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007 血の巨人と迷宮の死

血の巨人、グラド=ヘルズノート。かつて山の神だったが、血で契約を交わして以来、怒りに支配され続けている。その理由はわからないが、その怒りが周囲に圧倒的な重圧を与えていることは明らかだ。空気は重く、まるで時間がその場に引き止められたかのような静けさが広がっている。リチャードはその巨躯きょくをじっと見つめる。迷宮の闇はひんやりと冷たく、湿気が足元をい、冷気がじわじわと忍び寄る。しかし、グラドの存在がそのすべてを引き受け、空間に深く刻まれている。


「行け。」


その声はほとんどささやきのようだが、戦いの始まりを告げるには十分だった。


グラドが動き出す。魔物たちが次々に襲いかかるが、リチャードはその目に浮かぶ恐れを見逃さなかった。巨大な体が一度動くたび、周囲の魔物たちはその影響を受け、無意識に後退してしまう。


最初に挑んできたのは、よろいを着た大型の魔物。長剣を振り上げてグラドに向かって振り下ろす。しかし、グラドは無表情でその攻撃を受け止める。手を一振りしただけで、魔物は崩れ、地面に倒れこむ。血しぶきが上がり、空気がますます重くなる。


「こんなもんだろう。」


リチャードは心の中で呟き、静かにその光景を見守る。


現れたのは、素早い魔物。

小柄で、爪を振り回してグラドを取り囲もうとする。しかし、グラドはその動きを全く無視し、その魔物を簡単に弾き飛ばす。魔物は地面に打ちつけられ、そのまま動かなくなる。


「この調子だと、すぐに終わるな。」


リチャードは口元をわずかにゆるめ、戦いの様子を静かに見守る。グラドが戦う理由はわからない。ただ、その動きのひとつひとつが完璧に整っていることだけは確かだ。


次に現れたのは、さらに大きな魔物のリーダー。金属のアーマーを着て、グラドをにらみつける。しかし、グラドはその挑戦ちょうせんに全く反応しない。リーダーが剣を振り下ろすと、グラドはその剣を簡単にはじばし、強烈きょうれつ一撃アタックで魔物を打ち倒す。


周囲の魔物たちはその光景を見て、恐れと焦りが入り混じった表情を浮かべて立ち尽くす。その場にただようのは、死を前にした冷たい空気だけだ。


リチャードは肩の力を抜きながら呟く。


「これで終わりじゃないことだけは分かっている。」


グラドは歩みを止めることなく、次のターゲットに目を向ける。戦うこと自体が彼にとってはただの義務ぎむであるかのように、感情なく進み続ける。リチャードには、グラドが何を求め、どこに向かおうとしているのかは分からない。ただ、彼の進む先に次々と命がうばわれていくことだけは確かだ。


リチャードは無表情でその光景を見つめ、淡々と口を開く。


「こうなるのが一番だ。無理に考えることなく、ただ見ているだけで気が楽になる。」


その後も、グラドは一切の躊躇ちゅうちょなく敵を倒し続け、迷宮に死をきざんでいく。その力が、迷宮の空気にじわじわと浸透しんとうし、命を次々と奪っていく。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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