009 時空の支配者、クロス・イレオス
ルビーが突然、リチャードの元に転移してきた。冷たい空気が、ほんのひととき二人を包みこんだ。
「どう?」
ルビーが少し心配そうに尋ねる。
リチャードはちらりと彼女を見やり、少しだけ口を曲げて答える。
「かなりの数だが、問題ないだろう。」
「後ろのやつは?」
ルビーが敵の後方を指差した。
リチャードは無言でその気配を感じ取る。
「凄まじい時空力だな。」
その言葉が終わるか終わらないかの瞬間、すべての時間が停止した。空気が固まり、周囲の動きが完全に止まる。
そして、突如としてその存在が姿を現した。
クロス・イレオス。驚異的なまでに高身長で、銀色に輝く髪が光を反射して美しくきらめいている。彼の目は常に赤い光を帯び、目の周りには黒い鱗模様が浮かび上がり、まるで異次元から来たかのような不気味な雰囲気を漂わせている。黒いローブの裾からは時空を歪める亀裂が見え、まるで周囲の空間が彼に引き寄せられているかのようだ。
肩には光の羽のようなものが浮かび、その輝きがまるで時空を支配しているように威圧感を放つ。
クロス・イレオスが低く響く声で言う。
「ようやく姿を現したか。」
リチャードは一瞥もせず、淡々と答える。
「ノコノコ現れるなんて、暇を持て余しているのか?」
ルビーがその言葉に反応して目を細める。
「どんな時空の力でも、こちらには準備がある。」
クロス・イレオスの表情に一瞬、驚きの色が浮かんだ。
「お前たち…まさか、時空魔法が通じないのか?」
リチャードは静かに歩み寄りながら答える。
「知らないのか?時空魔法には対策がある。」
ルビーが頷きながら続ける。
「バトルフィールドで無効化できる。」
リチャードは少し満足げに言う。
「時空魔法対策を施したアイテムを使うんだ。」
ルビーは言葉を切り、リチャードの方を見て少しだけ苦笑する。
「リチャードのように…」
リチャードは微笑を浮かべて答える。
「おっと、それ以上は秘密だ。」
クロス・イレオスは無言で二人を見つめ、しばらく沈黙が流れた後、冷笑を浮かべながら言う。
「そんなことが…可能なはずがない。」
リチャードは軽く目を細め、答えた。
「気づいてないだけだ。」
時間が止まった空間の中、すべての動きが一気に引き寄せられる。その静けさの中で、戦いの幕が上がるのはあっという間の出来事だった。
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