006 旧ボス全員集合、俺の召喚に理由(わけ)はない
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--------------------リチャードの視点。
ルビーは、敵の大軍勢を「暗黒の迷宮」に転送した。
例えるなら、ゴミを一箇所にまとめてお掃除、というやつだ。
ただし、この掃除機は魔法製で、吸いこんだ後が本番。
目の前に広がるのは、色彩を忘れたかのような空間。闇が地面に染みこみ、空気は鉛のように重たい。そこにひしめく魔物どもは、獣か人かも判別できない。いや、そもそもそんな区別に意味はないか。どちらにせよ、知性が低く、暴力が趣味。それがこいつらの共通点だ。
彼らはこちらを見て、声を発した。
音のような、声帯のない者たちの共鳴。耳で聞いたというより、脳の奥に直接ねじこまれた感じだ。
「王の使いか……」
「違うな、これは――狩人の気配だ。」
「ならば血を流せ。音が欲しい。宴の始まりだ。」
なるほど。歓迎されているらしい。全裸で毒沼に突っ込んだ方がまだましな歓迎だが。
魔物たちはうねるように広がり、形を変えていく。翼を生やすもの、複眼を輝かせるもの、何かの神経を露出させたようなもの。どれもこれも、一発で夢見が悪くなる顔をしている。
だが、その混乱の中心に、俺は立った。
手をかざす。空間が少しずつねじれ、黒い裂け目が現れる。そこから七つの棺が降りてきた。金色に染まったそれは、静かに空を滑り、魔力の波をまき散らす。
蓋が開く。
空気が変わる。
おそらく魔物たちも察したのだろう。あれが、かつての"災厄"たちであることを。
だって、こいつら――昔、俺が全力でぶっ倒したやつらだからな。
「王の力を、この戦場に。」
棺から現れた七人が並ぶ。懐かしい顔ぶれ――まあ、顔のあるやつは半分くらいだが。
七体の名:
血の巨人グラド=ヘルズノート
→元は山の神だったが、血で契約を交わしたあとずっと怒ってる。なぜ怒ってるのかは知らない。
魔獣の王ザ・ヴェスパリオン
→全身が刃。鳴き声で木々が裂ける。今でも朝の寝起きに思い出すとちょっと嫌。
死霊の騎士ヴァルモルド
→不死者。おしゃべり好き。黙ってくれれば強いのに。
鋼の戦士クロム=ダリオン
→全身鎧。自分の錆に誇りを持っている。定期メンテが面倒くさい。
無貌の王“虚空の主”
→見るだけでメンタルが削られる。目がないのにこちらを見てくるのはやめてくれ。
雷帝バル=ゼオグラント
→怒鳴るだけで雷が落ちるので会話が成立しない。あと、何でも焼くな。
魔界の主イグナティオス=ヴェルゼン
→魔界の王だけど、こっちの世界のグルメにハマっている。やたら豆腐を欲しがる。今は戦モード。
こいつらが揃った時点で、勝敗はほぼ決まった。問題は、地形が持つかどうかだ。いや、どっちかというと俺の財布が持つかどうかが本当の問題か。
魔物たちは一斉に動き出した。狂気をまとった祝祭のごとく。
それに対して、七体の王たちが歩き出す。ただの歩行なのに、足音が地を沈ませる。
そして、静かに始まる“掃除の続き”。
ふぅ。次はルビーが何か言う番だろうか。彼女、掃除の仕上げにはうるさいからな。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。