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第1話:ダークヒーロー側近・リルゼムの最期。


 痺れるような激痛の中、沸騰したかのごとく熱い血潮が腹の傷からどんどん溢れ出ていくのが分かった。

 

「エイドルース様……どうやらオレは……ここまでのようです」


 薄れつつある意識の中、リルゼムは精一杯の気力を振り絞って笑顔を浮かべた。



「何を言っている! リルゼム! 君は大丈夫だっ、必ず私が助ける!」

「貴方に……そんなこと……してる暇なんてないはず……です。早くあの者のところへ……そして王国法院……主席判事の名の下、正当な……裁きを」


 リルゼムは大量の血に濡れた手でエイドルースの手をしっかりと握る。すると、目前にある美しい金色の瞳が辛そうに歪んだ。

 これは迷っている目だ。



「もしこのまま……貴方が残る……なら、オレはここで自ら命を……絶ちます」

「リルゼム、何をっ?」


 重荷になるぐらいなら今すぐ消える。決意の眼差しを向けると、リルゼムの身体を抱いていた男が驚きののち、ギュッと瞼を閉じた。


「…………分かった。君の言うとおりにしよう」



 決意を込めた一言ののち、目を開くと同時にエイドルースはリルゼムから離れた。

 冷たい床の上に横たわったリルゼムの上に、ほどなくしてエイドルースのテイルコートが掛けられる。大量の血を失い、すっかり冷え切ってしまった身体にはエイドルースの体温が残ったコートが春の日差しのごとく暖かくて、思わず頬が緩んだ。



「必ず迎えにくるから、少しだけここで休んで待っててくれるかい?」

「ええ……待ってます……」


 いつまでも、ずっと。

 撫でられた頬からエイドルースの温もりが消える。

 リルゼムはゆっくりと瞳を閉じ、遠ざかっていく足音に耳を傾けた。


 

「どうか……」


 貴方の憂いがすべてなくなりますように。

 貴方の行く末が幸福でありますように。


 声すらももう出せなくなった中、それでもなんとか唇だけ動かして最後の祈りを捧げる。

 そうしてリルゼムはゆっくりと、深く安らかな眠りについた。


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