表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翡翠の森  作者: 鋭角MG
2/2

「憧れと愛と

 駅のバス停からバスに乗って一時間後――修一はバスを降り、温泉街の石畳を歩いていた。温泉街の石畳を歩いていた石畳というものは、歩き慣れていないのか上手く歩き辛い。辺りには炭酸煎餅を売る店やトンボ玉のアクセサリーを売る店、中には軒先に、今は見かけない銀玉鉄砲のルガーをぶら下げた駄菓子屋もあった。修一はそれらを無視し、石畳で覆われた道を歩く。

 やがて目的の宿にたどり着く。外観は小さな旅館という雰囲気である。早速修一は、小さなドアを開き、フロントでチェックインの準備を始める。迎えたのはジャガイモみたいな顔の主人だった。

 チェックインを手早く終わらせ、修一は部屋へ向かう。もう疲れて何も言えなかった。そのジャガイモ主人によれば、修一の止まる部屋はどうやら二十七号室らしい。修一は二階へと上がっていく事にした。ギシギシと木製の階段が軋む。おそらく三十年くらいの年季が入っていそうな色合いである。軋む階段の音を気にしつつも、修一は二十七号室のふすまを開いた――


 ――筈であった。

 「だ、誰?」

 修一の目の前には、紅い着物を着た童顔の女が、修一を無垢な瞳で見ていた。体つきはどう見ても華奢で、胸は控えめで小さい。年齢的に二十代後半くらいだろう。その肌は、まるで幽霊のように、透き通っていて白かった。

 「……すみません」

 修一は慌てて謝った。

 「いえ、いいんですよ。誰でもミスは犯しますし。あ、私、ここで宿泊している二十六号室の石岡といいます」

 たしかにふすまの上には、ちゃんと二十六号室と書かれたプレートが設置してあった。

 「二十七号室は右ですよ」

 修一は礼も言わず、速やかに立ち去ることにした。



 「……やっぱり、奴はどういう人物なんです?」

 数十年前の代物となったセブンススカイラインの車中で、直江一真は先輩の大山雄介に問う。雄介はハンドルを握りながら、一真の問いに答える。

 「そうだな……十年前、実妹の鉄崎麻衣子を、個人的な復讐目的でフルオート改造済み自動拳銃で射殺。遺体は自宅近くの川へ遺棄。ところがだ」

 「どうしましたか先輩。まさかその男にビビッているんですか?」雄介の様子がおかしいので、一真は不審に思ったが、雄介はクロージング映像みたいに淡々と話し続ける。

 「当時捜査に当っていた捜査関係者の大半が、不審な死を遂げている。中には寝ている最中に、目玉が飛び出したまま死んでいた刑事もいる。更には遺族も謎めいた不審死を遂げている。遺族は中に誰も入った形跡も無いのに、翌日になると全員が血の海と化していた。しかも正確に人間の弱点を突いてね」

 「自殺じゃないんですか?」

 「いや、心中なら普通遺書を残すだろう?しかしだ。肝心の遺書が無い。おまけに、使われたナイフやカッターナイフには、指紋が検出されなかった」

 「確かに、それは異常ですねえ」

 「ああ、まるで俺が初めて起こった事件を思い出すよ」

 雄介はそう言うと、初陣の時に起こった、謎めいた事件を思い出した――

 



 

 

 

















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ