルスキル! マーズブラッドムーン!」」
マーズブラッドサイスを切って、今度はフィールド魔法で赤い月を発生させながら、その背後に突撃した。
あのマントでも、流石にこれは防げまい。
「そうはさせないぜ、レオ!」
「分かってるのであーる、王牙!」
「「マジカルスキル! レオハンド!」」
キングレオは振り向くのと同時に、両手を依代に魔法の手を二つ発生させ、そのまま受け止めた。
「どうだ! これは攻撃だけじゃなく、防御にも使えるんだぜ! ……とは言っても、フィールド魔法のパワーに、反魔法の効果もあってヤバいくらいに強力だな!」
「二重で発動して、さらにマジカルブーストを使っているのに押し返せないのであーる!」
こちらが押してはいるが、相手のパワーの高さもあって中々その防御を突破できない。
でも、このままフィールド魔法を完全に発動させれば……。いや、ダメだ。もっといろんな手を考えろ。
思い出せ。御影たちの奇襲性の厄介さを。歌たちの切り札を即座に捨てる判断力の高さを。
ブラッドマーズに杖を手放させ、そのまま上から動けないキングレオの元に飛び込んだ。
「何!?」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!!」
ブラッドリボンを右手に巻き付かせ、ナックルガードにして、相手の頭部を上から思いっきり殴りつけた。
「ぐはっ……!?」
杖を手放したことで、フィールド魔法が解除されるが、代わりにキングレオに膝を突かせることに成功した。
そのまま一気に決めるべく拳を振り上げた……その時だった。
「「マジカルスキル! キングレオタイム!」」
「くっ……!?」
キングレオが突如黄金のオーラを纏ったことで、強制的に吹き飛ばされてしまう。
「……今のは良い一撃だったぜ……! 俺様たち相手にパンチを当てるなんて、益々気に入ったぜ……! だから、まずは実力を確かめると言った所悪いが、俺様たちも全力を出させて貰うぜ!」
「ウォーミングアップは終了であーる!」
立ち上がったキングレオがこちらへと真っ直ぐに突っ込んで来る。速い。さっきとはまるで動きが違う。
しかも、こちらは今、杖を手放している状態だ。
だけど……。
「まだだ! 最後まで諦めないよ、マーズ!」
「ええ、喰らいつくわよ、焔君!」
「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!!」」
*****
——その日の夜。
チームの顧問として連絡を受け、焔がまだ寮に戻って来ていないことを知った輝は、彼が口にしていたチームキングダムの部室に様子を見に来ていた。
「——おいコラ、御影! 焔たちと次にバトルをするのは俺様たちだぞ! 今更だが、何でお前と歌は後からしれっとやって来て特訓に混じってるんだよ!?」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!? それは私とうーちゃんが昨日焔君に頼まれたからですけど!? それにうーちゃんは生徒会の仕事があって、私ちゃんは冬馬君たちと小春ちゃんたちの学園リーグ戦のMCをしていたから遅れたんです! 二人共、バッチリ勝って学園リーグランキングのトップ百に入って、凄かったんですから!」
「……成程、説明ありがとう……」
王牙と御影の二人にその気があったかは知らないが、今のやり取りで大体状況は分かった。
犬猿の仲であるこの二人が喧嘩をするのはいつものことなので、別に驚きはしなかった。
御影は変な所で奥手になる子だが、それはそうとして自分の好きな物は絶対に曲げない頑固さを持っていた。王牙の方は言わずもがな。
それ故に、王牙の強者と強くなる見込みのある者だけが好きと言う弱肉強食の考え方と、御影のそれ以外の子も十人十色の良さがあると言うある意味博愛主義の考え方が、相容れないのは当然だった。
「あの二人が勝つのは当然だろうぜ! 何たって焔共々この俺様の目に適った逸材だからな! だから横取りするんじゃねえ!」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!? その言葉そのままそっくりお返ししますよ! 普段は周りを雑魚だの何だの見下している癖に、私ちゃんがずっと目にかけていた子たちをいつも横取りしているのはそっちじゃないですか!? それに私ちゃん知ってるんですよ!? 王牙先輩が美月ちゃんたちに何て暴言を吐いたのかを!?」
「グハッ……!?」
痛い所を突かれた王牙は、血こそは吐いていないが苦しそうに胸を抑えた。
「王牙先輩は午前中から十回以上バトルをしているんですから、少しは譲って下さいよ! 私ちゃんとうーちゃんはまだそれぞれ五回ちょっとしかバトルできてないんですよ!? うわあ〜〜ん!!」
「良し良し、みーちゃん、泣かないの……」
怒っている途中で泣き出した御影を、歌がそっと抱きしめて、その頭を撫でていた。
全く揃いも揃って何をやって……いや、待て?今何と言った?
輝は思わず焔に問いかけた。
「……焔君、君は今日一日で一体どれだけのバトルを?」
「えっと……すみません、正確な回数はちょっと……。 王牙先輩たちとの最初のバトル以降は、先輩たちは毎回トドメを刺す直前で手を止めてくれたんです。 だから、最小限で済む修理を挟みながら、殆どぶっ続けでバトルしてました……」
「ちなみに戦績の方は……?」
「惜しい時もあったんですけど、まだ一回も勝ててないです……。 でも、次こそは勝ってみせます!」
「……」
その言葉を聞いた輝は絶句した。
いくら特訓とは言え、学園リーグランキングのトップ十の強者相手に、こうも何度も何度も負け続ければ、下手したらその実力差に心が折れてもおかしくないのに……。
思い返してみれば、自分が顧問として行っているティーチングバトルでも、焔たちは次こそは勝ってみせるといつも息巻いていた。
今だに真っ直ぐな瞳をしている焔に思わず問いかける。
「……焔君は、どうして何度負けても折れないんだい?」
その問に対して、焔は少し恥ずかしそうに頭を掻きながらその口を開いた。
「……マーズ、話してもいいかな?」
「私は構わないわよ、焔君。 どんなに苦くても私たちの大切な思い出だもの」
「そうだね。 輝先輩……それから他の先輩たちも聞いて貰えますか? 俺たちの最初のバトルは敗北だったんです。 それもボロ負けでした……」




